【閲覧注意】
モブ竜前提の隼竜。つきあってません。竜馬が明るいビッチです。
竜馬が複数の男性所員とセックスしていると知った隼人。竜馬に誘われて嫉妬やねじ伏せたい気持ちから手を出すも、自分のものにしたい思いが出てくるこじらせ無自覚の隼→竜な話。
モブとの行為描写自体はありませんが、キスマークや移り香、乱れたベッドなどの行為直後を示す描写があります。また、シャワーは浴びますが、モブとした直後に竜馬が隼人にセックスをねだりに行きます。ゴムなし設定。2回本番あります。受けのフェラあり。
何だかんだでここからちゃんと純愛する、はず。約25,000文字。2022/3/13
◆◆◆
偶然だった。
男性所員が竜馬の部屋から出てくるのを見かけた。
背後で閉まった扉を妙に名残り惜しそうに見つめてから男は去っていく。少し進んでは立ち止まり、振り返る。その動作を三回。首元のネクタイはだらしなくゆるめられていた。
「……」
反射的に廊下の角に身を隠しながら目で追う。見ない顔だった。否、印象に残っていないという表現が正しい。
まさか友人でもあるまい。医療スタッフの格好でもない。ゲッターのテストや訓練、生体検査の類であれば呼び出しには内線があるし、所内のあちこちにスピーカーもある。
——いや。
自分のような輩が身内にいれば、秘密裏に行いたいことは対面で伝えるのが一番安全だ。早乙女博士はデータは全部見せたと言うが、信用できるわけがない。
扉に近づく。
なぜか、ほんの少しだけためらいがあった。暴いてはいけない秘密に手をつけるような後ろめたさ。隼人にしては珍しい。
きっとあの男にあった違和感のせいだ。勘が告げている。
『引き返すなら今だ』と——。
だが知りたい。
自分はゲッターロボのパイロットだ。知る権利がある。他に理由が必要なら、いくらでも、どうとでもつけてやる。カマをかければ竜馬なら引っかかるだろう。
そう考えてインターホンを押す。やがて扉が開いた。
「あンだよ、忘れ物——」
ボクサーショーツ一枚の竜馬が、面倒くさそうに頭をかきながら現れた。
「か、よ」
訪問者を見て目をぱちぱちとさせる。隼人の瞳は竜馬の顔よりも、その身体に吸い寄せられた。
胸や腹にはいくつもの赤い跡——あからさまにそうとわかる——キスマークがついていた。
「お? ……ああ」
視線の行方に気づいたものの、竜馬は動じない。それどころか面白そうに唇の端を上げる。
「キスマークつけるヤツって、何考えてンだろうな」
事もなげに言った。
「——」
「用があンならさっさと入れよ」
周囲に目をやる。誰もいないことを確かめ、顎で促した。
「ああ」
平静を装い、隼人は部屋へ足を踏み入れた。
背中にも吸い跡がある。赤さが生々しい。
男性所員の姿を思い出す。未練がましさに納得がいった。ネクタイはゆるめられていたのではなく、きちんと結ばれていなかった、が正解だった。
断りも入れず勝手にソファに座る。向かいのベッドに竜馬が腰掛けたと同時に訊ねた。
「あの男は?」
「研究所の人間」
「そんなことはわかっている」
「じゃあ何答えればいいンだよ」
竜馬がむっとする。タオルケットは半分床に垂れ、シーツもぐしゃぐしゃに乱れている。枕元にはボックスティッシュ。ベッドの上で何が行われていたのかは一目瞭然だった。途端に、雄臭さが鼻をつく。
不快だった。
——まさか。
見誤るとは。
だが、こんな状況はいくら隼人でも予測不能だった。
「……いつまでその格好でいるつもりだ」
竜馬は下着姿のままで、情事の痕跡を隠そうともしない。正視に耐えないが、目を逸らすのも意識していると受け取られかねない。結果、珍妙な問いを発することになった。
「このあとシャワー浴びンだよ。つーか、俺の部屋なンだから、俺の自由でいいだろ」
「あの男は恋人か?」
「いいや、ただヤるだけ——」
竜馬の声が途切れる。
「……なあ」
不審そうな瞳でぎろりと睨む。
「おめえ、何しに来たンだ?」
「あの男がお前の部屋から出てくるのを見た」
「それで?」
「早乙女が俺たちに黙ってお前だけにゲッターの実験を依頼したのかと思ってな」
嘘ではない。仮にでまかせだとしても、隼人の口から出る言葉としては完璧なはずだ。しかし、竜馬の表情は変わらない。
「おめえ、そんなに嘘ヘタだっけ」
「——っ」
わずかに身体が硬直した。竜馬の眼差しは射るようだった。一瞬の動揺は気づかれただろうか。
「嘘? どこが」
淡々と返す。響きに微塵も揺らぎはないはずだった——が、竜馬がニヤリとした。
「そうやって、聞き直すところ」
しまった、と思うも遅過ぎた。
「それと、俺の格好だの恋人だのは、ゲッターと関係ねえだろ」
犬歯を見せて不敵に笑う。
「なあ」竜馬がベッドから降りる。
「いいこと教えてやるよ」
ずかずかと目の前まで歩いてきて、
「それ、嫉妬って言うンだぜ」
耳に唇がつきそうなほど寄って、ささやいた。
「————っ!」
隼人の頭にカッと血が上る。
「なあ、隼人」
すうっと顔を離す。いたずらな目つき。
「俺は、おめえのしてることにいちいち突っかかったりしてねえだろ? それなのに、おめえは俺を縛ろうとすンのか」
見下ろす瞳が勝ち誇ったように細められた。
「おめえ、俺のこと好きなンじゃねえの?」
「——馬鹿な」
ひりついた喉の奥から声を引き出す。
「バカたぁ、ひでえ言種だな」
竜馬は鼻を鳴らす。
「じゃあこっちか。ヒラの研究員が、自分がやれないことをやってンのが気にいらねえンだろ? 俺とヤッてンのが、よ」
くつくつと零れる。
「俺のほうが上のはずなのに、って」
「貴様——」
憎たらしい笑顔だった。咄嗟に立ち上がり、その首に左手をかける。しかし竜馬は微動だにしない。
「人ってなあ、図星突かれると怒ンだよ」
やけに冷静な響きだった。
「……ああ、そうだな」
隼人の唇から、怨嗟のこもった音が漏れた。
確かに、図星だ。
自分が自由にできない竜馬を、たとえ一時でも、肉体だけでも、恣にできる存在が許せなかった。
そして。
それを許している竜馬も。
ざわつく心を見透かしたように、竜馬が口を開く。
「おめえ、頭はいいンだろうけど、結構単純だよな」
ギッと隼人の目がつり上がる。だが竜馬は臆することなくじいっとその双眸を覗き込んだ。
まるで裏側に潜む感情を探るように。
「……おめえが俺とシたいってンなら、別にいいぜ」
「何?」
思わぬ言葉に左手の力がゆるむ。竜馬は素早くその腕を弾くと隼人の襟元を取った。
「な……っ」
引っ張られる。瞬時に竜馬が身体の位置を入れ替える。あっという間にベッドに倒され、腹の上にのしかかられた。
「——っ」
唇が触れる。
すぐに舌が入り込んできた。ぬるりとした感触に嫌悪感を催し、反射的に突き飛ばす。
「——ッ!」
竜馬は仰け反ってバランスを崩し、勢い余ってベッドからも転げ落ちていった。
「……っ痛え」
その唇から血が滲む。
「……っ、ふざけるな!」
隼人が右手の甲で口元を拭う。竜馬の赤い血がついた。
「ふざけるな!」
もう一度叫び、睨みつける。
——他の男と口づけたその舌で。
怒りでおかしくなりそうだった。
竜馬は床に寝転がったまま、隼人を見上げる。
「くっ……くくっ、ふ、くふっ」
愉しげに笑う。
「隼人」
顔つきは妖しく、艶かしい。
「おめえ、俺が欲しいンじゃねえのか?」
隼人の心臓がドッと跳ねる。
「なあ」
身体を起こし、見据えてきた。
「俺、おめえとシても、いいぜ。——いや」
舌が唇についた血を舐め取る。
「おめえと、シてえ、な」
「————っ!」
