8月2日はパンツの日らしいので書きました。おつきあい中。
スケベなパンツを竜馬に穿いて欲しい隼人と、なんだかんだ言いながら穿いてくれる竜馬のお話。
本番行為の描写はありません。ご了承ください。約3,000文字。2021/8/2
◆◆◆
紙袋を渡され、竜馬は途端に不機嫌な顔になる。
「どうした」
「……どうしたもこうしたもねえよ」
忘れもしない。
ちょうど一週間前もこうだった。
あの時は菓子でも入っているのかといそいそと開けて——。
「……結局ワケわかンねえオモチャでよがらされてよぉ」
ムスッとしたまま、隼人を睨みつける。
「気持ちよさそうだったじゃないか」
「だからムカつくンだろうがよ」
「あれでもう一回するか?」
隼人が耳元に口を寄せると、ぷいと顔を背けた。
「……いらねえ」
中を見ず紙袋を押し戻す。
「本当に?」
今度は耳朶に唇を押しつける。びくん、と竜馬の身体が反応した。
「ンッ、どう、せ、スケベなモン入ってンだろうが」
隼人は左手を竜馬の腰に回すと、
「当たり」
低くささやいて耳の縁を柔く噛んだ。
「んひっ」
逃げようとする竜馬を強く抱きしめる。右手でさわさわと形のいい尻を撫でると、すぐに竜馬が「あぁ」と甘い声をあげた。
「嫌いじゃないだろう」
ぎゅ、と指に力を込める。尻の弾力が気持ちいい。
「んあっ」
腕の中で竜馬が跳ねた。
「ばっ……揉む、なぁ……あんッ」
どちらも、その先を期待している。互いにわかっていながら、いつもこうして児戯のように言葉を投げ合う。
やがて。
「んっ、んう……」
どちらからともなく、口づけを始める。
「はあ……っ、はや……と、ン……ベッド、行こうぜ」
「ああ……竜馬」
「ん、はあっ」
行為が進むと、大抵は竜馬が絡め取られる。そして、ねだる。
「なあ……ン、あ」
隼人は乳首から口を離し、笑う。
「いいとも。……ただし」
床に投げ捨てられた衣服の下から紙袋を拾い上げる。
「これを」
「——な」
中身はわからない。だが、どうせロクでもないモノに決まっている。
竜馬をぐずぐずにする、ロクでもないモノに。
「——っ」
ぞくり、と倒錯めいた快感に震える。
「痛いものでもないし、ちょっとした遊び心だ」
隼人が言うのなら、それは本当なのだろう。
「…………いいぜ」
拒み続けるのも男がすたるとばかりに受けて立つ。
竜馬は紙袋をひったくり、開けた。
「——あ?」
秘事の最中には似つかわしくない、間の抜けた声があがった。
「何だ、こりゃ」
ぴらりとした布をつまむ。シースルーの生地。取り出して広げて——。
「……はあ⁉︎」
叫んだ。
「な、ンなっ⁉︎」
口をぱくぱくとさせ、隼人を見る。隼人はにいっと笑って首を少しだけ傾げた。
「穿いてくれ」
「こっ、これをかぁっ⁉︎」
「今日はパンツの日らしいぞ」
「だっ、おめっ、あ? はあっ⁉︎」
ぴらぴらの布と隼人の顔を交互に見、竜馬は上擦った声で続けた。
「は、穿くって、スケスケじゃねえか!」
「だからいいんだろ」
「いや、だって、穿いたって脱ぐじゃねえか!」
「パンツだからな」
「はあ⁉︎」
「いいから穿いてくれ」
そのまま竜馬に覆い被さり、身につけている下着を剥ぎにかかる。
「おわっ、ちょ、待てっ! 脱ぐ! 自分で脱げらあっ!」
言ってから、ハッとする。
「じゃあ、頼む」
したりとばかりに、隼人の口角が上がった。
「う〜」
恨みがましい低音を発しながら、竜馬は隼人の背中を睨みつけた。
「くそっ、このドスケベ!」
「穿いたか」
「穿いたぞ!」
「そっち向くぞ」
「くそっ! 覚えてやがれ!」
立ち膝の姿勢で竜馬はぎゅっと目を瞑った。
