Sweet Sweet White Winter

新ゲ隼竜

つきあってます。
雪を見て竜馬が「温泉行きたい」って言ったので、連れていってあげる隼人。一緒に露天風呂に入って、雪景色を見るいちゃラブ話。ちょっとお尻は触るけど、キスまで。竜馬寄り視点。
前に花園神社デートを書いた『ふたりの夏』っぽい雰囲気のお話です。約7,000文字。2022/1/21

◆◆◆

 隼人が手を止めるのも、顔を上げるのも、訊き直すのも珍しかった。
「あンだよ」
 そのことに少なからず動揺して竜馬の声がうわずった。
「もう一度、言ってみろ」
 隼人がじっと竜馬を見る。
「だ、だから温泉行きてえって」
「……」
「おい、隼人」
「何で、また」
「何でって……」
 ついと窓の外に顔を向ける。
 雪がちらついていた。
 この小さな作戦室は壁一面が窓だった。麓まで眺望できる。晴れ渡った日は絶景だった。もちろん、防御面にもぬかりはない。だから時折、隼人は息抜きを兼ねてここに籠る。竜馬はどうやって嗅ぎつけるのか、よくふらりとやってきては邪魔するでもなく、窓際に陣取ってぼんやりと時間を共有する。
 今日もそうだった。
「雪が……降ってるだろ」
 山肌に沿って吹き上がることも多いが、しんしんと落ちていく雪を眺められる日もあった。
 今は静かに、生命を賭けた闘いに明け暮れている人間どもの営みなど知らないとばかりに、白い真綿が降り注いでいた。
「だから、きっと露天風呂がある温泉もいいだろなって——それだけだ」
 竜馬の瞳は雪を追って上から下へ、また上へ戻って、ゆるゆると落ちていった。
「お前、長湯は嫌いだろう?」
 少しだけ意地悪い響きで隼人がからかう。
「浴場でも、さっさと出ていくクセに温泉か」
「それと温泉に入りてえってのは別だろぉ?」
 竜馬はあからさまに不機嫌そうに口を尖らせる。
「何か……雪ってキレイだなって」
「綺麗?」
「ああ」
 頬づえをついて、眺める。口元はすぐに微笑む形に変わった。
「東京じゃ、降ってもあっという間に真っ黒くなって消えちまう」
 数えきれないタイヤと靴底に踏み潰されて。
「意外とロマンチストだな」
 言うなり、隼人が立ち上がる。
「……隼人?」
 怪訝な目を向けるが、こちらを見もしないで隼人は部屋を出ていった。
「……何だ、ありゃ」
 竜馬が首を傾げてから二十分後、機嫌の程度がまったくうかがえない顔つきで隼人が戻ってきた。
「……よう」
 雪景色を眺めていた竜馬が顔だけ振り向いて迎えた。
「出かけるから支度しろ」
 唐突に言い、隼人がノートパソコンを閉じる。
「へ?」
「一泊用の着替えと歯ブラシだけ持てばいい」
「は? え? おい——」
 広げていた資料をかき集めノートパソコンと一緒に脇に抱えると、隼人は回れ右で扉に向かう。
「え、おい! 隼人!」
 竜馬が急いで後を追う。
「他に必要なものは俺が用意する。今から三十分後、第二ゲートに車を回す。いいな」
「いいな、って……おい!」
「お前が言ったんだろう?」
「は? だからどういうことだよ?」
 隼人は立ち止まり、竜馬の顔をぐっと覗き込む。
「ち、近え……」
「露天風呂がある温泉」
 それだけ言い、さっさと歩いていった。
「え。……え?」
 十メートル先の角を曲がって隼人の背中が見えなくなっても、竜馬はしばらく廊下に立ち尽くしていた。