慌てて目を逸らす。
見てはいけない。囚われてしまう。
ただそれだけを直感し、隼人は扉へ急ぐ。
「はやと」
鼻にかかった、まとわりつくような声が追い縋ってきた。思わず足が止まる。
「いつでもいいぜ」
見なくても、ニヤリとしたのがわかった。
「……っ」
自分でも何に焦っているのか、抗っているのかわからない。隼人は拳を握りしめ、振り向かずに部屋を出た。
† † †
「何だよ、もうガマンできなくなったのかよ」
どうすればそんな艶かしい眼差しを手に入れられるのか。瞳だけで隼人は囚われる。竜馬の部屋を訪れたときから、もうこのことは決まっていたのだ。
あの日から心が泡立って仕方がない。何をしていても竜馬の存在がちらつき、隼人の胸の奥底を揺らし続けていた。
「一週間も経ってねえじゃねえか」
壁掛けのカレンダーを見て、竜馬がくすりと笑った。
「けど、ま、誘ったのは俺だしな。来てくれて嬉しいぜ。風呂もさっき済ませたし、おめえタイミングいいな」
まだ水分を含んだ黒髪は普段よりボリュームが抑えられている。ただし毛先は本人の跳ねっ返り具合と同様に元気よくあちこちを向いていた。
「ン?」
隼人が近づいてこないので竜馬から寄る。胸がつく距離まできて、
「どうすンだよ」
笑った——今度は無邪気に。
「……っ」
屈託のなさに隼人は一瞬、息を呑む。指先が強張った。
「隼人」
甘えるように首を傾げる。鼻先をくすぐる洗髪料と石けんの清しい香りは、これから繰り広げられる肉欲の営みと対極的だった。隼人は竜馬をぎゅっと抱きしめる。
「へへ」
竜馬は当然、と言わんばかりに口角を上げた。隼人の腰に腕を回し、応える。
けれどもそこから進まなかった。隼人からはキスもないし、呼びかけもない。
「…………隼人?」
訝しがると、抱きしめる腕にもっと力が込められた。
「え」
戸惑いは隼人の胸に吸い込まれる。
「——はや、と」
「何だ」
「……」
抱きしめ合ったまま。
「……ヤるンなら、さっさとしやがれ」
言う竜馬の顔は見えない。隼人は体温の高い背中をゆっくりと撫でてから身体を離した。
「……あんな目つきしてたクセに、まともぶるンじゃねえよ」
竜馬が唇を尖らせて不機嫌そうに——それとも照れくさいのか——隼人の脛を蹴り、視線を逸らす。隼人は何も答えず、右手で竜馬の顎をとらえてキスをした。
「ン」
唇を軽く押しあてて、何度もその柔らかさに触れる。それから徐々に強く、長く。
「ん……何か……ハツタイケンみてえだな」
竜馬が小さく笑う。
「何?」
「だってよ、がっついてヤるだけだと思ってたから。……おめえ、意外にちゃんとしてンだな」
「ちゃんと?」
「フツーの彼氏っぽい」
もっと性急に、直接的で荒々しい行為を想像していたのだろう。
「童貞こそ、もっとがっつくと思うがな」
隼人らしく真面目に答え、もう一度口づける。
「ふ……ん、ん」
「ただ突っ込んでかき回すのが好みなら、そうしてやってもいいが」
「ン……いや、隼人とはハツタイケンだしな。このままで」
竜馬の腕が隼人の首に回される。
「優しくしてくれよ」
瞳に蠱惑的な光をたたえ、微笑んだ。
† † †
昨日か一昨日のものか、誰かの吸い跡が残る身体を裏返す。四つん這いにさせると後ろから覆いかぶさった。
「んっ」
うなじに口づけ、下に向かう。
「ふ……ンっ」
唇が触れるたびに竜馬の身体が小さく揺れた。手のひらで肌を撫で、その熱さを確かめる。
「ああ……」
竜馬は気持ちよさそうに目を閉じ、身を任せる。隼人の手の動きに合わせて吐息が零れ落ちていく。
「はやと……」
首をねじり、キスをせがんだ。
「ン……」
隼人は応えながら、竜馬を愛撫する。
「んっ、ん」
指先で乳首を弄べば可愛らしく鳴く。胸筋をなぞれば切なげに震える。控えめに感じる姿からは奔放に性を愉しむ様は想像できなかった。
「はやとの指、気持ち、いい……ン」
「はあ……っ、りょう、ま……」
耳を甘噛みする。
「うあ……っ」
「お前……感じやすいんだな」
耳元でささやくと、睫毛を伏せた。いまさら恥ずかしがっているようで不思議だった。
隙のない、しなやかな肉体を指で味わう。今は隼人だけに許された行為。うっすらと汗ばんで吸いついてくる感触が心地よかった。
「んあぁ」
背中に口づけると、鼻にかかった声があがる。すう、とその肌の匂いを吸い込む。声と同じように甘くて、隼人の頭の奥を痺れさせた。
キスを繰り返しながら腰を撫で、腹筋へ指を滑らす。
「んっ、ん、はっ……」
もっと触れて欲しいと、竜馬の腰がくい、と動いた。望み通りに隼人の指が下りていく。
「あ、あ——」
期待に竜馬の肢体がひくついた。
そのとき、インターホンが鳴った。隼人の動きが止まる。
「……」
扉の向こうの気配を探る。
「は、はやと」
ふ、ふうっ、と身体の下から竜馬の吐息が聞こえてくる。
「ん、いい、から」
再びインターホンが鳴った。竜馬を見る。
「誰かわかンねえ、けど……放っておきゃ、そのうち帰ら、あ」
「いいのか」
「別に、そういう約束でも……ねえし……はぁ、ン、キスしてくれ……よ」
物欲しそうな瞳でねだる。
「お互い、気が向いたらって……ヤツだ、から……」
目を凝らすと、扉脇のモニタ画面に人影が確認できた。ただし、距離があって顔までは判別できない。
「お前、何人とヤッてるんだよ」
さわりと尻を撫でる。
「あっ……ン、よ、四人? 五人? たぶん……そんぐれえ」
「まさか名前も覚えていないのか」
丸みをなぞり、ぎゅっと掴む。
「うんッ」
びくん、と竜馬の身体が揺れた。隼人は両の手で尻を揉みしだく。
「う、ンンっ……は、ああぁっ……」
もうインターホンは鳴らなかった。
「名前はぁ……あっ、覚えた、けど……んぅ、あっ……忘れ、た……あぁン」
隼人の手に尻をこすりつける。
「あっ……それよか……ン、早く……」
「……ああ」
ようやく、股間の膨らみに触れる。
「——あっ」
途端に竜馬の声が跳ねる。ぴちりとしたボクサーパンツには、すでにくっきりと形が浮き上がっていた。確かめるようにさする。亀頭を指で包むとじっとりと熱く、布が濡れていた。
「はあっ、あっ、あ」
「風呂に入ってせっかく着替えもしたのに、もう駄目にしたのか」
先端をきゅむ、と押す。くぐもった鼻声があがり、いじられる悦びを伝えてきた。
「は、はやとの……うあっ、せい……んっ、キ、キス、し、て」
また、せがむ。
隼人のキスがよほど気に入ったのか、口づけを覚えたばかりの恋人のようだった。
「ん、はぁ……っ、ンん」
うっとりと隼人の唇を受け入れる。だが下半身はもっと快感を手繰り寄せようと器用にうねっていた。
純情と淫猥。相容れないはずの性質が同居していた。アンバランスさに魅せられて目が離れなくなる。その先が見たくてたまらない。
ショーツを剥ぎ取ると、竜馬本来の雄のギラつきが露わになった。隼人はためらわずにしごき始める。
「ふあっ! あっあっ」
一際高い嬌声。
「ああ、ンっ!」
次第に、竜馬の吐息とにちゃにちゃという音が大きくなっていく。
「ああっ……あ、んっ!」
「どうする? 一度、抜くか?」
「んっあ、あ、はあっ! ンッ、いい……」
首を横に降る。
「お、俺、ナカのほうがっ、んっ、好き……だか……ああぁ」
やめるのが惜しいほどに色っぽい。隼人の手がもっと速くこすり上げる。
「あっ! ばかっ……ンんッ、はや、と!」
「よくないのか」
「イイけどっ、あんっ、あ、あ、このカンジ、で……するのが、ンっ、まだっ……出したく、ねえっ」
「……なら仕方ない」
