Happy New Year !

新ゲ隼竜

大晦日の隼竜。つきあってます。
日付が変わったらすぐに「あけましておめでとう」って言いたい竜馬と、そんな竜馬が可愛い隼人のお話。
キスまで。ただのイチャイチャ。約1,500文字。2021/12/31

◆◆◆

 もぞもぞと落ち着かない竜馬に、隼人が不思議そうに声をかけた。
「ああ、もう少しだし、何かちょっとな」
 竜馬は答えてまた壁掛け時計を見た。
「もう少し?」
 つられるように隼人も時計を見る。あと二十分ほどで日付が変わるところだった。
「せっかくだから」
「せっかく?」
 鸚鵡返しになる。
「ほれ、年が明けるだろ」
 言われて、やっと理解する。
「お前、そういうのを気にするタイプだったのか」
 キーボードを叩く手を止め、ベッドに腰掛けている竜馬の隣に座る。
「んー、したくてたまンねえワケじゃねえけど……何かこう」
 くるりと目玉を巡らせてから隼人を見る。
「やっぱ、『せっかくだから』ってしか言いようがねえな」
 へへ、とはにかむ。
「ヘンか?」
「いいや」
 ふ、と笑み、隼人は竜馬に口づける。
「……ん」
 恋人の距離で見つめ合う。
「……一年前は、俺はおめえのことは知らねえし、おめえも、俺のことなんて知らなかったンだよな」
 自分の半身がこの世に存在していることも。
「……ああ」
 だが、と指の背で頬を撫でて隼人が続けた。
「今は知っている。お前の身体中のホクロの位置も、どこをどう触れば悦ぶかも」
 腰に手を回し、またキスをする。
「ん、ん……スケベ」
「自然なことだ」
 長い指がさわさわと竜馬の形のいい尻を撫で始めた。
「そうだな、『せっかく』だしな」
「ン……え?」
「竜馬」
「?」
 ニヤリと笑い竜馬を押し倒した。
「え——おい」
 竜馬が時計に目をやる。あと十五分。
「ヤリ納めとヤリ始め、両方体験できるぞ」
「んな」
 目を見開くと隼人の唇が下りてきた。
「ン、んあ……っ、ふ……んぅ」
 キスが繰り返される。それだけで溶けそうな声があがる。竜馬の目がうっとりと細められた。
「ふ……ん、はやとのキス……気持ちいい」
「……竜馬」
「ンん……っ、は、あっ」
 隼人の首に腕を回し、もっと、とねだる。キスの合間に何度も「はやと」とうわ言のように名前を呼んだ。
「はやとの……ん、キスも、指も……ンん……アレもぜんぶ、気持ちいい……」
「——っ」
 不意の言葉に隼人の動きが止まる。
「…………はやと?」
 キスが途切れて、竜馬が見上げた。
「はやと」
「……」
 戸惑うような、隼人の瞳。
「おめえ——」
 ほのかに隼人の肌に赤みが差していた。
「照れてンのか」
「……」
 目を合わせようとしない。
 それが答えだった。
「……いいモン見た」
 竜馬が微笑む。
「『せっかく』って、やってみるモンだな」
 腕に力を入れて引き寄せ、竜馬から口づけた。
「ン……なあ、はやと」
「……何だ」
「日付が変わるまで、あと十分だ。おめえの言うヤリ納め、しようぜ」
 だがもう一度キスをしようとしてやめる。
「……でもな」
 眉をしかめ、ぱちぱちとまばたきする。今度は隼人がその様子をうかがう番だった。
「おめえは突っ込むほうだからまだカッコつくだろうけどよ」
「うん?」
「俺は脚広げて突っ込まれながら言うのかよ。それって何かマヌケじゃねえのか」
 真剣な顔つきに、隼人が小さく吹き出した。
「あっ、おめえ」
「いや、すまん」
 隼人が笑う。すっかりリラックスしたときにだけ見せる、柔らかい表情——竜馬にしか見せない笑い方。
「ンだよ」
 唇を尖らせながらも、竜馬の眉間の皺がほどけていく。やがて、同じように笑う。
「マヌケじゃないから、大丈夫だ」
「ほんとかよ」
 ああ、と頷いて隼人の手が竜馬の胸に伸びる。
「んっ」
「お前の感じている顔も声も仕種も全部、興奮する」
「——」
 竜馬の顔が赤くなっていく。
「問題があるとすれば別にひとつ」
 鼻先に軽く口づけて、隼人がささやいた。
「ふたりとも夢中になり過ぎて、気づいたらとっくに年を越しているケースだな」
「…………それって」
「それって?」
「俺らっぽいカンジだな」
 赤い顔のままで、竜馬がくすりと笑った。