   †   †   †

「ふおっ……さっみい‼︎」
 車を降りるなり、竜馬が声をあげた。
「すっげえ! 雪だ!」
 雑用で研究所の外に出るにしても、ほんの一時的なものでせいぜい建物の周囲までだ。ましてや冬に差しかかってからは出歩くことはほとんどなかった。
「本当の冬って、こんなカンジなンだな」
 はあ、と息を吐いて、浮いた白いモヤを眺める。
「新宿でも息は白くなるし、雪が降るときもあるけどよ、こんな積もンねえしな」
 車の中で履き替えるようにと渡された防寒長靴は足首まで埋まっている。竜馬は面白そうにそこいらを踏んで穴を開けて回った。
「降り始めたばかりだぞ。真冬はもっと積もる」
 隼人は後部座席から次々と荷物を降ろす。
「どんぐれえ?」
「お前が埋まるくらい」
「嘘つけ」
 だが言い返さない隼人を見て、竜馬は目を丸くした。
「マジか」
 隼人は小さく笑い、「運ぶのを手伝え」と荷物を指差した。

 鬼獣との闘いで山裾がえぐれ、温泉とゲッター線が噴出した。軽く調べた範囲でも湯の埋蔵量は相当あり、湧出量も放っておけない範囲だったので観測用の施設を建てた。ゲッター線はだいぶ検出量が下がったが、研究所にも近く、温泉としての一般開放は無理。
「それで、研究所専用の温泉になっている」
「……へえ」
 諸々の機器類、電気系統収容のためにそれなりにしっかりした建物だった。緊急性はないので職員が常駐するほどではない。重要なデータは自動送信されるので、あとは施設と機器の状態を時折チェックする程度だった。
「そろそろ、その時期だったと思い出してな」
「いつもおめえが担当してンのか」
「いや。多少は前倒しになったが、構わないだろう」
「何だ、横取りかよ」
 寝泊まりする部屋、台所、それなりの広間もあり、息抜きに「ちょっと温泉に」と言う対象としては十分だった。担当所員はもしかしたらたまの楽しみを奪われたのかもしれない。
「別に脅したわけじゃない。人聞きの悪いことを言うな」
「そんなら、そういうことにしとく」
 竜馬が笑った。
「けどよ」
「何だ」
「あんま出てねえって言われても……ゲッター線が出てンのに変わりはねえンだろ。入って大丈夫なのかよ」
 不審げな声に、隼人がニヤリと笑う。煽るようで、愉快そうな目つき。
「さあな」
「うわ、人体実験かよ——いや、待てよ」
 何かに気づき、今度は竜馬がニヤリとする。
「そんならおめえが入るワケねえもンな」
「わからんぞ、入れ込むあまり、ゲッター線まみれの温泉に入ってみたいと思っているかも」
「いや、安全だ! おめえが入ったら死ぬようなことするワケねえもン」
 してやったり、という得意顔で頷いた。
「そうと決まれば一安心だな! んで、俺は何すればいいンだ?」
「この荷物をあの部屋に運び入れてくれ。バッテリーと記録紙の交換が必要なものがある。俺は先にボイラー室をチェックしてくる」
「おうよ」
 張り切って鍵を受け取った。

   †   †   †

 楽しかった。
 雪かきも、軒先のつららを落とすのも、風呂の掃除も、食事の支度も。小さめだが雪だるまも作って玄関口に飾った。
 隼人とふたりきり、初めてのことをする。全部が嬉しかった。ずっと心が飛び跳ねているようで、何をするにも身体まで浮いているようで、竜馬はときどき、自分の足元をそっと確かめた。

