【閲覧注意】
つきあってません。
食堂でご飯中、飲み会をしている所員たちに気づいて竜馬と弁慶が混ざりに行きます。そこで悪酔いした竜馬がキス魔になり暴れて、モブ男性所員数名と弁慶が被害に遭います。
隼人は竜馬が好きなので、嫉妬で静かに激おこ。介抱ついでに竜馬にイタズラいたします。
着衣のまんま、キス、軽いお触りまで。セーフとアウトの境目な感じなので念のためR-18。無理矢理要素ありますので、ご注意ください。
弁慶が過去の女性経験を話すシーンがあります。ちらっとミチルさんも出ます。
尚、隼人と竜馬を見てキャッキャするモブ女子、モブ→同性主要キャラへの憧れの眼差し的な描写も少しだけあるのでご了承ください。竜馬の隼人への気持ちと◯◯疑惑は、ご想像にお任せします。約7,700文字。2021/4/24
◆◆◆
食堂の一角が何やら盛り上がっている。
「何やってンだ、アイツら」
竜馬が席に着きながら訊いた。
「早番上がりの連中で集まって、慰労会みたいなものらしいな」
味噌汁を一口飲んで隼人が答える。
「いろーかい?」
「こんな職場だから、新年会も忘年会もないだろうしな」
「慰労会ってのはええと——お疲れ様会ってことだよな? けど、普通に『職場』って呼ぶにはいろいろあり過ぎだよなあ」
弁慶が突っ込む。その後でたくあんが噛みしめられて小気味いい音が鳴った。竜馬は面白くなさそうに「ケッ」と吐く。
「俺たちゃあ、お呼びじゃねえってか」
「ゲッターの飲酒運転は、なあ」
弁慶は苦笑いしながらも、
「でも、ピザとかフライドチキンもあるみてえだしよぉ、お疲れ様の飲み会ってんなら俺たちだって混ざってもいいんじゃねえか」
言った。
「だな」
竜馬と弁慶が顔を見合わせて企む。
「運がよきゃ、酔っ払った女を持ち帰れるかもな」
ぐふふ、と弁慶がいつもの助平根性を出す。それには隼人はもちろん、今度は竜馬も賛同しなかった。
「おめえ、研究所の女に手ぇ出してミチルにバレたら、タマぁ引っこ抜かれンじゃねえのか」
「何でだよ? ……あっ、もしかしてミチルさん俺のことを」
「違えだろ」
牛乳パックに挿したストローを噛みながら竜馬が呆れる。
「おめえはホントに平和だな」
「平和が一番だろぉ」
間延びした口調が、いかにもその言葉を表していた。その時、隼人がぽそりと言った。
「合意の上なら、文句は言われないだろうさ」
ふたりは同時に隼人を見る。当の本人は発言したことも忘れたように、黙々と食事を続ける。
「おう、さすが隼人」
弁慶が喜色を浮かべた。竜馬はニヤニヤしながら、
「ヤれるモンならヤッてみろよ」
けしかけた。
「お前よりは、自信あるぜ」
ふふん、と弁慶は得意げに返す。
「絶対にお前より抱いた女の数は多いからな」
「数自慢かよ。多けりゃいいってモンでもねえだろ」
「当然、満足させたのも俺の方が多いに決まってる」
竜馬がムッとする。その表情に弁慶は気をよくする。
「だいたいな、女のことで俺と張り合おうってのが、間違いだ」
「ケッ、偉そうに」
「じゃあ言ってみろよ。お前、何人くらいと寝た?」
「はぁっ⁉︎」
唐突に振られ、竜馬が素っ頓狂な声と共に立ち上がった。食堂が静まり返り、全員の目が一点に集まる。
「何でもねえよ! 見ンな!」
しっしっ、と竜馬は手で視線を追い払う。それでまた各々のさざめきが広がっていく。
「くっそ、おめえのせいで変な注目浴びたじゃねえか」
恨めしそうに向かい側の弁慶を睨みつけた。
「お前が大袈裟に反応するからだろぉ」
弁慶は動じない。
「……もしかして、竜馬」
「あンだよ」
「お前、童貞か?」
「ンなっ⁉︎」
近くの所員たちがまた振り返る。竜馬はぐっと口を結び、叫びをこらえる。
「……ふっざけンな。何でおめえに」