力をゆるめる。それでも未練たらしく、先走りをすくっては亀頭に塗り広げながらにゅくにゅくと弄んだ。
「ふあ……っ! あ、あっ、や、め……っ、この、ばか……っ」
「気持ちよくしてやっているのに、何度も馬鹿呼ばわりとはな」
「おめえ、が訊いて……きたからあっ、うぅ、ンっ、答えた……っ、んあ、はあっ……!」
「つい、いじめたくなった」
「んっ、ばっか……」
「何回言えば気が済むんだ」
隼人がキスで唇を塞ぐ。
「ん、ンん……!」
震えながら竜馬も応じた。
「はぁ……ん、ん」
深く食み、吸い合い、互いの熱を交換する。
「ん……は、あ……っ……じゃあ、つ、ぎ……」
欲に濡れた瞳が隼人をとらえた。
「次?」
「……今度は、ン、俺が……気持ちよく、させてやるよ」
一転、好戦的な笑みを見せた。
竜馬の手が下着を脱がせていく。
「なん、だよ……すっかりできあがってンじゃねえか」
しっかりと勃っている隼人自身を目にし、からかう。
「そんなに、俺とシたかったのか」
「——」
「へへっ」
合わせるだけのキスをし、竜馬の唇は下へ向かった。
「おめえ、結構なモン持ってやがンな」
人差し指でつう、とペニスをひと撫でし、握る。
「んっ……」
隼人が目を瞑る。その様子を仰いでから、
「……すげえ具合よさそうだな」
嬉しそうにペニスを眺めた。軽くしごいて硬さと太さを確かめる。
「長くて好きなトコどこでもあたりそうだし、特にここ」
カリ首の段差を人差し指の背ですりすりと撫でる。
「すっげえ、気持ちよさそう」
ちゅ、と口づけた。
「う……っ」
隼人の呻きを聞き、ニイィ、と竜馬が笑う。
「そういう反応、すげえイイな」
れろ、と舌先で亀頭を舐め、次に裏側で鈴口を軽く撫でた。
「……っ、う」
亀頭を唇で挟み、舌でねぶる。吹きかかる鼻息までもが隼人を責め立てた。
「ふ、う、竜……馬……っ」
「んっ、普段、はスカしてるイイ男が……チンポ舐められてよがってンの、は、あ……ん、サイコーだ、な」
唾液を溜めてちゅくちゅくと音を鳴らしながら先端をいじる。溢れる先走りと合わさって肉茎が徐々にぬらついていく。
「ンんっ、ふ、隼人のは……お上品な味だな」
ぢゅう、と吸い、上目遣いでうかがう。
「……っ」
隼人の目がわずかに動揺したのを確認し、竜馬はペニスを深く咥え込んだ。
「うあっ」
思わず隼人が仰け反る。
ぐ、と飲み込まれる。先端への刺激と竿全体への締めつけに一瞬目の前が白くなる。
「ふ、うっ……」
たまらず竜馬の頭を押さえる。快感を受け続けたい。けれども、このままではすぐに果ててしまいそうだった。竜馬は咥内でびくつく隼人自身に気をよくし、構わず長いストロークを始める。
「あ、あ……りょ……まぁ……っ」
奥まで誘い込まれてはなぶられる。ゆるみと締めつけが交互にやってきては隼人を苛んだ。
「ふっ——あ、あっ」
つらそうに眉をしかめ、隼人が喘ぐ。もうイク寸前だった。自然に腰を突き出す。
「ンぶっ——」
膨張したペニスをねじ込まれ、竜馬も顔をしかめる。
「ぐ——ん、ンッ!」
「うっ……!」
ぎゅうっと竜馬の喉奥が締まる。限界を迎え、隼人はそのまま射精した。
「ち、窒息するかと、思った……」
精を放った隼人と同じくらいに竜馬の息もあがっていた。
「へ、へへ……こっからが本番、だぜ。頑張ってくれよな」
好色そうにその瞳が光る。
「ン……すげえ……全然、萎えねえじゃねえか」
はしたなく濡れている口元を拭いもせずにまたペニスを咥えた。
「……っ」
軽くこすられるだけで隼人の劣情が底なしに湧き出てくる。
「りょう、はあ……、はっ、ん」
「なあ……もう挿れてくれよ」
そそり立つペニスにキスをして、竜馬が誘う。
「だいたい準備できてっから」
「準、備?」
「おめえの、あんまりすげえからガマンできなくって……さっきから自分でほぐしてた」
尻が見えるように身体をずらす。そうして、隼人の目の前で右手の人差し指と中指をアナルに挿れてみせた。
「……んあぁ」
指を抜き差ししながら流し目で視線をくれる。いやらしく拡げられた場所からは、くちくちと粘膜が発する音が聞こえてきた。
「な、もう……いいだろ?」
「……ああ」
吸い寄せられるように、隼人の指が竜馬の尻に伸びた。
† † †
どうりで離れられないはずだ、と思う。
「あっ! あっ!」
猫の目のようにころころと変わる表情。純朴さ、あどけなささえ感じる顔つきをしたと思えば、むしゃぶりつきたくなるような淫らな相貌。健気に耐えているのかと思いきや、いきなり身体を開いてみせる。
そして、まとわりついてくるこの肉——。
突き入れるたびに熱く絡みついてくる。隼人は無言で貪った。
「は、はやとっ、の——あっ」
バックでかき回され、竜馬が悦ぶ。
「イイっ! ああっ、あっ! あっ!」
隼人は形のいい尻をつかみ、ぐっと押し広げた。びくりと竜馬の背中が跳ねる。
「そ、それぇっ、だめッ! ひッ」
「吸いついているのが丸見えだぞ」
「や……っん!」
ぐぐ、と肉棒を沈める。尻の穴と中が締まるのがはっきりとわかった。
「駄目だの嫌だの、どの口で言うんだよ」
「あっあっあ、あ!」
ゆっくりと奥まで進む。
「ああぁ、っあ!」
「とても嫌がっているようには思えんな」
「ひあっ⁉︎ あっ! や、あっ!」
「なあ、竜馬」
「お……っ、あ、あっ、んあっ」
探るように突いて一通りの反応を確かめたあと、隼人はふ、と息を吐いて笑った。
「中のほうが好きって、どの辺りだよ」
ペニスを穴の口まで引き戻し、亀頭で縁の裏側をこする。抜いてはまた先だけ押し込む。
「ふあっ、あ、んっ……んあ」
甘い声がそのたびに漏れた。
「ん? それともやはりここが一番か?」
もう少し奥まで挿れる。角度をつけ、前立腺にあたるように動かす。
「ンんッ!」
わかりやすく竜馬の全身が震えた。膨らみを狙い撃つと、たちまち竜馬の中がうねり出す。
「あ! はあっ!」
「そんなにイイか?」
「あッ……イイっ……は、あんっ、んっ、んんッ!」
揺れるペニスからは涎が滴り、シーツに染みを作っていた。
「ああっ、イキそっ……あっ、イクッ……ん、ん、ンッ!」
達したかはすぐわかる。だが隼人にやめる気はない。そのまま責め続けた。
「ひんッ! ひあっ、あっ、また、イ……クッ」
スイッチが入ったように簡単に達する。
「あ…………ひ……っ」
「もう少し、奥はどうだ?」
ずず、とゆっくり、深く突き刺していく。
「おあッ! ッ! うっ、あ、あ゛あ゛ッ——!」
竜馬はぶるぶると悶えながら崩れた。
「……っあぁ、はあっ……」
「まだへばるタマでもないだろ」
伏している身体に覆いかぶさり、ぐい、と腰をねじ込む。
「あっ……あ、あ……お、奥……」
押しつぶすように密着させ、待つ。
「んあ……ぁ」
次第に竜馬の中がひくつき出す。
「あ……あ……っ」
時折、ゆるくかき混ぜてやる。
「ふっ……あ、あ、ん」
やがて、熱く熟んだ肉壺が痙攣し出した。
「はっ……あ、あっ……や、これ、な……に……?」
「よくないか?」
「……気持ち……いい……んあぁ」
竜馬はとろけるような声で鳴いた。目を瞑り、ぴくぴくと感じている。
「あ、あ……」
肌にキスをし、撫でてやる。
「んっ、あ……ざわざわす、る……これ……イキそ……」
ぶるっと身を震わせ、きゅうっと眉根を寄せた。隼人は一度だけ奥を突く。
「ふああぁっ!」
途端に、竜馬の穴が締まった。
「あっ、あっ……ひあっ」
身体に回された隼人の腕にしがみつく。腰がガクガクと揺れる。
「んっ、ふあぁっ……あ、あっ……」