「飯の前に風呂入ろうぜ。汗かいちまった」
「ああ、もうすぐ終わる」
「……これ」
 広げられた資料の中から一枚の紙を手に取る。この施設の平面図のようだった。
「へえ、こうなってンだ」
「こっちが全体の断面図」
 隼人が別の紙を見せてきた。えぐれた地形を巧く使い、山に潜り込むように設計されていた。建物からはたくさんの管が伸びている。
「これ、温泉か?」
「温泉もだし、ガスや地下水排出のための配管もある。いろいろだ。興味があるならもっと詳しい資料があるぞ」
「い、いや、いい! そんなおベンキョーしたくねえよ」
 慌てて辞退する竜馬に、隼人がくすりと笑う。
「見慣れると、楽しいぞ」
「どんなふうに?」
「たとえばここを攻めるなら——ここの電力を潰せばこっちのエリアが無力化する、ここを抑えれば退路が確保できる、とかな」
「さっすが、元テロリストは考えることが違うな」
「まあ、機密を扱う施設は二重三重のセキュリティが当然だから、それも見越して手を打つ必要がある。内部の状態がまったくわからないケースもあるから、出たとこ勝負になる場合もある。だがあらゆるパターンを考えて攻略方法を練るのが面白い。まるでパズルゲームだ」
 ふと目つきに鋭さが宿る。隼人だけの硬質な世界が瞬時にできあがる。竜馬が踏み込めない、領域。
「ふう……ん」
 こうしたときは隼人を遠く感じる。同じ場所にいるのに、違う世界が見えているのだなと思う。寂しい、というわけではないが同じ景色を見られないのはほんの少しだけ悔しい。
 机上の図面を眺める。
 もしも同じ景色を見てまったく同じことを感じられるなら、心地よくて安心できると思う。寸分違わぬ重なりはひとつの倖せの形なのだろう。
 けれども、それだとたぶん「ふたり」でいる意味はない。
 今まで生きてきた何もかもが違うのだから、異なるのが当たり前なのだ。だからこそ、一緒の時間が楽しい。
 きっと竜馬が考えていることを隼人も思っている。

 そうであって、欲しい——。

「隼人」
 顔を上げた隼人の唇に、そっとキスをする。
「……何だ」
 呆けたような顔つき。
「別に」
 自分だけの特等席で見られるその表情が嬉しくてたまらない。
「『別に』ってことはないだろう。何を笑っている」
「何にもねえったら。……何か、したくなったンだよ」
 もう一度、軽くキスをする。
「——」
「へへ」
 どんな些細なことでも、隼人の先手を取るのは気分がいい。
「俺、風呂に入る準備してくる。おめえも早く終わらせろよ」
「……ああ」
 とびきりの笑顔を置き土産にして、竜馬は背中を向けた。

