つきあってます。
隼人が竜馬にタンクトップを着せたままセックスするのが好きだってだけのいちゃラブお話。
若干、隼人はSっ気、竜馬はMっ気。本番描写だけありますが、あっさりさっくり短めなのでご了承ください。約3,500文字。2021/11/11
◆◆◆
弁慶の膝の上に灰色の毛玉が乗っていた。竜馬はその毛玉とじゃれている。
「コイツ、ボイラー室に住み着いてるあの猫の子供か?」
「ああ、たぶんな」弁慶が答える。
「いつの間にオスメス揃ってたンだよ」
「ときどきな、食材や什器を運んでくるトラックの荷台に紛れてるらしいぜ」
所内に侵入してしまえば、隠れる隙間はたくさんあるし、年中通して暖かい場所もある。癒しを求めて餌を与える所員も複数いるようで、小動物にとってはなかなかいい環境のようだった。
「すっげえ人懐っこいな」
竜馬は指の背で仔猫の顔をこする。みゃう、と小さな声があがった。
「可愛いなあ」
今度は弁慶が柔らかい腹をそうっと撫でる。仔猫はころんと腿の上でひっくり返る。それから細い脚を気持ちよさそうに伸ばしてみせた。
「はは、俺のこと気に入ってくれたみたいだな」
「おめえの脚は肉がいっぱいで、ぶよぶよのうえにあったけえンだろよ」
ふにふにの腹をさすりながら竜馬が笑う。それから、
「隼人ぉ」
背後へちろりと目線をくれた。
「……何だ」
「残念だったな」
顔はまったく気の毒そうにしてはいない。むしろ、楽しそうだった。隼人は舌打ちをする。
「お前、この中じゃ一番猫みたいなのにな」
弁慶も面白そうに言う。もちろん、隼人は不満げな表情でそっぽを向く。
「気づけばいたり、いなかったり。人とちょっと距離取るところとか、な」
「隼人は目つきがヤバいからな、食われると思ったンじゃねえのか」
「なあ隼人、もう一回やってみろよ。今ならだいぶリラックスしてて機嫌よさそうだぞ」
弁慶に促され、隼人が歩み寄る。一瞬ためらったあとで、そろりと右手を近づける——結果は同じだった。べしっ、とパンチを食らう。
「おめえの手、猫じゃらしに見えてンじゃねえの」
大口を開けて、竜馬がけらけらと笑った。
† † †
その夜——。
「……なあ」
隼人を見上げながら、竜馬が問う。
「ンっ、なん、で……うあっ、あっ」
「……どうした?」
「んん、何で、ときどき……着た、まま、あっ……」
竜馬のタンクトップは汗を吸い、ところどころ色が濃く変わっている。
「嫌か」
「んっ、嫌って……いう、か……なん、で、あぁ」
隼人の指が動くたびに、竜馬の言葉が途切れる。
「ふあ、あっあっあっ」
「……いいか?」
「んっ、んっ、気持ち、いい……」
「素直だな」
二本の指で竜馬の中をかき混ぜる。熱い肉が隼人を迎え入れるように蠢く。
「あっ……ン!」
「お前が素直だから、俺も答えてやる。この格好は、俺が興奮する」
隼人は空いている手を伸ばす。膨らんだ乳首の位置はすぐにわかる。そこを人差し指の爪の先でかり、とかいた。
「んあっ」
指の腹で押し、きゅうっとつまむ。
「んっ!」
いじくるたびに竜馬の眉根が寄せられ、鼻にかかった声が漏れる。
今度はタンクトップをたくし上げ、肌を剥き出した。
「こう、していると」
「う、んっ……あっ」
「俺の思い通りに……お前を支配している気になれる」
乳首を舐め、口に含む。
「ン! ヘンタ、イ……!」
竜馬がなじる。
軽く乳首に歯を立て、隼人がやり返す。
「ふあっ」
「少しくらい強引なほうが感じるんだろう?」
「——っ」
絶句し、竜馬は目を逸らした。
「なあ」
ニヤリと笑い、指を引き抜く。入れ替えにずぷ、とペニスを挿入する。
「——っ!」
「りょう、ま」
そのままぐっと奥まで突き刺す。
「あっあっ! ああぁっ!」
背中が反る。隼人は浮いた腰をつかみ、離さない。
「ひあっ、ああっ!」
快感の溶けている声が耳に心地いい。隼人は抽挿を繰り返した。
「ンあっ! あッ、あッ!」
快楽を引き寄せるように、竜馬の脚が自然に隼人の身体に巻きつけられる。
「い、いつもより、太……っ、あっ! キモチ、イイ……ッ、あ、あうっ」
うっとりとした瞳で、竜馬は喘ぐ。
「竜馬……っ」
隼人はタンクトップの裾をつかみ、竜馬の口元に運ぶ。
「自分で、咥えて……は、はあっ……俺に、身体を、見せろ」
「……!」
