これもきっと愛

新ゲ隼竜R18

つきあってません。肉体関係のみの前提。
セフレ関係が恋仲に変わる夜のお話。隼⇄竜。竜馬は自覚あり、隼人は思いを整理できていなくて明確な自覚なし。
【注意】新ゲのこのふたりが「好き」「愛してる」って言い合ったとしても楽しめる人向け。
好きになっているのに、自分からは言い出さない竜馬。それを変に勘ぐって「好き」「愛してる」って竜馬に言わせようとするけど、自分ではなかなか言わない隼人。隼人がいろいろ考えてひねくれてます。でもいちゃラブハピエンに着地。
隼人の一人称。のっけから挿入済み。約4,000文字。2022/2/5

◆◆◆

「なあ」
 上からじっと見つめられる。
「隼人って俺のこと……好きなのかよ」
 訊き直そうとしたが、その前に唇が下りてきて言葉を止められた。
 それで違和感の正体がわかった。

 ——俺に言わせたいのか。

 気づいたら、竜馬の様子が変わっていた。
 始まりも関係も、もっとドライだったはずだ。それが変に甘えてくるようになった。コトが済んだあとも胸に顔を押しつけてきたり、不意にキスをねだってきたり。
 初めは単純に、俺に惚れたのだと思っていた。
「んっ」
 気持ちよさそうな鼻声。
 絡みつくような瞳や唇に吸いついてくる様を見るに、あながち間違いではなかったはずだ。それなのにずっと、奇妙な感覚が拭えずにいた。
「ン、ふ……っん、ん!」
 突き上げてやると、眉根を寄せて喘ぐ。それでも唇は離れようとはせず、粘膜の愛撫を欲しがる。
「っ!」
 後頭部を引き寄せ、望み通りにしてやる。咥内を舐ってやると、連動するように肉壁が収縮した。
「んっんっ!」
 今にも泣き出しそうな声で、もっと、とせがむ。言われなくても、わかる。
 竜馬が首元に抱きついてくる。快楽の波から振り落とされまいと必死にしがみついているようで、滑稽でいながらとてつもなく俺をそそる。
 しがみつく相手は俺しかいない。
 そう思うと、とことん与えたくなる。ぐずぐずになって涙と涎で肌を汚しながらも俺にすがってくる姿がどうしようもなく可愛い。
 コックピットの中では調子づいて、ときには本気で憎たらしい男になるクセに、ふたりきりだとこんなにも——。
 竜馬の限界が近い。
 腰を掴んで深く、深くペニスを押し込んだ。
「——ッ⁉︎」
 俺の上で声にならない声をあげて達する。
 小刻みに震える尻を押さえ、奥のほうをこする。すると、弾かれるように何度もイキ始めた。
「……っは、んう……ッ! ンんんッ‼︎」
 ひくひくと痙攣し、俺を喰らおうと締め上げてくる。だが今負けるわけにはいかない。竜馬の腹が膨れる前に果てるなど御免だった。
「んあ゛……ッ!」
 こらえきれず、竜馬の頭が反らされる。
「あ゛っあ゛っ、んひぃっ!」
 たが・・を失った唇は嬌声をあげ続ける。
「は、はやとぉっ! あ゛っ、イイッ!」
 表情はもう蕩けきっている。為す術もなく、とはこの竜馬にこそ合う言葉だ。

 きっと、今なら——。

「竜馬」
 さらに突き上げる。
「んあうっ、あっ、あっ!」
「竜馬」
 そして、問う。
「俺が好きか?」
 竜馬ほどはっきりした男なら、本当に惚れたのならとっくにそう言っているだろう。けれども何を考えているのか、俺に言わせたがっている。
 ゲームのつもりか。
 ——もし、そうだとしたら。
「ほら、竜馬」
 そっちがその気なら、俺だって。
「ひんッ!」
「言ってみろ、俺が好きか」
 唇を撫でる。竜馬は舌を出して俺の指を舐める。
「んっ! 好き、す、きぃ……っ!」
「じゃあ、愛しているか?」
「ああっ! はや、と! すきっ……あいして、る、んあぁっ‼︎」
「竜馬」
「あい、して——んんッ! はぁんっ、あっああっ、はやとっ! すきっ」
「——竜馬っ」
「あ゛っ、お゛……っ」
 一際大きく、竜馬の肢体がびくつく。
「……っ、ひっ……は…………と」
 ぼろぼろと目の縁から涙が溢れてきた。
「もう少し、つきあえ」
 起き上がり、唇で涙をぬぐってやる。
「ん……キス、はや……ン」
 甘えてくる唇を吸う。
「ん、ふ、ん……」
 繋がったまま押し倒す。竜馬の脚が絡んでくる。
「はあ……ん、はやと……はやと」
 うっとりとした目つきでうわ言のように俺の名を呼ぶ。
 この瞬間の竜馬は俺だけのものだ。誰の目にも触れないように、この腕に囲って永遠に閉じ込めておきたい——たとえ竜馬が拒んでも。
「はやと、俺に、も……」
 かすれた声。
「何だ?」
「俺にも、言って……はやと」
 下唇を食んでくる。
「好きって……ん、愛してる、って……」
 はあ、と熱い吐息で誘う。
「……」
 一瞬、迷う。
 俺たちは、そういう関係・・・・・・ではないはずだ。
 それに——。
 本来は必要のない言葉で、口にしたとしても心が伴わないただの綺麗な音だ。情事の場での睦言など終わってしまえばそれまでで、所詮は戯言たわごとに過ぎない。
 消えてしまう戯言なら、言わなくても同じだ。
「なあ……はやと……ン」
 舌が滑り込んでくる。
「ン、俺は……言ったのに……はやと…………なあ」
 きっと、竜馬も本心じゃない。ふたりですることがあまりにも気持ちよくて、だからそう錯覚しているだけじゃないか。
 キスに応えて終わりにする。竜馬は怒るだろうが、すぐに元の関係・・・・に戻るはずだ。
「……はやと」
 だがキスのあとの声は消え入りそうな細さだった。
「…………竜馬?」
 俺を見つめる。
 その目からまた涙が零れた。
「——っ」
 一瞬、心臓が止まった気がした。
 それきり竜馬は口をつぐむ。目蓋をぎゅっと閉じ、顔を背ける。
 熱に浮かされ流される者の目ではなかった。俺に拒絶されたショックと哀しみが滲んでいるように見えた。
 胸の奥がつかえたように急速に苦しくなる。
 竜馬は俺の下で小さく震えていた。
 ——違うのか?
 まさか、本気だったとでもいうのか。
「……あ」
 ちり、と立ち上った不安が爆発的に広がる。
 ——俺が間違えていたら。
「…………っ」
 そのせいで俺の腕の中から竜馬が消えてしまったら。
 どくん、とひとつ大きな波を立てて、直後に心臓が激しく喚き出した。
「……竜、馬」
 喉の奥から声を押し出す。手を伸ばすと指が強張っていた。
 恐る恐る、汗ばんでいる額に触れる。竜馬の肩がぴくりと反応した。
「…………竜馬」
 耳元でささやくと息を呑んだのがわかった。