「図星かよ」
「なっ、違っ……」
否定しようとしたが、興味なさそうにしていたはずの隼人までもが見ていることに気づき、思わず言葉を失う。顔色が青くなってすぐに赤くなった。
「竜馬、気にすんな」
弁慶はくっくっと笑いを隠しきれない。竜馬は不貞腐れて、
「クッソ坊主」
どっかと座り直し、横を向いた。
「なあ、さっさと飯済ませて、あそこに顔出しに行こうぜ。好みの女がいたら協力するぞ」
弁慶が罪滅ぼしのように誘った。
† † †
ピークは過ぎたが食堂はまだ賑わっていた。隼人は食後の番茶をすすりながら考え事をしていた。
データを突き合わせての精緻な思考ではなく、輪郭を作ったり雑多なことを思い描くのはこうした雰囲気の方がよかった。適度に集中力が削がれるので、隼人なりにリラックスできる時間だった。
二杯目を飲もうか迷っていると悲鳴が聞こえた。椅子が倒れる音、食器同士がぶつかり合う響き、困惑のざわめき。
飲み会のエリアで揉め事が起きたらしい。
さてどっちが、と隼人が思った瞬間、
「おい、やめろ竜馬!」
弁慶の野太い声がした。
それで原因がわかる。
竜馬から弁慶に突っかかったのだろう。
あのふたりだけなら放っておくところだが、所員に混じっての席なら巻き添えを食う者が出ないとも限らない。正直面倒ではあるが、一応「チーム」としての自覚もある。
溜息をついて隼人は立ち上がった。
その光景に目を疑う。
竜馬が男性所員に抱きつきキスをしていた。
「な——」
隼人の口から思わず動揺が漏れる。
「竜馬ぁ!」
弁慶が竜馬の襟首を引っ掴んで剥がす。
キスをされた所員はヘナヘナと座り込んだ。
「——」
見れば、同じように数名の男性所員がくずおれたり唇に手を当てて茫然と立ち尽くしている。
「弁慶、まさか」
振り向くと、ちょうど竜馬が弁慶に飛びかかったところだった。両手両脚を広げ、綺麗に「抱っこ」の形で真正面からしがみつく。
「りょ、竜馬! てめえ!」
弁慶は大きな手でぐいぐいと竜馬の顔を押し返す。通常の人間ならば首の骨が折れてもおかしくはない。竜馬は仰け反りながらも負けじと腰に回した両脚を絞めて叫ぶ。
「こ……の、観念しろ! 次はてめえだ!」
科白だけなら間違いなく喧嘩だった。
「は、隼人ぉ!」
弁慶が半ベソ状態で呼ぶ。
「た、助け——」
手の力が緩んだ一瞬を竜馬は見逃さなかった。巨体をさっとよじ登り、腕を首に巻きつける。
そのままキスをした。
「んーっ⁉︎」
弁慶が引き剥がそうとするが、竜馬の手が後頭部を押さえつけていて敵わない。
「んん! んーっ‼︎」
目を白黒させもがいている様子から、おそらく舌を入れられていた。
「…………おい、このザマは何だ」
隼人は傍らで群れている女子所員に訊く。
「突然、流さんが『ヤッてやる』って言い出して」
「次々に職員にキスして——男の人ばかり」
「私たちは大丈夫ですけど」
口々に答えた。だが怖がる風ではなく、どことなくはしゃいでいる印象を受けた。
「あの馬鹿は何をそんなに飲んだんだ」
床に転がっている酒瓶に目を走らせる。ひとりの男性所員がそろそろと寄ってきて、
「あ、あの、ビールと、わかっている分だとウイスキーと泡盛を」
と報告した。
「ハニーウイスキーをストレートでロックグラス目一杯に。泡盛は多分、水と間違えてガバッと」
「誰か止めなかったのか」
「気づいたら飲み干していて」
仮に気がついたとしても、竜馬に睨まれたら止められなかっただろう。
「仕方がない」
隼人はふう、と息を吐く。
「弁慶、何やってる」
「だ、だってよう!」
ようやく唇を解放された弁慶が、まだ取りついている竜馬と攻防を繰り広げていた。
「一発殴って黙らせろ」
「そんなこと言ったって……力を緩めたらまた飛びかかってきそうで……このっ」