「ほら」
口にきゅっとねじ込む。
「〜〜〜〜ッ」
竜馬の顔がたちまち赤くなる。恥ずかしいのか、悔しいのか、それとも鋭い視線でなぶられて感じているのか。
「竜馬……!」
隼人の手が露わな竜馬の腹筋を撫で、這い上がっては乳首をこねる。陽にさらされていない白い肌が艶かしくうねった。
「ふ、ふぐ……っ」
突き上げられ、がくん、と頭が揺れる。それでも布を離さない。タンクトップが嬌声と唾液を吸い取っていく。
「ふっ——ふ、うゔっ」
たかが布一枚、その気になれば放り捨てられるのに、やけに従順だった。隼人が「興奮する」と言ったせいで、意地でも最後までこのままと考えているのかもしれない。
だが隼人の目には違うように映っていた。薄い布一枚に縛られている。もどかしそうに、逃げ出したがっているようで、それでいて自ら望んで隼人の責めを受けているように見える。
「ンんッ、ん゛ッ!」
いつもより明らかに感度がいい。唇から落ちる喘ぎの代わりに、絶え間なく肉壁が締めつけてくる。
「んっ……は、あ……っ、りょうま……」
呼ぶと、うっすらと涙が滲む目を向けてきた。
「イッて……いい、か?」
「んっ、んっ、ふ、ぐ——」
揺すぶられながら、こくりと頷く。
「りょう、ま……っ」
隼人が覆いかぶさる。ようやく竜馬の口から布を引きずり出し、舌をねじ込む。
「ン! ンむ!」
竜馬の腕が隼人の首に回される。一層、隼人の動きが激しくなる。
「ンッ! ん、ンんッ‼︎」
先に竜馬が中で達した。
「ん——っ」
ペニスが強く締めつけられる。まるで吸われているような感覚。
「……っ‼︎」
限界を迎え、隼人の精が勢いよく放たれた。
ふたりは重なったまま、まとわりつく快感に身を委ねる。
隼人が深く口づけると、竜馬の奥が震えた。
「ん……」
少し苦しそうに隼人の眉がしかめられる。
最後まで搾り取ろうと肉が貪欲に動く。煽られて、残っていた精液がまた竜馬の中に注がれた。
「は、あ……」
ようやく、離れる。
ペニスを抜くと、まだひくついている先から白濁が滴った。残滓は糸を引いてタンクトップに落ちる——さっきまで竜馬が咥えていた箇所に。
「——っ」
竜馬が息を呑み、腹の上を凝視する。
「…………竜馬」
その様子を見つめていると、視線に気づいて顔を上げた。
「はや……と」
どこか戸惑うような瞳。
「竜馬」
隼人は優しく、右の頬に触れる。泳いでいた目が安心したように和らぐ。
「……ン」
「よかった」
「……!」
目を見開き、竜馬が固まる。それからふと嬉しそうに表情がゆるみかけ、やがてきつくなる。
「……ざけンな」
唇を尖らせ、小さく零す。
「竜馬?」
「……服も脱がせねえで『咥えて身体見せろ』とか……すけべジジイみてえなこと抜かすし……むかつく」
拗ねるように、むすりとして。
隼人は微笑む。
「でも気持ちよかったんだろう?」
親指の腹で頬を軽く撫でた。
「——」
答えず、隼人の手から逃げるようにふいと顔を背ける。隼人は笑んだまま、
「つまり、俺たちは相性がいいってことだ」
頬を追いかけキスをした。
「…………おめえ、いっつもマイペースで好き放題しやがって」
「うん?」
「本当に猫みたいだな」
新宿で見た野良猫のようだ、と竜馬は言った。
「図太えンだよ。いくら『しっしっ』ってやってもな、まったく気にしねえンだわ。自分ちでもねえのに居座って、堂々と昼寝してる」
こんな目で、と人差し指でむにっと目尻を伸ばしてみせる。思わず隼人は吹き出した。
「……ほんと、むかつく。この服……もう、ほかで着られねえ」
はあ、と大きく溜息をついた。
「洗濯すれば済むだろう?」
また、むっとした瞳が隼人を見上げた。
「おめえの匂い……取れなかったら、その、気になるし、取れても…………思い出しちまう、だ、ろ……」
消えそうな語尾とともに、竜馬が目を伏せた。
下唇を噛む。恥じらうような仕種。長い睫毛がほんの少し、震えている。
「……竜馬」
思っていることが素直に顔に出る。照れている姿は隼人にとって、どうにも愛おしかった。
「なら」
隼人が口を開く。竜馬は怪訝そうな瞳を向けた。
「このタンクトップは俺専用の猫じゃらしだな」
かり、と布の上から乳首を軽く引っかく。竜馬の身体がぴくりと小さく反応したのを確かめて、それから満足そうに笑った。