可愛いあのコの落とし方

新ゲ竜総受けR18

【閲覧注意】
隼人・弁慶×竜馬の3Pあります。
竜馬が可愛いのでつい手を出す隼人と弁慶と、やめろと言いつつ気持ちよさに流される竜馬のお話。
攻めふたりにちゃんと竜馬への愛はあります。でもヤリたい盛りなので、それぞれ竜馬をつかまえてはちゅっちゅしていじりまくります。竜馬はふざけんなコノヤロウと思いつつグズグズになります。最後は仲良く3人でお楽しみ。隼人と弁慶は純粋に攻め。
無理矢理要素ありありなので、以上が楽しめそうな方のみどうぞ。
受けの自慰と軽くですがフェラあります。

前に書いた竜馬総受け雰囲気話(『お正月』)の前段階的なお話。実は『お正月』は設定上、竜馬開通済み。設定はあったのですが、書く順番逆っていう。
仲良く3人一緒の新ゲチームです。約26,000文字。2022/1/1

※分割しています。



◆◆◆

 

 ただのいけ好かない同僚だったはず——キスをされるまでは。
「っ……な、ンだよ⁉︎」
 数瞬前のことが理解できない。
「ふ、ふざけンな! 死ね!」
 だから、罵倒して殴りかかるしかできない。隼人はその拳を最低限の動きでかわした。
「腰が入っていないぞ」
「なッ」
 抱きとめられる。
「——ッ」
 そして、再び唇を奪われる。腰と頭を強く引き寄せられ、抵抗できない。
「ん、む……ン、ン!」
 呼吸を遮られ、竜馬が唸る。だが隼人は構わず舌をねじ込む。反射的に竜馬の身体が跳ねた。
「……ッ、んッ」
 隼人の舌は躊躇することなく咥内を舐め回す。逃げる舌を追い、絡みつく。情熱的、といえばまだマシで、その実ただの執拗な愛撫だった。唾液が溢れ、竜馬の顎から首筋を伝う。
「ン……ンッ」
 かろうじて隼人の襟元を掴む。震える手に力はない。頭の中が混乱して、何もできずにいた。
 そうしてしばらくいいように弄ばれ、やっと解放される。
「ッン、はあっ、は——」
 身体が酔っているように揺れた。酸素が足りていないのか、現実が受け入れられないのか。
「う、あ……っ、はっ……はあっ……」
 目の前がちかちかしていた。ぼうっとして「このままじゃヤバイ」ということだけはわかっていたが、何をどうすればいいのか竜馬にはわからない。
「……ククッ」
 唾液に濡れた唇が空気を求めてわななく様は艶かしく、隼人は昂りに舌舐めずりをする。
「竜馬」胸ぐらを掴み、もう一度口づける。
「……んッ!」
 竜馬の目が見開かれた。
 次の瞬間。
「がっ——!」
 視界の外側から拳が飛んできて、隼人のこめかみに直撃した。衝撃が与えられ、仰け反る。その隙に竜馬が腕の中から逃げ出した。
「ぐ——っ」
 隼人の瞳がぶれる。平衡を保っていられず、膝をついた。
「っ……ざまあ、ねえ、ぜ」
 竜馬は荒い呼吸と刺すような目で見下ろし、後退する。
「クソが……」
 口元をぐいと袖で拭う。唾液を含んで布地の色が濃く変わった。不快さに思いきり顔を歪める。
「二度と……二度とこんな真似、すンじゃねえぞ」
 唐突に一線を踏み越えてきた男に言い放つと、背中を向けて駆け去った。