「竜馬」
隼人が近づく。
一瞬、竜馬の鋭い眼光が隼人を捉え——弁慶に戻った。
「……?」
確かに目が合った。
だが、もう見向きもしない。
キッと隼人の双眸が険を含む。
「こ、の、いい加減にし……ろっ!」
弁慶の言葉と共に竜馬の身体が宙を舞う。ごろごろと派手に転がり、扉のない出入口から飛び出て通路の壁に当たって床に伏した。
「……何?」
ちょうど通りかかったミチルが行く手を遮られて立ち止まる。ちらりと食堂の中を確認して、再び眼下の男を見た。
「……流、君?」
ぴくりと竜馬の指が動く。
「ミチルさん、竜馬から離れろ!」
弁慶が叫んだ。
「武蔵坊君? 一体——」
次の瞬間、弾かれたように竜馬が立ち上がり、ミチルに迫った。
「え」
肩を掴んで顔を寄せて——。
きゃっ、と女子所員らの妙に嬉しそうな声と「早乙女先輩!」とこれまた別の女子所員の焦るような声が同時にあがる。
「ちょ、なが……!」
もう少しでキスという距離で竜馬が止まった。
「……」
無言でミチルを見つめる。
「お酒臭っ」
ミチルは思わず口走る。けれども身動きできず、竜馬の眼差しに晒される。
「……ちょっと……放し、て」
「……」
竜馬はピントを合わせるようにきゅっと目を細めて、
「違う」
とぼそりと言ってミチルから離れた。
「————は?」
怪訝そうにミチルは片眉を上げた。
「ミチルさん‼︎」
ドタドタと弁慶が駆け寄る。
「だ、大丈夫かっ⁉︎ あの野郎に変なことされなかったか⁉︎」
「…………されてないけど、何なの?」
手で肩を払い、苦虫でも噛み潰したかのように顔をしかめる。
「竜馬が悪酔いしちまって」
「……あなたもお酒臭いわね」
ぎろりと睨む。
「ゲッターのパイロットでしょ」
舌打ちでもしそうな勢いだった。
「す、済まない、ミチルさんっ」
「謝るくらいなら、最初から飲まないでちょうだい」
「それくらいでいいだろう」
隼人が割って入る。
「ご法度なのは百も承知だ。その上で少し飲んだだけだろう」
「少し? 流君、ものすごくお酒臭かったわよ」
「こいつらも一応人間なんでね。たまには酒くらい飲ませろ」
「あなたねえ」
「俺は飲んでいない。いざとなったら俺がひとりで出る」
「——」
今度は隼人とミチルが視線をぶつけ合った。
「は、隼人ぉ、もういい。ミチルさんも、俺が悪かったよう」
弁慶はおろおろとふたりを交互に見やった。
と、背後で再びざわめきが起こる。
「え? あ! 竜馬‼︎」
弁慶が慌てて食堂へ引き返す。
「もう、一体何なのよ」
苛立たしげに言い中を覗いて——ミチルは絶句した。
「竜馬、やめろってば‼︎」
弁慶が懸命に被害者を救おうとしていた。
「何だぁてめえ! またヤられに来やがったか!」
「どわっ!」
「いい根性してンじゃねえか! キスさせろっ!」
またしても竜馬が弁慶に組みつく。
「…………何よあれ」
「酔っ払ってキス魔になったらしいな」
「キス魔?」
「被害者は男ばかりだ。所員数名と、弁慶」
「……それで」
ミチルは竜馬の呟きを思い出し溜息をついた。
「…………最低の気分だわ」
「何だ、竜馬にキスされたかったのか」
隼人が笑う。
「そんな訳ないでしょ」
「じゃあ、女のプライドか」
答える代わりにミチルは思い切り睨めつけた。
「あなたも、十分酔っ払っているみたいね」
言い捨てて去っていった。
「…………」
隼人はその後ろ姿を眺めて——目線を騒動の中心に戻す。
弁慶に殴られ、やっと竜馬が大人しくなったところだった。近寄り、覗き込む。
「大丈夫かなあ」
弁慶も倣う。
「あれじゃあ、殴るしかないよなあ」
それでも後味が悪いのか、弁慶はしょんぼりと肩を落とす。
「仕方あるまい。しかし、野猿みたいに動き回る酔っ払いはタチが悪いな」