肉壁がペニスに絡みついてきた。吸い尽くされそうな快感に、隼人も思わず目を閉じる。
「ぐ、りょう——」
「すげ……っ、あぁ、ああっ……!」
「……っ」
締めつけに耐える。竜馬を煽った手前、まだイクわけにはいかない。
「ああっ、あっん! んっ!」
腕の中で竜馬が達する。下腹部から一気に広がる波にさらわれそうになり、隼人は唇を噛んでこらえた。
「ふ、く……っ、ふう……っ」
隼人が息を吐き出すとその振動すら感じるようで、竜馬からまた「あぁ」と零れる。しどけなく開かれた唇が艶かしかった。
「……ギブアップか?」
頬にキスをする。
「…………ン」
そろりと竜馬の目蓋が持ち上がった。涙の浮いた瞳がこちらを向く。
「うん?」
口が微かに動いた。
「——」
「何?」
「ま、だ……」
「……?」
「まだ、イケる……から……んん……上、乗らせ、ろ」
火がついたとばかりの科白に隼人の口元がゆるむ。
「いいぞ。自分で乗って、好きに動け」
「……ン」
竜馬を助け起こし、自分はベッドに仰向けになった。
「はっ……ンあっ」
満たされていく感覚を味わいながら、竜馬の尻が沈む。
「うっ、あっ……」
根元までは咥えず、角度を調整する。二、三度腰をうねらせてあたり具合を確かめた。
「ンあ……す、すげえ」
倖せそうに目を細める。
「ん……おめえのチンポ、やっぱ好きだわ」
下になった男に笑いかけると動き始めた。すぐに唇から嬌声が溢れ落ちる。
「んあっ、あっあっ、気持ちいい……っ」
目を瞑り、ひたすら腰を振る。
「あ、はっ——ん、ンんッ」
隼人の視線は竜馬の顔に釘づけだった。
淫らな相貌。感じている姿はまるで雌だ。だが貪欲に快感をつかまえようとギラつく様は確かに雄だった。
「カサ、が……っ、あっ、んんあっ、ひっ」
腰を上げるときにカリ首が引っかかる。相当に気持ちいいらしく、頭を反らしてわななく。
「やべっ、あっ、ふ……っ」
舌を出して喘ぐ。苦しそうにも、嬉しそうにも見える。
「ああぁあっ! はやと、のっ……んっ、イイッ! あっ……!」
隼人は右手を伸ばし、動きに合わせて揺れている竜馬のペニスを掴んだ。
「んんあッ」
しごいてやると、いっそう腰の動きが激しくなる。
「これっ、すげっ、あっ! あはぁッ、ン!」
「……」
見る間にペニスが膨らむ。隼人はじっとりとした目つきで竜馬を見上げた。
「は、はやとぉ……っ」
とろりとした目が見返してくる。
「おめ……っ、慣れて、ン、ンあッ、出そうっ、く……ッ」
竜馬の目蓋が閉じ、張りつめたペニスが震え——その間際。
隼人が陰茎の根元を強く握った。
「く、ああっ⁉︎」
ガクン、と竜馬の身体が揺れる。
「ひあぁっ、な、なん……うああ……っ」
爆発寸前に急ブレーキをかけられ、泣きそうな表情で抗議する。腰を動かしてペニスをこすりつけようとするが隼人の指が許さない。
「出させ……ろ……っ」
「中のほうが好きなんだろ」
「うあっ、それ……と、こ……れ、あっああひ……っ」
隼人が軽く突き上げた。
「——ッ⁉︎」
「もう少し一緒に愉しもうぜ」
左手で竜馬の腰を押さえる。
「ふあッ⁉︎」
ペニスが深く挿入される。身体を貫く衝撃に、竜馬は抵抗できない。歯を食いしばったせいで首に筋が浮かんだ。
「んッ、ぎっ……」
「……ヒッ」
隼人の喉奥から、悦楽ゆえの奇声が漏れる。
「……ック、ヒヒッ」
酷薄そうな笑みを口元に浮かべ、再び下から突く。同時に両の手でぐっと腰を押さえつけた。
「あ゛ッ⁉︎ ひッ!」
竜馬が仰け反る。
「あッ! やめッ! ああッ⁉︎」
ぐちゅぐちゅと突き上げ続けると竜馬の下腹が痙攣を始めた。ペニスの先が赤く充血している。
「あッ……」
顎が上がり、
「あッ、あはぁッ!」
高く鳴くと、そのペニスから白濁が吐き出される。一部は隼人の胸元まで跳び、残りはぼたぼたと落ちていった。
「あ゛っ……! あっ! ん゛あ゛ッ!」
ぎゅうっと目を瞑り、叫ぶ。指先は空を掴む形で強張っていた。
「んぎっ……! ひ、ひ……ッ!」
スプリングの反動と隼人の動きが合わさり、ペニスは竜馬の奥までずっぷりと届いていた。隼人はそのまま腰を揺らしてペニスの先端で奥の肉をつぶす。
「——ッ⁉︎」
竜馬の尻が浮きかけるが、許さない。みっちりと中を埋め尽くす。弾力のある、だが柔らかい感触と熱さが亀頭から伝わってきて、隼人の腰を溶かすほどだった。
「竜馬っ、お前の、中……っ、イイぞっ」
「ひあ、ああぁあッ——イク、イクッ! ナカッ、あ、ああッ——イグッ!」
だらしなく涎を垂らし、竜馬が絶頂を迎える。筋肉質の身体が隼人の股ぐらの上でびくびくと跳ねた。
「ぐ、う……あ……」
意識を失いかけ、竜馬が倒れ込んでくる。
「……自分だけイキやがって」
隼人は身体を起こして抱きとめると、朦朧としている竜馬にキスをした。
「…………ン、ン」
「これで済むわけがないだろ。俺がまだだ」
押し倒す。
「もう少し、愉しませろ」
「ん、え……? あ、あっ、ひあッ」
肉をえぐられ、無理やり正気に戻された竜馬はすぐさまよがり出す。
「ああぁッ!」
「くっ……ふ、竜馬……っ!」
「すげ……ッ! あっ! あっ!」
突くほどに隼人を咥え込んで悦んだ。
「ンんんッ⁉︎」
行き止まりをゴツゴツと叩くと竜馬の目が大きく見開かれる。
「バカ……ッ、や、そこっ! んひっ!」
必死に隼人にしがみつく。
「ああぁぁあッ! だめ、やめッ!」
「……こんなに……っ、よさそうにして、いてか……っ」
容赦なく腰を突き入れる。また鈴口に熱さと肉のうねりが絡みついてきた。
「ひッ、ひッ! やべっ! はやとッ——はやとッ! あ゛、あ゛ッ‼︎」
耳朶には艶声。
「くっ……」
ペニス全体が締め上げられる。竜馬の奥が隼人の先に食いついてくる。熱い塊がせり上がり、今にも噴き出しそうだった。
「出、る……っ」
「あ゛、あ゛ッ! お、奥っ、奥、に……ッ!」
竜馬が懇願する。
「なら……出して、やる……!」
「あ゛ッ! あ゛ッ!」
ぎち、と隼人の背中に爪が食い込む。
「りょう、まぁ……っ!」
もう限界だった。
勢いよく精液が注がれ、竜馬の中を蹂躙する。
「ああッ、あ゛ッ、す、げえ! ンッ‼︎」
びゅく、と精液が迸るたびに、竜馬は喉を開いて喘ぐ。肉壺の奥も苦しそうに震えながら、懸命に白濁を飲み込む。
「ゔ……あッ、あはっ……」
収まったと思っても、まだ竜馬の身体は跳ね続けた。
「やっべえ……。おめえとすンの、クセになりそう……」
竜馬が目を細めて艶やかに笑う。
「キス……してくれよ」
返事を待たず、竜馬が吸いついてきた。隼人は形のいい頭を引き寄せて応える。
「ン、ン……んむ…………ん」
くちゅ、と濡れた音がふたりの耳に届く。
「は、あ……おめえ……キス、うめえな」
さらにねだる。隼人は薄く笑い、また口づけた。
「ん、あ……ン」
竜馬は隼人の首に抱きつく。
「ン、ン……すげ……え……は、あ……っ」
「……そんなにいいか?」
「ん、あ……ああ、気持ちいい……ん、ふ」
「そりゃ、どうも」
「……なあ」
甘ったるい声。
「また今度……ヤろうぜ」
秘密が知れたときにはあんなにも憎たらしい笑顔だったのに、今は素直な表情に見えた。次を求める瞳が隼人のプライドをくすぐる。
「気が向いたらな」
受け入れるのは簡単だったが、あえて竜馬と同じ言葉を使う。約束はしない。
「……ちぇっ」
竜馬から不満が零れた。隼人は小さく笑うと、不機嫌そうな唇をからかうようにもう一度キスをした。
嗅ぎ慣れない匂い。
「他の男と寝て、そのまま来たのか」
