おねだり

新ゲ隼竜R18

つきあってます。
黒平安京帰りの無精髭&ボサ髪隼人の野性味に惹かれた竜馬が、そのままでしたいって言ってセックスする話。前戯描写なし。約3,800文字。2021/9/15
※極限状態に陥ると云々は聞いた話なのでゆるい目で見てください。なお、隼人は新炉心の存在も知っていることになっていますが、細かい時系列は気にしなーい。

◆◆◆

 隼人の顔を見るなり、竜馬が破顔する。
「ほんとに聞いてくれたのか」
「言うに事欠いてそれか」
 むすっとした隼人に近づく。
「ふーん、へー」
 首を傾げて、下からジロジロ見上げる。嬉しそうに笑んだまま。
「……何だ」
「いや」きゅ、と竜馬の目が細められた。
「しようぜ」
 隼人の首に両腕を回す。
「帰ってきたばかりなのに、元気だな」
 言いながらも、隼人は竜馬の尻に手を伸ばす。丸みに沿って軽く撫でたあとで、双丘の間に中指をぐ、と押し込んだ。
「ん、あっ……あ」
 甘い吐息が竜馬から零れる。
「ふ……う、帰ってきたばかりだから……だろ」
「ふん」
 隼人の仏頂面にも笑みが浮かんだ。
「なあ……はやと」
 竜馬の瞳が誘う。隼人は返事の代わりにその唇を貪った。

   †   †   †

 竜馬の身体を裏返そうとすると、
「あっ、待て」
 焦ったような声があがった。
「……待て」
 竜馬は手で制する。
「……?」
「ん、その、今日はこっちで」
 隼人に正対し、腕を広げる。
「……思いきりしたいなら、後ろからのほうがいいだろう?」
「こっちがいい」
 少し拗ねるような表情で、竜馬がねだる。
「こっちのが、顔が見える」
「——」
 隼人の胸が疼く。まっすぐに求められて、これ以上嬉しいことはない。
「……わかった」
 口づけをし、腿を押し広げる。その中心にペニスをあてがうと、ゆっくりと挿入を始めた。
「ふっ、あっ、ああぁ」
 竜馬から切ない声が溢れてくる。
 ふたりとも気が急いて、いつもほどの時間はかけていない。竜馬の口はだいぶ柔くなってはいたが、それでも日が空いた分だけ優しく押し入る。
「んあっ、あっ、はやと、の……すげえ……」
 ふるふると竜馬が震える。
「あ……っ、パンパンじゃねえ……かっ……あっ、あっ」
 苦しいのか、顔がしかめられる。
「——竜馬」
「ん、んっ、へい、き」
 口元は笑おうとする。
「はやとの……すげ……っ、あッ」
「竜馬……」
 隼人にしてみればひと月振りの行為で、しかも竜馬は小悪魔のように誘った。挑発的で、扇情的な目線がまだちらついている。油断するとすぐに果ててしまいそうだった。
「ん——」
 こらえるように目を細め、隼人は竜馬の中を突く。
「はあっ! んあっ、太っ……ン!」
 すぐに声が大きくなる。
「んっ、んっ、あ、あ、ああっ」
 揺するたびに声も跳ねる。喘ぎながらも、竜馬の目は隼人をとらえ続ける。
「ひあっ……あっ、あ、あ」
「……」
 隼人も、逸らさずに見つめる。
「その……ヒゲ、んっ」
 手を伸ばし、顎に触れた。
「あ……っ、ン!」
 瞳が熱に揺れている。
「あっ……いいッ!」
「……違う男に抱かれているみたい、か?」
 隼人は腰をくん、と突き上げる。
「ひあっ! あっ」
「なあ、竜馬?」
「んっ、んっ、あッ、気持ちいいっ」
「どうなんだ?」
「ンんッ!」
 竜馬が興奮するならそれもまた一興だった。だが隼人は意地悪く、一番感じるポイントを避けて中をこすり出した。
「あっ……あ、ん……んんう……」
 やがて不満げにも聞こえる、鼻にかかったような声が漏れ出した。物足りなさそうに竜馬の腰がうねり出す。隼人の口角が上がる。
「これか?」
 十分に焦らしたあとで、上側をこすった。
「——ひんッ」
 一瞬、竜馬の身体が強張る。
「あ……」
 目を閉じて気持ちよさそうに震えた。
「竜馬」
 その様がいじらしくて、もう一度あててやる。腰を引くときはカリ首が引っ掛かるような角度で。
「うあッ!」
 二度、三度、繰り返す。
「なあ、無精髭を生やして、髪も伸び放題のむさ苦しい男に抱かれて、気持ちいいのか?」
 ぐぷ、と奥にねじ込む。
「ふあんッ!」
 そのままかき回す。
「あッあッあッ——ああぁッ」
 とろけそうな顔で竜馬が喘ぐ。違う男に抱かれているようで、というのなら、架空のその男に嫉妬しそうなほどに。
「……」
 隼人は無言で律動を続ける。奥まで突き入れ、ペニスを抜く時は上側をこするようにして膨らみきっている部分にあてる。
「ひっ! あ゛っ、や、あ゛ッ!」
 奥まで満たされる倖せと、ペニスが引きずり出されるときの快感と、前立腺をしごかれる刺激が次々に竜馬を襲う。
「あひッ、あっ、あっあっ、ンんっ!」
 びくびくと身体が跳ねる。
「や……あッ!」
 小さく何度も達しているようだった。
「あ、あ……はや……とぉ」
 甘えるように、名を呼ぶ。うっすら涙を浮かべて、隼人を仰ぎ見る。
「……りょう……ま」
「ふうっ……ン!」
 快感に窒息しそうな表情。
「ヒ、ヒゲ、も……んあっ!」
「うん?」
「あっ……髪、もっ……いいっ」
「……?」
「っ、すげえ、オトコ……ぽくて、んっ、ああぁ」
「——」
「オトコくさくて……ああッ……たまンねえ……っ! はあっ、はあっ、あッ!」
 隼人はもっと腰を突き入れた。
「——ッ!」
 ガクンと大きく竜馬が仰け反る。
「あ……あぁ……あ、あ゛あ゛ッ‼︎」
 ぎゅうっと眉が寄る。シーツをつかんだ指の節が白くなっている。痙攣に必死に抗おうとしているようだった。
「——竜馬」
 隼人は覆いかぶさり、口づける。
「ン! んんッ」
 竜馬の中が収縮する。
「んあッ!」
 間近で目が合う。竜馬の、ひたすら一途に乞うような瞳を見て、隼人の中からも同じような感情が溢れてくる。
 もっと深く繋がりたくて、隼人はまた奥へ分け入った。
「は、あッ! おめえの……っ目つき、はあっ、さいしょのころ、みて……っ」
「最初の、頃?」
「ふうっ、うあっ——あ、あ、ン……その目……ぞくぞくするうっ……!」
 口の端から涎を垂らして、心底嬉しそうに笑う。
「はやと……っ、も……と見て……っ、あっ、あっ」
「竜馬……」
 乱れる竜馬が愛しい。隼人は熱を込め、見下ろす。竜馬の瞳が愉悦に歪む。
「あ゛っ、やべっ……! あ、あ、あっ、俺っ、やべえ……っ」
「りょう、ま……っ」
「イクっ! あ゛っ、はやとにっ! あ゛ッ、お゛ッ——はやとに、イカされ、るッ……‼︎」
 引き締まった身体が硬直し、竜馬は快感の海に沈んだ。