「……」
微かに息を呑む気配だけ感じた。
「……」
何も、起こらない。
「……?」
竜馬はそろりと右目を開けた。
「——!」
隼人が間近でじっと竜馬の下半身を見つめていた。
「あっ……な、あ……」
瞬間的に頭の奥が熱くなる。
既に硬くなっているペニスも、先端から滲み出ているものも、全部見えているはずだ。
視線に晒され、ぴくん、とショーツの中でペニスが動く。
「——っ」
恥ずかしさに、竜馬はもう一度目を閉じた。
「う……あ……隼人っ」
一体いつまで——。
もう泣き言と思われてもいい、口にしようとした時、隼人が動く気配がした。
「え——」
目を開ける。
隼人がちらりと上目遣いで竜馬を見やる。いつもより扇情的な瞳。竜馬が見惚れた一瞬の後、その端正な顔が股間に埋められた。
「ふあっ」
隼人の熱い息がペニスに吹きかけられる。布越しに舌を押しつけられて、舐め上げられる。
「ああっ——や、あっ」
頭を押し退けようとするが力が入らない。先端を口に含まれ吸われる。
「く、あッ——!」
ふ、ふうっ、と隼人の荒い息が聞こえる。それが一層、竜馬の快感に変わる。
「ばかっ……ン、ヘンタイ……ッ」
腰の奥は悦びに打ち震えているくせに、竜馬は精一杯の強がりを投げた——。
† † †
パンツの日から四日。
隼人は夜の誘いを二度も断られていた。
竜馬も結局は悦んでいたので、何が悪かったのかは皆目見当がつかない。
「まあ、そのうち機嫌も直るだろう」
よくも悪くも、あっけらかんとしているのが竜馬だ。
待ったほうが楽しみが大きい。
隼人はのんびりと構えることにした。
翌日の夜、竜馬が部屋を訪ねてきた。いつもは隼人から行くので、珍しいことだった。
「どうした」
訊くと、へへん、と何やら悪戯っ子のように笑う。
「お楽しみの時間だぜ」
後ろ手に隠し持っていた紙袋を見せびらかした。
「?」
「俺にだって通販ぐれえできるンだぜ」
得意げに言う。
「お返しだ、お前も穿けよ」
中から透けた男性用ショーツを取り出した。
「——」
それはお返しではなく仕返しではないのか。
隼人は言いかけてやめる。
どのみち、あれを穿けということは当然そのあとの行為も含まれているわけで——。
なら、仕返しではなく、いい口実ではないのか。
「いいだろう」
心の中でほくそ笑んだ。
「穿いたぞ」
声の調子は普段と変わらない。
「……おめえ、余裕だな」
ベッドの上にあぐらをかき、竜馬が不満げに言った。
「ふん」
持ってきたのはお前だ、と隼人は返す。
「……」
竜馬が口を尖らせながら振り向いた。
隼人と目が合う。少しも怯むことのない、堂々とした姿に竜馬の顔が歪む。
「おめえ、そんなスケスケパンツ穿いて恥ずかしくねえのかよ」
「身体の作りは同じだし、見慣れているだろう」
「……ちっ」
事もなげな返事に、当てが外れたとばかりに竜馬は頭をかいた。
「おめえ、すげえな」
呆れたように笑ってから、下に目線を落とした。
「——」
竜馬の目が大きくなる。
まだキスのひとつもしていないのにそこは膨らみ、存在を主張していた。
「…………ッ」
もう一度、隼人の顔を見る。
熱が滲む瞳。何を望んでいるか、聞かなくてもわかる。
「……隼人」
竜馬の身体に火がつく。
唇が隼人のペニスを求めて開かれる。咥内で舌が浮いた。
「この前……」
「うん?」
「ヘンタイって言って……悪かった」
いざり寄り、竜馬は隼人の昂りに口づけをした。
「ん、竜馬」
「はあ……っ、はや、と」
硬くなっているモノを唇で挟み、しごく。
「んっ」
「このパンツ、エロいな。……俺も、ヘンタイだ」
艶っぽく笑んで、布ごと先端を口に含んだ。