舌打ちに、竜馬が不思議そうにまばたきをした。
「香水、もしくは整髪料の匂い」
微かに鼻の奥に届く。
「ああ」竜馬は合点がいったとばかりに頷き、
「移っちまったンだろ」
しれっと答えた。
「それより、シ足りねえンだよ」
やましさの一片も見せずに笑む。
「軽くだけどシャワーも浴びたし、ちゃんと歯も磨いてきてやった」
「だから?」
「……なぁ」
しなだれかかってくる。確かにシャワー後だとわかる。だが先程よりも強く他の男の存在も感じた。服についた香りなのかもしれなかった。
「取り込み中だ」
べたべたと触ってくる竜馬をよそに、隼人はノートパソコンのモニタを見つめる。
「つれねえヤツ」
竜馬は口を尖らせ文句をひとつ零す。しかしすぐに気を取り直して隼人の首に抱きつき、左耳をかぷりと食んだ。
「ン……なあ、はやと」
ちゅ、ちゅっ、と音を立てて耳にキスをする。
「……他の男がさっきまで舐めていたところを、俺に舐めろと?」
心底嫌そうに隼人の端正な顔が歪む。竜馬は満足げに目を細めた。
「ヤキモチか?」
「——馬鹿な」
「あンだよ、最初は妬いてくれたじゃねえかよ」
今度は頬に軽くキスをする。
「チャンスじゃねえか」
「チャンス?」
「そ。『俺のほうが上だ』って見せつけるチャンス」
鼻先を肌にすりつける。
「シてくれよ……なあ、はやと」
ささやくと隼人の股間に左手を伸ばした。
「——!」
服の上から軽くさするだけで硬くなり始める。
「へへ……おめえのチンポはしたいってよ」
首筋に口づけた。ようやく隼人は竜馬のほうを向き——唇を重ねる。
「ふ……ン、ンん……っ」
舌を吸うとすぐさま一段高い、色の濃い喘ぎがあがった。
「ん、ん——ふ、んはぁ……っ」
もっと快感を受け取ろうと、竜馬の身体が密着してくる。
「ん……お前、いつもそんなに物足りないのか」
「いつも、じゃねえし……ンん……これ、は……おめえのせいだ……」
「何だと?」
「おめえが、あんなすげえスケベするから……ンっ」
竜馬から深いキスが贈られる。
「だか、ら……あ、ン……おめえ、と……またシたくて……は、あ……たまンねえ」
隼人の眉がぴくりと上がる。
「他の男とシてて、も……ンん……おめえのが……ん」
「ふん」
舌で咥内を撫でてやる。
「んふっ」
崩れる、という表現が似つかわしかった。
拳を交えたあのときと同じ人間とは思えない。
——いや。
あのときも愉しそうに、貪欲に、闘いを欲していた。
ただ純粋に。
唇を離す。
粘膜から伝わる刺激に揺さぶられ、竜馬は微かに震えていた。額や頬に細い髪の毛が張りついている。人差し指でそっと、肌についた髪を剥がしてやる。
「ン……?」
ゆっくりと頬を撫でる。柔くて、指先に心地いい。
「……ン、何だ、よ」
くすぐったそうに竜馬が目を閉じた。
「……何か、妙だな」
小さく笑う。
「さっきまで、他の男が舐めたところをどうのって言ってたのに」
「——」
「ずいぶんと優しいな」
長い睫毛に縁取られた目がまっすぐに見つめてきた。
確かにそうだった。
知らない男が口づけた跡、触れた場所、印をつけた奥に自分が触れるなど、嫌で仕方がなかった。
それは今もだ。
けれども、竜馬に触れたいという気持ちのほうが大きくなっていた。
「……」
見つめ返す。
「……隼人?」
散々に他の男に抱かれているくせに、無垢な瞳だった。
隼人の内側に名状しがたい欲求が渦巻く。ねじ伏せてレイプじみた行為をしたいわけではないし、だからといって恋人のように優しく抱いてやる義理もない。身体を手に入れたいというなら、どちらかといえば竜馬のほうがすでに夢中になりかけている。
この何も知らないふうな表情を狂い乱れさせるのは簡単だ。前と同じように抱けばいい。
それよりも、できるならこの瞳を——。
「隼人?」
「——あ、ああ、いや」
今、いったい何を。
隼人の心が惑う。
「ま、ヤる気になってくれたンなら、何でもいいや」
竜馬は深く気にするでもなく、ぺろりと唇を舐めて隼人の脚の間にひざまずいた。慣れた手つきでベルトを外し、ズボンの前をくつろげる。
「口でシてやるよ」
陰茎を露わにする。
「へへ、もういいカンジじゃねえか」
ちゅ、と亀頭にキスをする。隼人から「ん」と発せられるのを確認して口に含んだ。
「うあっ……」
熱く柔い粘膜に包まれ、思わず腰が浮く。竜馬が見上げてきた。
「……っ」
ぞくりとする。肉体の快楽とは別の、心の奥底からどろりと漏れ出てくるような昏い悦び。すぐに完全に勃起する。
「…………竜馬」
我知らず、名を呼ぶ。愛撫に夢中で聞こえていないようだった。
「んっ……ン」
倖せそうに隼人のモノを頬張る。
「う、く……っ」
先端を頬の内側の肉でずりずりとこすられ、舌先でつつかれ、緩急をつけて吸われる。陰茎の周りを這いずる指先によって、高みに押し上げられていく。たちまち限界が訪れそうだった。
「はやと」
「う……」
「ん、澄ましてても……結局こうじゃねえか」
「あっ」
指の腹でぐりぐりと敏感な部分をなぶられた。間髪入れず、再び舌が絡みついてくる。
「っはあ、ン、はやと……出せよ、出そうだろ?」
上目遣いで煽り、ぐぷりとペニスを咥え込んだ。
「う——あっ」
「ン、ぐ……っ」
ひと雫も逃すまいと奥まで誘い入れる。肉茎に伝わる熱と喉奥の締まりに責められ、やがて隼人は吐精した。
「ふ、あ——あっ」
腰が震える。
「んん……ン……」
竜馬の喉が動く。当たり前のように最後まで吸いつき、欲を飲み干した。
「ン……おめえ、あんま自分でシねえのか」
口の端を中指で拭い、舐め取る。
「……何?」
「この前も思ったけどよ、溜まってンな。すっげえオスくせえ」
べろりと赤い舌を出して見せる。白い残滓がその上でぬらりと光っていた。
「——」
「ンっふふ、おっかねえ目」
竜馬の瞳が笑う。
「あンだよ、褒めてやってンだぜ」
「——っ」
また、ペニスに竜馬の舌が這う。
「おめえの、んっ、ほんとに俺好みだ」
ちゅう、と先端をすすった。
「——あっ」
舌先で尿道口をにちにちとなぶる。
「う、あっ……」
「ひひ、かっわいいなぁ。……なあ、はやと」
さらに舌で遊ぶが、そのいたずらは隼人を焚きつける行為でしかなかった。
「へへ……なあ、ここでシようか?」
まだ勃っているペニスをしごきながら誘う。
「……なんて、な」
ちらりとデスクに目をやる。ノートパソコンや何かのデータが印字されたロール紙などが置かれている。さっき目にした紙コップには、まだ黒い液体が半分ほど入っていた。物は多くないが、さすがにここでするには竜馬といえども憚られるようだった。
「ここじゃ何か壊しそうだしな。ベッド行こ——」
立ち上がった瞬間、隼人も追随し、抱きつく。
「え? あ?」
タンクトップの下に左手が差し込まれた。
「あっ、おい……んっ! んっ」
乳首をつままれ、きゅう、とつねられる。
「んっ!」
顎が上がった瞬間、キスで唇を塞がれる。そのままデスクに押しつけられた。
「——!」
がた、とデスクが揺れる。竜馬の視線は隼人よりも机上に注がれる。紙コップの中で黒い液体が縁を越えそうになっていた。
「ばっ……あっ!」
今度は痛いくらいにつねられる。隼人の右手はズボンの上から膨らみをさすっていた。
「んっ! やめっ、ンあっ、や、め……!」
「俺が取り込み中だと言っても聞かなかったクセにか」
はあっ、と熱を帯びた息が竜馬の耳朶にかかる。
「っ、うあ、んっ」
隼人の長い指がジッパーを下ろし中に滑り込む。いつからだったのか、竜馬のそこはくっきりと存在を主張していた。