隼人が竜馬の身体を起こす。
「俺が部屋に連れて行こう」
「いいのか」
「万が一吐きでもして窒息されても困るしな。水を飲ませて、少し様子を見ておく」
「あ、ああ、頼むよ」
「お前は片づけを手伝ってやれ」
「そりゃあ、もう」
弁慶は大きく頷く。
倒れた椅子や押しやられたテーブルを片づけるには適任だった。
「ところで、負ぶさるなら手伝うぞ」
竜馬を指差した。
「いや、後ろから首を絞められたらたまったもんじゃない」
「じゃあ担ぐか?」
訊かれて隼人は少し考える。
「揺れるし、肩が腹に当たるな」
「…………吐いたら悲惨だな」
想像したのか、弁慶が太い眉を下げた。
「なら、こうするしかないか」
乙女を相手にするように竜馬を抱き上げる。
事の成り行きを見守っていた一部の女子所員たちがきゃあ、と沸いた。
「えっ?」
弁慶が振り向く。所員らは上気した頬で何やらコソコソと話しては満足げな笑みを浮かべていた。
「隼人、あれ、何で喜んでんだ? ……喜んでるよな?」
初めての現象に不思議がった。
「さあな」
隼人は他の所員たちを横目で見る。竜馬にキスをされたひとりは、ぼうっとした顔つきでこちら——正確には竜馬——を見つめていた。嫌悪感があるようにはまったく思えなかった。
それどころかむしろ。
「……研究所にはいろんな人間がいるってことだろ」
「へ?」
弁慶はポカンと口を開けた。
「そりゃ、いろんな人がいるだろうけど……どういう意味、あ、おい」
「じゃあな」
隼人が歩き出す。
「お、おう」
首を傾げながら弁慶は見送る。それから思い出したようにつけ加えた。
「気をつけろよ」
「……ああ」
隼人は顔だけで振り向き、答えた。
† † †
「気をつけろよ」
弁慶は言ったが、それはむしろ竜馬にかける言葉だろうな、と隼人はひとり笑う。
「……竜馬」
呼びかけても一向に目覚めない。
そっと頬を撫でる。
ふにふにと柔らかく、まるで子供の肌のようだった。
「……」
指を滑らせて唇に触れる。
さっきまで、何人もの男とキスをしていた唇——。
隼人はペットボトルの水をあおり、竜馬に口づけた。
「…………ン」
微かに鼻にかかった声が聞こえた。水はするすると竜馬の中に落ちていく。
もう一度、飲ませる。
「ン……んん」
唇を離すと、竜馬の目蓋がひくひくと動いた。
「ンあ」
目が開く。
構わず口移しを続ける。
「…………ン」
こくり、と喉が鳴った。
「……あ……え……?」
まばたきが繰り返され、竜馬の長い睫毛が上下する。
やがて。
「え」
くわっと目が見開かれた。
「な、え? 隼人?」
「起きたか」
「おめえ、近っ……ちょ、離れ……っ」
のしかかる身体を押しのけようとする。だがその腕には力がなかった。
「あ、れ……?」
酔いの回っている状態では当然だった。
「竜馬、散々と暴れてくれたな」
「え——」
「お前、酔っ払って所員にキスしまくっていたぞ」
隼人の口が笑みの形を作ったが、その両眼は笑っていなかった。
「……は?」
「次から次へ、百人斬りでもするつもりだったのか? 弁慶にまで飛びかかっていたぞ」
「…………え?」
「からかわれたのが、そんなにこたえたのか」
隼人は竜馬の左耳に唇を寄せた。
「お前、公衆の面前で弁慶とディープキスしていたぞ」
息を吹きかける。竜馬はびくりと身体を強張らせてから、
「は、え? おめえ、何言って」
戸惑う。
「覚えていないのか」
「——」
竜馬は隼人の瞳を見る。
ふざけて嘘をつくタイプではないと、いくら酔った竜馬でもわかったはずだった。
「……すげえいい匂いの酒を飲ンで……甘くて、口ン中がモタモタすっから、水を一気飲みして……」
「それから?」
「……え?」
「その後のことは」