   †   †   †

 露天風呂は控えめに言っても最高だった。
 だから、はしゃいでしまう。
「……お前」
 湯をかけられた隼人が前髪を上げる。
「ああ、悪ぃ」
 言いながらも竜馬は泳ぐのをやめない。研究所の浴場は広くても大抵は誰かいるから、こんなふうに自由にはできない。
「っあ゛あ゛〜! サイッコーだな!」
 身体をねじり、そのまま沈む。五秒ほど潜ってから頭を出した。
「おめえも泳げばいいのに」
「俺はそこまでガキじゃない」
「楽しいぜ」
 うしし、と笑い奥の方まで進む。天井が途切れ、空が現れた。
「……隼人」
「何だ」
「星が見える」
 風呂の縁から身を乗り出すようにし、空を仰ぐ。
「普段は星を眺める暇なンてねえし、あってもそんな気分にならねえしな」
 きっと、今日が特別だからだ。
「こんなに雪があるのに星が見えるなンて、不思議だな」
「冬は空気が冷たくて澄んでいるから、雲がなければ綺麗に見える」
 隼人も隣まで来て天を見上げる。
「確かに、シチュエーションは最高だな」
「ン?」
「雪に星空に温泉、隣には恋人」
「こ、こいび——」
 視線が揺れる。
「竜馬」
 隼人の指が竜馬の顎をとらえる。
「はや……」
 ロマンチックな、甘い口づけ。
「ン……」
 たちまち竜馬の顔が赤くなる。
「最高ついでに、ここでするか?」
 もう一度口づけて、隼人が問う。
「はっ⁉︎」
「ここで」
 右手で竜馬の尻を触る。
「なっ、なっ、何言っ……」
「研究所の風呂でなんかできないだろ」
「だ、だからって」
「どれだけ声をあげてもいいんだぜ」
「〜〜〜〜ッ」
「竜馬」
 引き締まった腹筋に手が伸びる。
「だっ! やめっ! め、飯食ってから!」
 ぐい、と押しのける。
「したくないのか」
 不満げに隼人の目が細められた。
「ちがっ……ン!」
 さわさわと下腹を触られて、身じろぐ。
「そ、その手には乗ンねえぞ! 飯のあとだっ」
「やけに自重ぎみだな」
「い、今するとっ」
「うん?」
「その、盛り上がっちまって……風呂も飯も……どうでもよくなっちまう、から」
 勝手に反応を始めかけている身体を隠すように、どぼんと湯に浸かる。
「くそ……」
 背中を向けて、小さく毒づいた。
「……竜馬」
 隼人も湯に身体を沈め、竜馬の首の付け根に軽くキスをした。竜馬の肩が揺れ、ちゃぷりと波が立つ。
「……っ、俺、先に中入ってる」
 振り切るように竜馬が立ち上がる。そうして二歩、進んだときだった。
「——竜馬!」
 言うより速く、隼人が竜馬の左手を引っ張った。竜馬はバランスを崩し、さらに石造りの風呂の底で滑って倒れる。
「お、わッ⁉︎」
 思いきり背後の隼人に体重がかかり、ふたりして湯の中に落ちる。
「ぶはっ、な、何だよ⁉︎ こ、の」
 湯から顔を出して叫ぶが、次の光景が竜馬から言葉を奪った。
 ばちゃ、と軒から白い塊が落ちてきた——と、次々と雪の塊が滑り落ちてきた。ぼちゃぼちゃと派手な音としぶきをあげて露天風呂に飛び込んでは溶けていく。
「——」
 軒を見上げる。
 ある塊は幅一メートルもあるだろうか。厚さも十センチはあるようだった。それらが、先程まで竜馬が歩いていた場所に落ちていった。
「下手をすると首がイカれる」
「お…………あ、ああ」
 初めてのことに、茫然としていた。
「大丈夫か」
 頬を撫でられ、竜馬が我に返る。
「お、おう。ちっとばかしビックリしたけど……」
 また軒を見上げ、水面を見、隼人を見る。
「……助かった。さんきゅ」
 首元に抱きつき、息をついた。
「このスケベって言うところだった」
「まあ、間違ってはいないがな」
 顔を見合わせ小さく笑う。そしてどちらからともなくキスを交わす。
「……雪のせいでぬるくなっちまったな。中の風呂に入り直そうぜ。本格的に腹も減ってきちまったし」
「ああ」隼人が頷く。
「なあ、研究所の風呂でできねえことするンだったら、髪の毛洗ってくれよ」
「……何?」
「俺、おめえに頭触られンの好きなンだ」
「……」
「お返しに俺も洗ってやっからよ」
「……お前の洗髪は雑そうだな」
「何を」
「思ったことを言ったまでだ」
「俺様のテクニックに吠え面かくなよ」
 隼人が吹き出す。
「そりゃ、楽しみだ」
 見つめ合い、またひとつキスをした。

   †   †   †

 夕飯を済まし、後片付けも終わって落ち着いた頃。
「なあ、外行こうぜ」
 竜馬が隼人の腕を掴んだ。
「外ってお前」
「ちょっと出るくれえ。ほれ」
 窓を指差す。
 雪が舞い落ちていた。

