つきあってません。
竜馬「暇だからスケベなことしようぜ」VS 隼人「お前は何を言っているんだ」です。
恋愛感情があるわけじゃないと言いながらも誘う竜馬に、妙な気持ちになる隼人のお話。キスまで。ギャイギャイする感じではないです。たぶん無意識のうちにうっすら両片思い。隼人は男性と経験済み設定です。約2,000文字。2021/9/24
◆◆◆
意味がわからなくて思わず振り返る。
「ン?」
視線を受けて、竜馬が軽く首を傾げる。
「…………今、何を」
隼人の問いに、もう一度口を開く。
「ヒマだから俺とスケベなことしようぜって言った」
屈託のない笑顔。
部屋に押しかけてくるなり、確かにそう言った。聞こえてはいた。今の科白もちゃんと聞こえている。
ただ、理解できない。
「…………お前」
「ン?」
「俺が好きなのか」
「……あー」
竜馬はくるりと目玉を巡らせ「いいや」と答えた。
「……は?」
「惚れた腫れたじゃねえな。けど、嫌いじゃねえし。……うーん、それならやっぱ好きなンかな」
「は?」
「けど、おめえと手ぇ繋いでどっか行きてえとかねえもンな。……やっぱ、そういう好きとかじゃねえな」
「お前は何を言っているんだ」
「訊かれたから正直に言ってるだけだろ」口を尖らせた。
「……それならそれでいい。世の中にはセックスフレンドという概念もある。……だが」
隼人は質問を変える。
「なぜ俺なんだ」
「弁慶は女にしか興味ねえみてえだし、そうすっと他にいねえだろ」
「……それだけか」
「おう。……あ、あとな」
「何だ」
「おめえ、そういうの、するンならしてもいいし、しねえならしなくていいってカンジがするから」
「——」
「誘ったら、するだろ?」
犬歯が覗いた。
「……そう言うからには、お前、男との経験はあるんだろうな」
嫌ならさっさと終わらせるべきなのに、隼人は言葉を重ねた。この会話を続けることはひとつの結末に向かってまっすぐに進むのと同義だと頭の片隅で思っているのに——。
「ねえよ」
「…………何?」
竜馬の顔をまじまじと見つめる。
「でも、おめえはあるだろ?」
「……ああ」
やっぱりな、とにっかり笑う。晩飯はお前の好物だぞ、と言われた子供と同じように、ただ無邪気でしかなかった。
「おめえは自分が知らねえことがあンのが嫌そうなタイプだからな。いろんなモンのひと通りは知ってそうだと思った」
もちろんそれだけではないが、意外と的を射た言葉で隼人は閉口する。
「ドーテー同士じゃうまくいかなそうだし、おめえとならよさそうだな」
すぐ抱きしめ合える距離まで近づいてくる。
「それに、俺のこと別に嫌いじゃねえだろ」
いたずらを企んでいるような、それでいて少しだけ色が見え隠れする表情。
「……」
目が離れない。
「だからたぶん、俺と同じだ」
竜馬の髪の毛から、シャンプーの香りがする。浴場にある、業務用の安いシャンプーだ。だが、こんなにもいい香りだったろうか。
鼻先をくすぐる香りに気を取られる。知ってか知らでか、竜馬はつと顔を近づける。
「——」
隼人の鼓動が大きくなった。自分でも動揺するくらいに。
「暇つぶしできて、楽しくて気持ちいいンなら、最高じゃねえか」
「……俺にリードしろと?」
「だって、俺、やり方知らねえし」
それは、好きなようにしていいと言っているのではないか。
「……最初から」
「ンあ?」
口の中が乾いていく。
「最初から……気持ちいいわけないだろう。……ケツの穴に男のアレを突っ込むんだぞ」
「でも、おめえならうまくやってくれンだろ?」
「な——」
「あとでよくなるンなら、ちっとぐれえガマンしてやってもいいぜ」
煽られている。
それ以外に言い様がない。
普段ならとっくに苛ついている。ふざけるな、と[[rb:睨 > ね]]めつけて部屋から追い出している。
なのに、今は——。
隼人の視界は酔ったように揺れていた。頭の中が混乱している。
竜馬はいったい何を考えているのか。
「……俺は」
声が掠れる。後戻りするなら、たぶん、今だ。
「……俺は……男だぞ」
張りつく喉を開いて押し出した。
「関係ねえだろ」
「…………は?」
「別に、俺は気にしねえぜ」
「な……」
事もなげに放たれた言葉に、隼人は呆気に取られる。そしてとうとう笑い出した。
「お前は……くくっ、ふ、ははっ」
「あンだよ」
馬鹿にされたと感じたのか、竜馬がむっとする。隼人はその腰に手を回した。力を込めて引き寄せる。とすり、と簡単に竜馬の身体が胸の中に飛び込んできた。
顎に指をかけ、く、と少し上向きにする。
「……俺と寝たあとで、俺に惚れたらどうするんだよ」
隼人が問う。
「そんときゃ、ちゃんと『好きだ』って言ってやるよ」
じっと目を見て竜馬が答えた。
「そうか」
隼人は竜馬の唇にキスをする。竜馬の手が隼人の背中に回される。
「隼人」唇が離れると、今度は竜馬が問う。
「おめえが俺に惚れたらどうすンだよ」
「……そうだな」
もうひとつ、口づけをする。
「そのときは言葉を尽くして、口説いてやるよ——俺のものになれってな」
聞くと、満足げに竜馬の顔がほころんだ。