「いや、え、……あれ?」
記憶がないことに気づき茫然とする竜馬を隼人が鼻で笑う。
「罪作りなヤツだな」
今度は左の耳たぶを甘噛みして軽く吸った。
「んぅ……っ」
竜馬の反応が重なった身体に伝わる。
「あ……はや、と……?」
無視して耳の穴を舐める。
「ひゃ、あっ! あっ、やっ!」
隼人は左手で竜馬の右耳を塞ぐ。
「あっ! はひっ! ンンぁっ——」
酒で抑制がきかない口元はだらしなかった。自分がどんなボリュームで喘いでいるのか、まったくわかっていないようだった。
「やあっ、音っ、がぁ……! やめっ!」
頭の中いっぱいにくちゅくちゅと響く音と、生き物のようにうねうね這い回る舌の感触に竜馬が打ち震える。感じている様は隼人の想像以上だった。
「あぁっ……俺が……っ、はや……ひッ!」
竜馬が何かを言おうとする度に耳をなぶる。縁を食み、裏側を唇でなぞり、また執拗に穴を舐める。
「俺、がぁ……おめえに、はんッ、何、したっ——んあぁッ」
全身をガクガクとさせながら懸命に問う。竜馬の頬は赤く染まり、息は既にあがっていた。
「何もしないからだ」
隼人は事もなげに答える。
あの時、目が合った。
竜馬は隼人を認識したはずだった。
それなのに。
無視をされた上に、他の男とのキスシーンを見せつけられた。隼人の内には嫉妬が渦巻いていた。ムカムカして収まらない。
らしくもなくミチルをからかったのも「選ばれなかった」苛立ちをぶつけただけだった——彼女にも同じような気持ちが芽生えたのかと、ふと思って。
「…………は、あ?」
聞き返す竜馬の目はとろりとし、涙が浮かんでいた。
「何も……んっ……あ、しねえって……?」
隼人はじっと竜馬を見つめる。
そして、
「キスさせろ」
言うなり口づけた。
「——!」
竜馬の身体が緊張する。
しかし強い言葉とは裏腹に、隼人のキスは優しかった。
「……ン」
柔く撫でるような口づけを繰り返すと、竜馬の強張りが徐々に解けていく。
「はあっ……ン」
やがて竜馬は自分から口を開いて舌を差し出した。すぐに隼人が応える。
「ん、んんっ……ンむ」
吸い、舌先でなぞる。
「んっ、ん!」
愛撫の加減で竜馬の反応が変化する。隼人はそっと、だがしつこく咥内を舐る。快感に煽られるように竜馬の舌は次第に大胆に、先を求めて絡みついてきた。
「は……ン、ン!」
竜馬の腕が隼人の首に回される。唇を押しつけ、与えられる快楽を夢中で貪る。
隼人はキスをしながら左手を竜馬の股間へ滑らせ、ズボンの上からさすった。
「ン……ッ!」
予期せぬ刺激に竜馬が我に返る。
「あっ、やめっ……! ふ、うっ」
慌てて腕を離し身をよじる。かろうじて隼人の下に手を差し込み、かばった。
「ばっ……もう……キス、したろ……!」
隼人は引かない。
「もっとしたくないか?」
ささやく。
「……ッ」
一瞬、竜馬の動きが止まった。
「気持ちよかったろ?」
焦らすように、隼人は唇のすぐ横に口づけた。
「は……あ……あぁ」
吐息を漏らした後で竜馬はきゅっと唇を噛み、顔を逸らす——肯定とねだる言葉を零すまいとするかのように。
「なあ、竜馬」
熱を込めて呼ぶ。
竜馬の身体が小さく震える。ふたりの唾液で濡れた唇が物欲しそうに微かに開いた。
隼人にはわかっていた。
「もっと、キスさせろ」
割り込んだ竜馬の手をいとも簡単にどかすと、再び股間に指を伸ばした。くっきりとした形を感じる。
「ッ! キス、じゃねえっ……だろ……!」
竜馬の非難は最後の抵抗だった。
もう隼人の誘いを押し返す力と理性はほとんど残っていない。僅かな正気も恥じらいも、隼人の唇と指次第であっという間に消し飛んでしまう。
だから隼人は笑う。
「大人のキスにゃ、続きがあるんだぜ」
そうして竜馬の首筋に噛みついた。