   †   †   †

「何だろな、無性にムラムラしたんだよ」
 寝そべりながら、不思議そうに竜馬が言った。
「通信機で見たときはそんなでもなかったのによぉ、おめえのツラ直接見たら、な」
 じっと隼人の顔を見る。
 異常な状況で生命を賭けた闘いをして、現代に戻ってこれた興奮を感じているうちにまたちょっとしたトラブルに巻き込まれて。まったく落ち着く暇もなかった。
 人が死に近づき極限状態に陥ると、勝手に勃起・射精する、強い性的興奮を感じる、という事例はある。本能的に子孫を残そうとしているとする説だ。いくら冷静であろうとしても、肉体は理性に逆らい、神経は昂って収まらない。
 その説になぞらえるならば、常人離れした体力・精神力を持つ竜馬でさえも例外ではなかったということだろう。
「妙なことが続いて、変に神経が過敏になっていたんだろう」
 隼人の言葉に、小さく「そうかもな」と頷く。
「……にしても、おめえの目つき、マジで危ねえな」
 とは言いながら楽しそうだった。
「いっつも目つきわりぃけどよ、それでもだいぶマシになったじゃねえか。弁慶が来た辺りまで、おめえの目つきほんとヤバかったぜ」
「だが、今日はそれがよかったんだろう?」
「まあな」
 竜馬がにっと笑う。
 目つきが鋭いのは、一ヶ月の間、ずっと気を張っていたからだろう。現代に戻ってこれても、要塞化した研究所、地下で進められていた新炉心の開発など、気が抜ける場面がない。目元がきついままなのも当然だった。
 それにしても、と隼人は竜馬を見つめる。
「何だよ?」
「どんな感じなんだ? お前の言う『危ない』目つきに見られながらするっていうのは」
「んー、気ぃ抜いたらられそうな、何かひりひりする感じ。ケンカしてるときみてえな。それと」
 竜馬の頬が少し赤く染まる。
「隼人は普段よりももっと何かギラギラして、つええ動物のオスみてえな。だから……何かぞくぞくして……すげえ、よかった」
「——」
 竜馬がそういう・・・・感覚にねじ伏せられるのを好む質だとは思っていなかった。
 隼人の中の独占欲が満たされる。
 それから、征服欲も。
「竜馬」
 唇にそっと口づける。
「……ん」
 獣の交尾じみたセックスのあとに、つきあいたてのような初々しいキス。そのアンバランスさがもたらす酔いに竜馬はうっとりする。
「……はやと」
 嬉しそうに呼ぶ。
「明日はもう、剃っていいぜ。髪も揃えていい」
「……いいのか」
「ん。十分、楽しンだし。……へへ、あんがとな」
 顎髭をすりすりと撫でたあとで、キスをした。
「ちくちくすンな」そして目を細めた。
「じゃあ」
「ン?」
「明日は無精髭のない俺とするか?」
 隼人が誘う。
 ぱちぱちと丸い目をまばたきさせてから、竜馬は少し気恥ずかしげに頷いた。