「おおお、山の冬ってすげえな」
 竜馬は瞬時に身を覆う冷気にぶる、と震え、それでも嬉しそうに笑った。
「おわ、歯が冷てえ」
 きゅっと口をすぼめる。その仕種に隼人の目が優しくなった。
 月明かりの中、ちらちらと儚げな雪。ときどき吹く風に煽られて、木立に積もったばかりのさらさらの雪が舞い上がる。結晶が光を浴び、きらりと一瞬だけ輝く。
 幻想的だった。
「……キレイだな」
 ぴたりと隼人に寄り添う。隼人は黙って肩を抱く。
 竜馬は甘えるように、隼人に頭を預ける。
 ふたりで、雪景色を眺めていた。
 やがて、遠くからどすりと重たい音が聞こえてきた。
 竜馬が不思議そうに隼人を見上げる。
「ああ、あれは木の枝に積もった雪が落ちる音だ」
「あんな音すンのか」
「冬でも葉が落ちない木があるだろ。そこにこんもり積もった雪がときどき落ちる。雪ってのは結構重いんだ。だから雪深いところは屋根の雪下ろしをしないと家が潰れるし、下敷きになれば圧死や窒息死もある」
「……へえ」
 耳を澄ますと、他にもせせらぎの音が聞こえてきた。
「水の音だ。凍ンねえのかな」
 ざくざくと足音を鳴らし、進む。
「そこまでにしておけ」
 隼人が止める。
「雪は崖の縁も穴も沢の表面も覆うから厄介だ。踏み込んだら即お陀仏だぞ」
「……」
 竜馬はたった今置いた場所からそろりと足を離す。
「水音は近くに沢がある証拠だ。小さな流れならまだいいが、夜に沢に滑り落ちてみろ。死ぬぞ」
「……おめえが言うと説得力あるな。ゲッターに乗ってなくても、死にそうな世界って案外近くにあンだな」
 笑いながら引き返してきた。
 隼人の横に並び直す。
 そうしてまたじっと夜を見つめる。
「……ほんとに、キレイだな」
 冷たい外気にさらされて、竜馬の瞳は少し潤んでいた。
「それに、気持ちいい」
 表面は確かに寒さを感じるが、身体の中心はぽかぽかしていた。温泉の効能なのか、隣に隼人がいるからなのか。胸が満たされていた。
「この空気のカンジ、空手をやってるときと似てる」
「……?」
「尖ってるけど、殺気立ってねえ、みたいな」
 ゆっくり息を吸い込む。爪の先までピシリと気が通う。
 隼人から距離を取り、
「こう、心を落ち着けて、構えて——」
 身体を横に向け、何度か深く呼吸を繰り返した。
 すっと構える。
「……ここの、このカンジ」
 目を閉じる。口元はほのかに微笑んでいた。
「ゆるンでるけど張り詰めていて、けど、全然イヤな緊張じゃなくって」
 長い睫毛を上げる。その瞳が子供のように無邪気に輝いていた。
「疲れねえンだよな。ずっと、その中にいたくなる」
 ニッと笑った。
「冬って、ただ寒いだけだと思ってたけど……結構いいモンだな」
 隼人の傍に戻り、真正面から抱きつく。
「連れてきてくれて、あンがとな」
「……ああ」
 隼人は竜馬の頭を撫でる。髪にそっと指を差し入れ——。
「……凍っているぞ」
「へ?」
 ゆっくり指を滑らすと、ハリハリと微かな音が聞こえる。内側の乾ききっていない髪の毛が凍っていた。
「え、マジで? お、ほんとだ!」
「お前、ドライヤーかけたか?」
「いいや」
「風邪引くぞ、この馬鹿」
 聞いて、竜馬がきょとんとする。それから、
「バカだったら風邪引かねえよ」
 思いきり笑った。
「ふひっ、歯っ、冷てっ」
「鼻の頭も赤いぞ」
「おめえもだぞ。いい男が台無し……うぇっくしょ‼︎」
 ずび、と鼻をすすろうとして、竜馬の動きが止まる。
「は……隼人」
 目をまん丸にして見上げる。
「どうした?」
「鼻……今、中、凍った」
 手で鼻を押さえ、驚愕の表情。その睫毛の先にも霜が降りている。
「なら、そろそろ中に入ろう。俺は氷の彫像を抱く趣味はないんでね」
 竜馬をぎゅっと抱きしめる。
「……ン」
「ちらつく雪を眺めながら、あたたかい部屋で素っ裸ってのもいいもんだぜ」
「……このスケベ」
 竜馬はくすりと笑い、隼人の首元に顔をうずめた。

 またどこか遠くで、木の枝から雪が落ちる音がした。