「あっ、ああ……っ」
「前を広げてくれないと、これ以上触れないぞ」
指を三本、差し込んでショーツの上からさする。ぴくぴくと小さく竜馬が感じて、吐息を零した。
「んは……ぁ」
「もっと触って欲しかったら、前を開けろ」
「んっ、ン……っ」
「りょうま」
「あンっ」
耳元で低く名前を呼ぶと嬌声が出た。隼人の目が笑う。
「りょうま……りょう、ま」
「ふあっ、あぁ……っ」
「お前……」
一瞬、言い淀む。だが生じてしまった思いは消せない。
「……可愛いな、りょうま」
耳にキスをする。竜馬は目を閉じてびくりと反応した。
「けどな」
縁を柔く唇で食んでから穴を舐める。
「ひあッ!」
「人のことは散々なぶっておいて、自分はされないと思うなよ」
くちゅくちゅと音を立てて耳をいたぶる。感じているのかはたまた羞恥によるものか、竜馬の顔がこれ以上ないほどに真っ赤になった。
「ンんッ! あっ!」
「俺のチンポをしゃぶるだけで、こんなにできあがるのかよ。ずいぶんと安いな、おい」
わざと大きな音を立てて耳をねぶり回す。ペニスを撫でている指を軽く立てて、く、と爪でかいた。
「はあっ! あっ!」
苦しそうに喘ぐ。早く決定的な快感を掴みたくて、竜馬が懇願する。
「は、はやとぉ……あンっ、あっ、も、もう、俺……」
腰を揺らし、ペニスを隼人の指にこすりつける。
「い、挿れて、早く……っ、はやとのっ、んあっ」
だらしなく開いた唇は唾液に濡れている。
「ふ——あ、あ……っ」
放っておけばそのまま達するのではないかと思うほど、竜馬の身体は震えていた。
† † †
デスクに座らせ、左腕を押し上げる。
「な、え……?」
裸に剥かれ、その気になっていた竜馬が戸惑う。
「はや、と?」
答えはない。隼人は無言で脇のくぼみに鼻先を埋めた。
「うひゃっ!」
身体が大きく跳ねるが、隼人が逃すはずもない。しっかり竜馬を抱える。
「うっ、あっ、あっ、くすぐ……っんん!」
吸いつき、舌でちろちろとなぶる。そのまま胸筋に沿って舌を這わせ、乳輪をなぞり、再び脇へ舐め上げる。
「うあ、あぁっ」
「ここは好きか?」
再び脇を吸われ、竜馬は顔をしかめた。
「わ、わかン……ねっ……うあっ」
「好きじゃないのか」
「ひゃっ、あっ……こんなっ、しつこく、ンっ、されねえっ——ンあっ」
「散々ヤリまくってるクセに、まだそんな場所があるのか」
からかい、強く吸う。
「あっ!」
二の腕の裏側も舌と唇で丁寧に愛撫する。
懇願されたにもかかわらず、隼人はいつまで経っても竜馬の中を満たしてやろうとはしなかった。代わりに、手首の内側の柔い皮膚も、手足の指の股も、膝の裏も顎の下も、くまなく探っては自分の痕を刻み込んだ。
もう、他の男の香りは感じられなかった。鼻腔いっぱいに竜馬の汗と雄の匂いが広がり、ずっと隼人の脳髄をちりちりと焦げつかせていた。
「ああっ、あっ……ひっ」
竜馬の目には涙が浮かんでいる。
「も、もう……っ、か、勘弁……ンひッ!」
背中に指を滑らすだけでも身悶える。ぴんと勃った乳首をこねると頭を反らして切なげに鳴いた。
「ひっ……あ、ああぁっ……! ンあっ、あっ」
勃起したペニスから我慢汁が流れ続ける。身体をくねらすと自身の腹につき、肌との間に糸を引いた。隼人は内腿をさすり、びくつく腹をしつこく撫でる。
「はやと……っ、いい、かげ……ああぁっ」
「これだろ」
急にペニスを握られ、竜馬の顔が歪む。
「ちがっ……やだっ」
「嫌、だ?」
すり、と陰茎をこする。
「うあっ……」
隼人がくふ、と笑い、指を動かす。
「うあぁっ、イッちまう! んっ、んっ!」
「気持ちいいだろ?」
「あっ、やめ、あっああ、やだ! こっち、じゃ……ねえっ」
「何だって?」
「チンポ……っ、ンんんっ! 挿れ、て……ひあぁんっ‼︎」
竜馬が射精しないように指の力を変えながら陰茎をしごく。
「あんっ、あっあっあっ、ふ、ンあッ!」
欲しくてたまらない。すぐそこにあるのに、手が届かない。隼人に与えられるもどかしさに、涙と涎が竜馬の肌を伝い落ちていった。
普段は布に覆われている素肌がさらされている。それだけで興奮を煽るのに、目の前でくねる様は眩暈がするほどにいやらしかった。
淫らな穴が蛍光灯に照らされる。竜馬は散々にじらされ、半泣き状態だった。
「う……っ、あ、あっ……」
「ここも息切れしているみたいだぞ」
隼人はひくつく穴を撫でた。
「うあ……っ」
指を一本、竜馬の望む場所に挿れる。
「あ、あ、あ」
吸いついてくる。そのまま二本目を追加する。すんなりと挿入った。ずぷ、と指を半分まで沈める。
「んああっ!」
竜馬の腰が浮く。
「あっ……あっあっ、も……と、もっと……」
「もっと?」
ねじって軽く突く。
「あっ!」
指で中をなぞるときゅうきゅうと締めつけてきた。
「あ、あっ、んあっ」
「指でいいのか?」
中の肉を押しながら、意地悪く訊く。
「あっあっ、い、や、んあっ……挿れて、チンポ……っ、挿れ……てぇ……ッ」
「お前、仕方がないな」
隼人は薄く笑いながら指を引き抜いて、代わりにペニスを突き立てた。
「ほら、挿れてやるぞ」
「ッ! あっあっ、挿入って……あ、ああッ!」
柔い肉穴はぐぷぐぷと隼人を飲み込んでいく。
「うっ、あ、ああッ‼︎」
快感に仰け反り、叫ぶ。
「——ッ‼︎」
突如、竜馬がびくんっ、と大きく跳ねて、それから小刻みに震え出した。
「ふ、あっ——あ、あッ」
「イッたのか?」
隼人はペニスを引き戻し、ゆっくりとまた押し込む。
「や、あっ⁉︎」
肉壁がうねる。
「うっ、うあっ……ンッ!」
「お前、簡単にイキ過ぎじゃないのか」
「ひあぁ、あっ、だ……て、あンんっ」
「ほら」
「ああぁっ‼︎ んあッ!」
「お前の中、ずっとひくついてるな」
「はあッ! あ゛ッあ゛ッ! 気持ちいいッ!」
「そうか、よかった、な!」
ぐぶ、と奥まで突き刺す。
「————ッ⁉︎」
竜馬の全身が硬直する。
「ぐ……っ、んっ」
強烈に締めつけられ、さすがに隼人も動きを止めた。射精しないよう、ぐっとこらえる。そのわずかな振動も竜馬の中に伝わる。
「っ……や、……ッ! ッ!」
竜馬の唇はただわななくだけで、息さえも止まっているかのように思われた。隼人にまとわりつく肉が激しく収縮する。
「ふ、く……りょう、ま」
耐えきれずペニスを抜く。その刺激でまた竜馬のひくつきが強くなった。
「……竜馬」
下腹を撫でると、それだけで竜馬は達したようだった。
「あ゛……ッ、な、なんだ、これぇ……っ、ひっ、ひっ……お、おれ、ずっと……イッて……は、あ゛ッ」
「お前、器用だな」
再び、うねる腹を撫でて軽く押す。胸筋を下から手で包み、揉みしだく。乳首を指で弾いてはつまむ。
どの行為でも竜馬は肢体を震わせた。
「お前、今からこれじゃ最後はイキ死ぬんじゃないのか」
笑うともう一度、ペニスをめり込ませた。
「——っあ‼︎」
いとも簡単に奥まで行き着く。
「ひっ……ひいっ……」
「お前、俺のカリ首が好きだって言ってたな」
「うあ……っ、あ、え……?」
「カリ首が傘状になっているのはな」
ずず、と傘の縁で道の下側をこそぐように腰を引いていく。
「ああ……ぁああっ」
また、ゆっくりと押し入る。
「あんっ……あっ、ああっあっあっ!」
「他の雄が先に出した精液をかき出すって役目があるらしいぞ」
次は上側に引っかけるようにしながら。そうしてペニスを抜くと、確かに多少の粘液は出てきた。だが「かき出す」というほどのものでもなかった。
「そういやお前、シャワー浴びてきたって言ったな」