   †   †   †

 テレビからは漫才が流れていた。特に見たい番組でもない。音がないのはどことなく寂しいから、惰性でついているようなものだ。だが、まったく見ていないわけでもない。
 竜馬は煎餅を、弁慶は好物のポテトチップスを口に放り込みながら、漫才のネタを引き合いに他愛のない話をする。
 竜馬の部屋にはテレビがない。だからたまにこうして「何となく」「暇つぶしだ」など言ってはやって来て、風呂上がりのリラックスした時間をともに過ごしていた。
「今日はずいぶんと長居だな」
 ちらりと時計を見た弁慶に振られ、竜馬が一瞬固まる。
「ん? どうした?」
「もう寝るンなら、帰っけど」
「別に、まだ大丈夫だけどよ」
「……なら、まだいいか?」
「ああ」
 ふたりしてぼりぼりパリパリと音を立てる。
「なあ、どうした?」
 やがて、弁慶が訊ねた。
「あー……」
 竜馬は溜息のように声を押し出し、床を見つめる。深刻そうな表情に、並んで座っていた弁慶が距離を詰める。
「俺でよけりゃ、聞くぞ」
 二の腕が触れ合う。竜馬の肩がぴくりと動き、少しだけついと離れた。
「……うーん」
「何だ」
「あぁ、……隼人が、な」
「隼人が、どうした」
「あー」
「歯切れが悪いな。らしくねえぜ」
 弁慶の大きな手が竜馬の背中をバシリと叩いた。
「でっ! おめえ、力強えんだよ」
「ははっ、悪い」
「悪いと思ってねえだろ」
「そんなことねえぞ」
 にっかり笑う。
「……」
 その人懐こい笑顔に、ふと竜馬の心がゆるんだ。
「……キスされた」
「え」
「その、隼人に……キス、された」
 思い出してもムカつく。自然と唇が不機嫌に尖る。同時に、秘め事を告白するようで恥ずかしい。頬がほんのり赤くなった。
 竜馬は膝を抱え、顎を乗せる。弁慶の目は見ない。
「……アイツ、何か怖えンだよ。ギラギラする目で人を見やがって。……だから、部屋に帰るのがちょっと怖え」
 真正面からの殴り合いであれば負ける気はしない。だが相手は頭の切れる元テロリストだ。下手をしたら薬でも使ってきかねない。どんな手で来るかわからないだけに不気味だった。
「……へえ、隼人が、なあ」
 弁慶の声が少しだけ低くなった。竜馬は気づかない。
「あいつ、女にモテそうな顔してるのに、竜馬が好きなのかあ」
「オイ、そういう言い方やめろよ。アイツが俺のこと好きだって? 冗談」
 吐き捨てる。
 あれは獲物を狩る目だった。手向かう相手をねじ伏せて自分の思い通りにさせることに悦びを感じる、倒錯的な匂いがする。
 追い詰めて、なぶって、いたぶるのが好きだとしか思えない。そこに気持ちなど——竜馬を好きだと——到底、あり得ない。
「あいつ、ひねくれてっから素直に言えねえんだろ。じゃじゃ馬ほど可愛いんだろうなぁ」
 弁慶の言葉にカッとなる。
「だ、誰がじゃじゃ馬だよ! 馬じゃねえし! 可愛いって何だよ! お、俺は男だぞ!」
 ムキになって返す。頭に血が上って顔中が熱い。
「俺、隼人の気持ち、わかるぜ」
「え」
 何が、と問う間もなく唇を奪われた。抱きすくめられる。
「んうっ」
 昼間の出来事がフラッシュバックする。
 身をよじろうにも、すっぽりと腕の中に収まっていてどうにもできない。
「ん、ん、ンンッ」
