玉座へは帰さない

新ゲ隼竜

ベアーはクマ、イーグルはワシ、と他愛のないピロートークでいちゃいちゃして、倖せを噛みしめる隼人のお気持ち話。なお、ジャガーの語源云々は、出典が不明な模様。かっこいいので気にしない。約900字。短い目のお話の中でかなり気に入ってます。2021/8/26

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 寝物語はいつも取り留めない。
「弁慶はクマって、似合いすぎて面白くもねえ」
 よく食うし、寝るし、声もでけえし、と竜馬は笑う。
「そう言ってやるな。ヒグマは森の王者だし、ホッキョクグマも最強クラスの生物だ。これ以上はあるまい」
「顔も丸いしな」
 今度はつられて隼人も笑う。
「隼人は?」
「ジャガーはネコ科だ。ヒョウやトラと同じ」
「やっぱスピード重視ってやつか」
「それもあるが、パワーも割とエグいぞ。水に潜れるし、カイマン——ワニの仲間を一噛みで殺せる」
「げ、マジで」
「水に飛び込んで狩る。ここを噛む」
 うつ伏せ寝の竜馬に覆い被さり、襟首に軽く噛みついた。竜馬はくすぐったそうに身をよじる。
「ま、密林の王者ってとこだな」
 歯を立てたところにキスをする。
「ジャガーは『ひと突きで殺すもの』という意味の言葉が語源になっているとも言われている」
「何だよそれ。くっそカッコいいじゃねえか」
 竜馬が反転し、向き合う。その顔は玩具を手にした子供のように華やいでいた。
「ゲッター2にぴったしじゃねえか」
 無邪気な様は隼人の心を清しくさせる。
「それを言ったらイーグル——ワシも空の王者だぞ」
 大きな翼で優雅に力強く空を駆ける姿から、多くの帝国や王室の紋章に起用されている。
 孤高で、自由で、雄々しい戦士だ。
「王者って言われりゃ、悪い気はしねえよな」
 竜馬はご機嫌そうだった。隼人は竜馬を見つめ、目を細める。
 いつもは遠く高い宙空にいて、触れられない存在。何にも縛られず、はびこる欲に汚されるでもなく。

 その王者が自分の腕の中にいる。

 隼人は僥倖を噛みしめる。

 いくら王者と呼ばれても、所詮ジャガーやクマは四つ脚で地を這うものである。天を舞うもの——それがきっと真の王者だ——には永遠に追いつけない。
 些細なきっかけで、いとも簡単に飛び去ってしまうだろう。そして、二度とつかまえられない。
 わかっているからこそ、離したくない。
 額に口づける。少し照れ臭そうに、嬉しそうに、竜馬は微笑む。

 隼人は胸の奥に願いを秘める。

 

 たとえ腕をもがれても、脚が潰れても。
 枷となって空の王者を地に繋ぎ留めておこうと——誓う。