ならばこれはローションか精液の残滓か。
「俺のことを考えて綺麗にしてきてくれたんだろうが、今ばかりは少々、残念だな」
本心だった。俗説を確かめたい気持ちもあったし、できるなら他の男の精液を残らずかき出すという行為をしたうえで、一番奥に自分の印をつけてやりたかった。
「まあ、かき出せるかどうかは自分ので試せばいいか」
「……は、はや、と……?」
「——いいや、何でもない。それより」
ペニスの先を秘所にあてがう。
「あ……っ」
「俺も気持ちよくさせてくれよ」
いいように開ききった秘所はすぐに拡がる。けれども締めつける力は十分に残っており、隼人を逃さないようにぎゅっと咥え込んだ。
「うあっ、あっ! あん!」
竜馬の手にあたり、デスク上のファイルやペンが落ちる。しかし隼人は見向きもせず、ひたすら腰を突き入れた。
「んんっ、っあ゛!」
竜馬が身をよじる。左に顔を向けると、ぐらぐらと揺れているノートパソコンが目に入った。
「あ……!」
落ちそうだった。竜馬は咄嗟に利き腕を伸ばす。だが間に合わず、ノートパソコンは視界から消えて鈍い音を響かせた。一緒に紙コップも転がり落ち、床に黒い染みを広げる。汗と雄のむせるような匂いの中に少しだけコーヒーの香りが立ち上った。
「あっ、やっ! おい……っ、おめえの、だろ……ぉっ、んあっ!」
隼人は答える代わりに竜馬の右膝の裏に腕を入れる。ぐ、と持ち上げ、腰を入れる。
「お゛ッ⁉︎」
上体は左へねじられている。その体勢で右脚を抱え上げられたせいで尻が浮き、さらに奥までペニスが侵入してきた。
「お゛っ、あ゛、あ゛ッ!」
「データの、バックアップはっ、ん、取ってある……っ」
「バ、ク……ん゛っ、あ、あ゛あ゛ッ!」
「要は、その、オモチャがっ……お釈迦になって、も……困らないってこと、だ!」
「————ッ‼︎」
竜馬の目が見開かれる。
「ッ、……ッ‼︎」
今までと違う角度から太いペニスでえぐられ、歯を食いしばる。
「ゔぅッ」呻いて、
「うっ——あっ! ああぁあッ! あ゛ッ‼︎」
抑えきれず叫んだ。強烈な刺激と圧迫感に蹂躙され、堕ちる。
「ひあああッあっあっ、やめッ——あ゛ッあ゛ッ、イグッ! ゔッ、ゔあぁッ‼︎」
竜馬が跳ねる。また机上の何かが落ちる音がした。
「っは、あ……はあっ……竜、馬っ」
隼人は痙攣している肉の中にゆっくりと抽挿し続ける。こちらはまだ果ててはいなかった。
「あ゛ッ……あ゛ッ、ひっ、い゛……っ!」
いつの間にか竜馬は射精していた。下腹が蠢くたびに白いモノがこぷりと溢れ、隼人のデスクを汚していく。
「あンッ! あッ……!」
「……そろそろ、ん、ベッドに行くか」
「ぐ、ふ……ンあ゛……ッ」
竜馬はいい、とも嫌だ、とも言えなくなっている。ただ酸素を求めて口をぱくぱくとさせ、くぐもった呻きを発するだけだった。
「シ足りないんだろう?」
いやらしく目元と唇を歪め、隼人が訊く。答えがないのをわかっていて、竜馬の口に舌をねじ込む。
「……っ!」
まだ余韻が収まらない中を揺らされ、敏感になっている口腔内をなぶられ、さすがの竜馬もくたりと身を投げ出すしかなかった。
「しっかりしがみつけよ」
「…………?」
繋がったまま抱き起こす。脱力している腕を首に回させると、竜馬の尻を抱えて持ち上げた。
「——ッ‼︎」
自重でペニスが奥に入り込む。
「……ッ、ゔッ!」
「暴れると落ちるぞ」
意地悪く隼人が言い、ゆっくりと歩き出す。
「あ゛ッ! ひッ……っ……ぐ、うぅ……ふ……ッ!」
振動がじかに腹の中に響く。
「ゔ……ふっ…………あ゛、あ゛……う、ぐ!」
容赦のない肉の責めに呆気なく達してしまう。
「や、あ゛……やめ……ひ、ひぐぅ……っうっ、あっ……」
だが一向に解放されず、また達する。尻を押さえつけられているせいで逃げられない。腰を揺すっても、逆にペニスを腸内にこすりつけるだけだった。
「……あ゛あぁ……っ……は、あ゛っ…………っゔあっ……あっ……お、く……はやと、の……っ」
「うん?」
「う、はあ……っ……あぁ……っ、おめえ、の……カタチ……ひううっ……俺、のナカ……っ、戻ら……な、くな……」
目を瞑ると涙が零れ落ちた。はあぁっと、息を吐き出す。それでまた肉がゆるみ、亀頭に奥をつぶされる。
「あ゛、ンッ!」
「こんなふうに抱きつかれるのもいいもんだな」
「ひあッ⁉︎」
尻を少し持ち上げ、ぐ、と沈める。竜馬の顔がしかめられる。無駄と呼ぶ箇所がただのひとつもない肉体。それが自分の男根によって淫らによがり狂っているかと思うと、このうえない満足感を得られた。
なぶりながらベッドに連れ込む。
「う、あっ……は、は……やと……ぉ」
濡れた瞳は愉悦に染まっている。普段なら決して見られない、欲にまみれた顔。
胸に触れる。隼人がつけたものではない赤い跡をなぞる。
その上に唇をあてた。
「ん……っ」
竜馬の声を聞きながら、肌を吸う。
「んあぁっ……」
耳を溶かすような甘い声。
「んっ……あっ……あぁ」
しおらしく身をよじる。
「あ……あっ……はやとの……キス、マーク……んぅ」
「……竜馬」
頬を撫で、優しく口づける。唇を離すと、竜馬が恥ずかしそうに小さく微笑んだ。
ちらりと見えるそうした姿にはどこか初心さが滲んでいる。己が竜馬に選ばれた特別な男なのだと、妙な気を持たせる。
こんなものを見せられたら、離れられるわけがなかった。
「竜馬」
咥内を舌で丹念に愛撫し、高めてやる。
「ふっ……ン、ん、あ……」
「好きな体位でしてやる」
ささやくと目を大きくして、それから嬉しそうに細めた。
「……さ、さっき、の……ん、右脚を上げるヤツ……」
「あれがよかったのか」
熱の浮いた瞳がうっとりと見上げてくる。
「あれ……は、はやとのが……ずっと奥、に届いて、すげえ……」
「お前」
隼人が笑う。
「根っからのスケベだな」
言われて、竜馬が「ん」と頷いた。隼人はその右腿を押し上げる。
「あ……ン」
「クセになったのか」
亀頭を押し込み、抜く。
「あっ……」
もう一度、挿れては抜く。
「ん、あっ……なん、だよぉ……」
くい、と腰を突き出してせがむ。
「い、挿れろ、よ……」
「ああ」
ずぷ、と肉棒を沈める。
「ひあっ……」
倖せそうに竜馬の全身が震えた。
「あぁ……あっ、あっ、また……挿入って……あっああっ!」
「お前、の……中……は、あ……っ」
まぐわうたびに馴染む肉の襞に隼人が喘ぐ。まるで、自分に合わせて竜馬の中があるかのような——。
幾度か浅いところをこすり、煽る。竜馬の腰が器用に動いて、ペニスをもっと咥え込もうとする。
「あれだけイッた割には、まだ元気だな」
一気に奥まで分け入る。
「んぎっ……!」
がくんと竜馬の全身が大きく揺れた。
「あ……ッ、あッ!」
「はあっ、んっ、竜、馬」
「ふ、ふぅんっ! ンあッ! あ゛ッ!」
奥まで突き刺したまま、腰をぐいぐいと入れる。尻を持ち上げ、もっとより深いところを狙う。
「ン゛あ゛ッ⁉︎ な、にす……ひああぁッ⁉︎」
竜馬がずり上がって逃げようとする。だが隼人の手が押さえつける。
「あっ、はな、せ……っ」
もがいても無駄だった。
「ぬ、抜け、……あ゛ッ!」
苦しそうに竜馬の眉根が寄る。
「は、はや……く、抜け……ひっ、あっ……ぬ、抜いて……あっ、あっ」
ペニスを締めつけられても隼人は引かない。それどころか、さらに奥をゆっくり押し始めた。きゅうきゅうと襞がざわめく。
「ひあっ、ああっ……も、そこまで、しか……あっ……挿入らね……から……っひっ」