 弁慶の舌が器用にうねり、口腔内をこじ開ける。歯を閉じたくても分厚い舌に阻まれる。上顎の粘膜をなぞられ、歯茎をねぶられ、竜馬の舌は赤子のように翻弄された。
「〜〜っ」
 ぞくぞくとした感覚が背中を這い上がっていく。それをわかっているのか、弁慶の指が背中を撫でた。
「——っ!」
 身体が勝手にびくりと反応する。すかさず弁慶の左手が尻を包んだ。
「んんっ! ん‼︎」
 丸みをゆっくりと揉みしだかれる。大きな手のひらと指先が別々の生き物のように動く。
「ん! ンッ!」
 初めての感覚についていけない。下半身にぞわりと快感に似た震えが走った。
「ん〜〜っ!」
 抗議は口づけにかき消される。そのまま床に押し倒される。
「ばっ、やめ、てめえ!」
 やっと唇が外れ、抵抗が可能になった。だが弁慶の馬鹿力に勝てるわけがなかった。
「おいっ! ばっか……あひゃぁ!」
 服の上から股間を撫でられ、罵る声が高くなる。
「やめっ、ちょっ、あっ!」
 さわさわと軽く動いていた指は、次第に明らかな意図を持ってこすり上げ始めた。
「ひあっ、ばっ……! あっ」
 弁慶の指の間からペニスの形が浮き上がってきた。
「う、やめ……っ、はあっ、あっ、あっあっ」
 逃れたいのに、もがくほど弁慶の手に陰茎をすりつける格好になってしまう。腰がかくかくと動いた。
「あっ、あっ……あぁっ」
「竜馬ぁ、それ、逆効果だぜ」
 弁慶が竜馬の左耳にかぷりと噛みつく。
「ひゃあっ——ンッ、う、あぁんっ」
「……何だよ、ずいぶんと可愛く鳴くじゃねえか」
 普段は柔和な弁慶の瞳に昏い欲が燃え上がる。今度は耳の穴に舌を差し込み、舐め回した。
「ふうんっ、あんっ、あっ——ひああぁっ」
 竜馬の身体が面白いように跳ねる。
「お前、耳が弱いのか」
「あっ、やだっ……」
「何だよ、女みてえに喘ぎやがって」
 嬉しそうに弁慶が笑い、さらに耳を責めた。
「ふ、ンッ! あっ、あっ!」
 力が入らない。与えられる愛撫に鳴くことしかできない。
 弁慶はズボン越しに竜馬のペニスの先端部分をぐにぐにと刺激する。
「——‼︎」
 ダメだ、と思うが制止の声が出せない。全部が嬌声に変わってしまいそうだった。
「ンッ!」
 マズい、と思った瞬間、弁慶の手が止まった。
「————え?」
 ずし、と巨体がのしかかってくる。
「ぐ、う゛ッ」
 重さに呻く。
「べ、べんけ、い……?」
 気を失っていた。
「な、え……?」
「ずいぶんと楽しそうだナァ」
 聞き覚えのある声。
 ただ、聞いたことがないほどの、ねっとりとした響きだった。
「は……隼人……!」
 弁慶のこんもりとした肩の向こうに、ニヤつきながら見下ろしてくる冷たい視線を認めた。
「俺にはキスだけでブン殴ってきたクセに、弁慶の野郎には耳を舐めさせてチンポまで触らせるとはナァ?」
 くっくっ、と切長の目をもっと細めて笑う。竜馬の背中にざわりと怖気おぞけが走った。
 隼人は弁慶の身体を引き剥がして後ろに転がす。
「…………」
 結果としては助けてもらった格好だ。だが——。
「手を出さねえほうがよかったか? 弁慶にその小さなケツをブチ犯されて泣いているお前を眺めていたほうがよかったか?」
 入れ替わりに隼人が覆いかぶさってくる。
「俺にも触らせろ」
「……っ、……ぁ……っ」
 声が出ない。身体も動かない。こんなことは初めてだった。