 手放したく、ない。

「……すまない」
 頬に口づける。微かに竜馬の唇が開いた。
「竜馬、お前が可愛い。お前を……俺だけのものにしたい」
 そっと腰を揺らす。
「ン……」
 竜馬の顎が上がる。

 ——そうだ、この気持ちは。

「……竜馬、好きだ」
 濡れた睫毛が震えて——鳶色の瞳が現れた。そろそろとこちらを向く。
「好きだ」
 唇にキスをする。頭を撫でて、その目を覗き込む。
 俺を試すような、奥底をさらおうとするかのような、竜馬の目。逸らさずに見つめる。
「お前を——俺は」
 しかし、ためらう。
「俺、は」
「……」
「…………俺は……責任が持てない」
「責任……?」
 好きだという気持ちは確かにある。けれども何が『愛』かなんて、知らない。
「お前を抱きたい——お前が俺に飽きないでいてくれるなら、ずっと」
「……隼人」
「だがこの気持ちを『愛』と呼んでいいものか、お前には悪いがわからない」
 戯言ならば、本音を隠していっそ言ってしまえばいい。竜馬が喜ぶのなら、それでいい。
 なのに、どうしても言えない。軽々しく扱うことができない。
「お前には言わせたクセにな」
「隼人」
 自嘲に口元を歪めると、竜馬の手が俺の頬に触れた。
「……ばぁろ」
 両の手で頬を包み込んで、笑う。
「ンなモン、いらねえよ」
「……何?」
「そんな小難しいこと考えてたのかよ。おめえらしいな」
 軽くキスをしてきた。
「俺は『好き』の次が『すげえ好き』で、それがすっげえ集まったら『愛してる』だ」
 もう一度、唇を押しつけてくる。
「学者じゃねえンだから、言葉の本当の意味なンて知らねえし、興味ねえ。自分が物差しだ」
「——」
「俺は隼人が好きになっちまった。それで——それで、隼人もおんなじ気持ちだったらいいなって、聞けたらいいなって……それだけだ。『責任』が欲しいワケじゃねえ。何だか人質みてえだしな」
 ぎゅ、としがみついてくる。
「ん、なあ、続きしようぜ。ずっとこうやって喋ってると、萎えちまうンじゃねえのか」
 くい、と腰を動かして俺のペニスを確かめる。
「……っ」
「へへ、まだ全然大丈夫だな」
 さらに動いて、器用に刺激してくる。
「なあ、隼人」
 柔らかい声。
「……俺、おめえに『好きだ』って言ってもらえて嬉しかった」
「……竜馬」
「嘘だってつけるのに、真剣に責任がどうだとか考えてバカ正直に言ってくれたのも、嬉しかった」
 ——竜馬。
 自分はあれこれ邪推もしたのに。
「なあ、これって……俺たち、両思いってヤツだろ?」
「ああ——ああ、そうだな」
 竜馬の問いかけに頷く。さっきとは違う感情で胸がつかえる。

 あまりにも、囚われていた。
 始まりは単なるきっかけに過ぎない。身体と時間を重ねて互いを知れば、むしろ好きに傾いていくのは自然のことだ。
 変わったのは、竜馬だけではなく俺もだった。自分が気づかなかっただけで、俺のほうが先に変わり始めていたのかもしれない。
「竜馬」
「ン」
 ゆっくりと抽挿を再開する。
「ふ、あ……気持ちいい……ンっ」
 すぐに甘い鼻声が溢れ出す。
「んあ、あっ……はやと……」
 嬉しそうに俺を見上げてくる。
 その声も、表情かおも、肌も、全部。

 ——俺だけの、竜馬。

「竜馬、お前の基準を採用する」
「う、んっ、……えっ」
 耳元に唇をつける。

「愛している」

 そう、正直に告げた。