「……」
しつこく行き止まりをつつく。
「んんんっ! やめ……っ」
首を横に振る。
「ん゛っ! そこぉ、あ゛っ! ヘ、ヘンだ、から——やめっ……!」
「……変、とは?」
「ひあぁっ、やっ、よ、よくねえっ……あ、ああンッ! あ゛っ!」
「よくないのに、そんなによがるのか?」
「ち、ちがっ……勝手、に、ああっあっあっ、ああぁッ、だめ、だ! う゛、あっあっあ、怖え、か、らぁ……っ!」
怖い、と聞こえて隼人はようやく動きを止めた。
「ひ……っ、あ、あっ……あ゛ぁっ!」
ぶるぶると震えている。瞑った目の端からぽろぽろと涙が落ちてきた。
「な、りょう、ま……?」
隼人に動揺が生じる。
「痛かったのか」
慌ててペニスを抜き、抱きしめる。竜馬の身体は微細に痙攣していた。
「うっ……あっ、あっ……」
涙がどんどん溢れてくる。隼人は頬にキスをし、頭を撫で、なだめる。
「やり過ぎたなら、悪かった」
「んっ、あ、あぁ……っ」
まだ震えながら、竜馬がしがみついてきた。
「————」
隼人の胸に、再び奇妙な感覚が芽生える。
「ふ……っ、う、くっ……」
「りょ……ま……」
思わずもっと力を込めて抱きしめた。
少しの間、そうして抱き合っていた。やがて、
「は、はや、と」
竜馬がまだ震えが残る、甘い鼻声で呼んだ。
「……シて」
目を開けると、ぽろりとまた涙の粒が落ちた。
「……竜馬」
「お、俺……はやと、と……シたい」
鼻先を首元にこすりつけて、竜馬がねだる。
「……おめえの……好きにして、いい、から」
ぎゅ、と身体に回された指先に力が込められた。
「——竜馬」
隼人は衝動に抗えず、口づける。
初めは嫉妬だった。間違いない。
竜馬の身体を自由にできる男も、触らせる竜馬も許せなかった。
自分が必死に追い求めているゲッター線を、竜馬はどれほど貴重なものか理解していない。ゲッターロボをひとつの道具のように、特大の玩具のように扱う。しかも自在に。それが疎ましくて妬ましくて——羨ましかった。ともすれば自分が無力なのだと思い知らされ、置いていかれるような焦燥感さえ与えられていた。
自分に人間らしいコンプレックスを植えつける竜馬が嫌いだった。生意気な、その鼻っ柱をへし折ってやりたいとずっと思っていた。
それなのに。
竜馬をねじ伏せる気で部屋を訪れた夜。
思わず抱きしめてしまった。
そして、気づいてしまった。
誰をも見ていないその視線を、自分に向けさせ縫いとめておきたい、と願っていることに。
「ンッ……は、あっ……は、やと……」
柔らかいキスは、次第に深く激しく。
「んンッ……はや……ン……」
恋人同士のような熱さと、優しさ。
「竜馬……好きなだけ、シてやるよ……」
ささやき、隼人はそっと竜馬の中に押し入った。
† † †
裸で寝転がったまま、竜馬が切り出した。
「おめえ、俺のモンになれよ」
隼人の眉が訝しげに動いた。
「冗談」
「冗談じゃねえよ。おめえとすンの、最高だ」
まっすぐな瞳に嘘はなさそうだった。
「……お前が俺のモノになれ」
逆に持ちかけた。
竜馬の目が大きくなる。まったくの想定外だったようで、言葉も、動きも止まる。
「そのほうが、互いにいいだろ」
隼人は身体を起こし、竜馬の首に吸いついた。
「あっ……ン、ん」
ぢゅう、と音を立てたあと、唇が離れる。
「ンっ」
「ついた」
隼人は跡を指で撫でる。竜馬がはっとする。
「あっ、バカ、てめえ」
作業着の襟を立てても隠せない位置にキスマークがついていた。
「キスマークをつけるのはな」
頬に手をあて、瞳を覗き込む。
「『俺のモノだ』って印だ」
竜馬の胸や腹についたキスマークをちらりと見やる。
「ふたりだけの秘密もいいもんだが、『俺のモノだ』って他の男に見せつけてやらないとな」
唇にキスをする。
「それなら、見えるところでないと意味がないだろう?」
もう一度口づけて、舌を吸う。
「……ン」
優しく咥内を舐められ、竜馬の表情が酔ったようにとろんとする。
「おめえ……ん……ほんとに、キス……うめえよな」
はあ、とすぐに息が熱くなる。
「だから、俺のモノになれよ」
再び言うと、鳶色の目が惑うように揺れた。
「他の男にも言われてるんだろう?」
「…………ん」
好きだ、つきあってくれ、とはよく言われている。起き上がりながら答えた。
「なぜ、そうしない?」
「そういうの……面倒なンだよ」
何か過去にトラブルがあったのか、竜馬は目を逸らす。
「……誰かや何かに縛られンのは好きじゃねえ」
「さっき『俺のモンになれよ』って言っておいてか」
からかうと、途端に不機嫌そうな顔になる。
「さっきのは取り消す!」
いじけたような響き。聞くなり隼人の頬がゆるむ——いつになく、穏やかに。
「……じゃあ、やっぱり俺のモノになるしかないな」
柔らかい声音に、竜馬が思わず視線を向けた。
「なる、と言え」
「だから、ひとりに決めンのは——」
「決めなくていい」
「……え」
「寝たいなら、他の男といくら寝てもいい。ただ」
今度は唇が触れ合うだけのキス。
「俺がお前を抱きたいと言ったら、必ず抱かれろ。他の男とヤッてる最中でもだ」
「……」
「それから、お前がねだりに来たらいつでも抱いてやる」
とびきり奔放で、わがままで、いやらしくて。
たぶん、竜馬に触れた男はみんな、囚われる。あの手この手で繋ぎとめ、振り向かせようとする。
だから身体中にキスマークをつけるのだ。必死に「俺のモノだ」と伝えたくて。
だが竜馬は意に介さない。自分のしたいようにする。それでまた、惹きつけられる。
「……何だよ、それ」
竜馬が笑う——淫らさのかけらもない、無邪気な顔で。
「けど、ンん……そうだな」
腕を組む。ふたつの大好物のうちどちらを選ぶか、そんな単純だが永遠の命題のような難問に挑む表情。
「ん、んんー」
身体がゆらゆらと揺れて、口がへの字に曲がる。
「そんなに考えることか」
隼人が吹き出した。
「俺にとっちゃあ、一大事なンだよ」
頬が膨らむ。ただでさえあどけない顔つきが、いっそう幼く見える。
「なら、もう少し売り込むか」
「ン?」
「さっき、しつこく奥を狙ってたのはな」
尻に手を伸ばし、さわさわと撫でる。
「ン、あ……」
「あそこから先、まだ挿入るからだ」
竜馬が目を丸くする。
「うっそだぁ!」
「嘘じゃない。される側は、慣れるととんでもなく気持ちいいらしいぞ」
「…………とんでもなく?」
「ああ」
唇をついばむようにキスをして、尻から手を離した。竜馬は隼人をじっと見つめる。
無理やり籠に押し込めようとすると、きっと噛みついてくる。手籠にするのは簡単で、そこにしかない愉しみがあるのも確かだが。
竜馬は知らないだろう。この世のあらゆることの裏には駆け引きが潜んでいるのだと。自由を与えるからこそ縛りが生まれる場合もあるのだと。
いずれ、竜馬は自ら縛られることを望むだろう。ただ自分は待てばいい。
——それとも。
自分が堕ちるのが先か。
——いや、もしかしたら。
もう堕ちているのかもしれなかった。
竜馬がもたらす感情は複雑だ。心の奥底をさらって暴く。
醜くて、昏くて、爛れている。だがそれも心地いいと思える。
そして今では竜馬を愛しいとすら感じる自分がいる——。
見つめ返す。
もっと、と求める様は竜馬と変わらない。尽きることのない、欲。
ただ、純粋に。
「ン……そうだな」
いたずらを思いついた子供のように含み笑いをして、
「なあ」
竜馬の顔が近づく。
「もう一回、すんげえキスしてくれたら、考えてやってもいいぜ」
そのあとで華やかな笑顔を咲かせた。