「あっ……あっ、あっ!」
 隼人の長い指になぶられて仰け反る。弁慶とはまた違う愛撫の仕方だった。
「やめっ、はや……あっ、ひああぁっ!」
 嫌なのに、やめて欲しいのに、肉体は与えられる快感に呑み込まれたくて蠢く。責められているうちに、隼人を受け入れるように腰が浮いた。
「やめ、ろ……やだ……っ」
「そんなふうに見えないがな」
 隼人はニヤつきながら竜馬のペニスを下着の上から撫で回した。亀頭の部分の色が濃くなっている。
「あっあっあっ」
 指の腹で軽く押すと、ぬとりとしていて生温かった。
「だいぶ濡れてきたな」
 耳元でささやくと、竜馬は思いきり顔を背けた。耳たぶから首筋まで赤くなっている。
「お前、処女より処女らしいぞ」
 愉快そうに笑うと、隼人の指はタンクトップに向かった。まっすぐに乳首の位置を探りあてる。
「んっ……やっ!」
「こっちも勃ってるぞ」
 こすると、その身体が小さく震えた。
「き……気持ちよく、なンか……ねえぞ……! くすぐってえ!」
 フン、と隼人が小馬鹿にしたように鼻を鳴らす。
「慣れてなけりゃ、それもそうだな」
 言うなりタンクトップを剥ぎ取った。右の乳首を口に含む。
「ひゃあっ! ばっ……!」
 舌でつつく。乳輪に沿って舐め、キスマークをつけるようにきゅっと吸う。同時に左手は背中を、右手は腰を撫でさする。
「んふっ、んっあっ」
 ぴくぴくと身体が跳ねた。隼人は左の乳首も同じように愛でる。
「ふぁ、ンっ!」
 思わず出た嬌声に、はっとして竜馬は唇を引き結ぶ。だがもう遅い。
「左のほうが感じるのか?」
 隼人が吸いつき、ねぶり回した。胸筋をゆっくり揉み、時折脇の下まで指を伸ばしてさする。
「あっ、はあっ! はぁんっ」
 明らかに反応が変わる。
「……好きそうだな」
 満足げに隼人の薄い唇が動いた。竜馬は涙目でかぶりを振り、身をよじる。
「やっ、やめっ……」
 ちらりと弁慶を見る。まだ伸びている。さっきのことは許すから、今は助けて欲しい。
 けれども目を覚ましてこの光景を見たら。
「——っ」
 最悪な想像をしてしまう。
「く、そッ」
 自分で何とかするしかない。上になった男を押しのけようと闇雲に腕を振り回し、突き出す。
「あ——」
 しかし、その瞳は驚きに大きく見開かれた。
「ククッ」
 狡猾な狐のように隼人が鋭く笑う。
 不意に触れた場所は硬くなっていた。慌てて手を引く。
「お前のせいだぞ」
 隼人は耳に口を寄せる。
「んっ」
「責任、取れよ」
 ズボンの前を開ける。
「イカせてくれよ。うまくできたら、今日はやめてやる」
 竜馬の手を取り、自らのモノに導いた。
「あ……」
 熱い。
 他人のペニスなど——しかも勃起しきった——触れたこともなかった。竜馬の指が戸惑って宙に逃げる。
「だめだ」
 隼人の左手が竜馬をつかまえる。
「——ッ」
「いつも、自分でしているみたいにすればいいだけだ」
 竜馬の手を押さえつけ、握らせる。自分は右の指を竜馬の乳首に伸ばした。
「ふう……っん」
 勃った乳首を下から弾く。
「なあ、しごいてくれよ」
「ああっ……!」
 竜馬の手を掴んで上下させる。その間もいやらしく竜馬の乳首をこねる。
「ふ、あっ……あ、あっ」
「自分のをしごいている気分にならないか」
 下卑た笑いを浮かべ、隼人はペニスの先を竜馬のヘソに押しつける。綺麗に割れた腹筋をなぞると、溢れる雫がぬらりと道を描いた。
「や、だ」
 自分の身体が隼人の体液で犯されていくのを止めようがない。
「っ、く……あっ……」
 悶えるような声に、隼人の口元が面白そうに歪む。
「何だ、お前。泣いているのか」
「ち、ちがっ……」
 ぎゅっと目を瞑り、首を振って否定する。隼人は右手で竜馬の顎をとらえ、正面を向けさせた。
「……っ」
「お前、いい顔しているぜ」
 キスをする。
「ぐ——ン」
 唇を内側に隠して拒むが、舌先で執拗になぶられる。
「んっ、ンん!」
「竜馬」
「——あ」
 手の中で、隼人のペニスが脈打つ。
「ほら、もう少しだ」
「んっ」
 竜馬の頬をべろりと舐めて、隼人が促す。
 早く終わるなら——。
 もう、それしかない。
「くっ」
 竜馬は右手に力を込め、しごき始める。腹の上で淫らに涎を垂らしている隼人のモノを、一秒でも早く満足させるのだ。そうすれば解放される。
「やる気になったか」
 隼人の薄い唇が好色そうに笑う。竜馬の手に合わせ、腰を振る。
「もう少し、強くしていいぞ」
 はあ、と熱い息が降りかかる。
「——っ」
 目が合う。
 その瞳が快楽に笑う。ひどく愛想のない、冷たい普段の容貌とは違う。整った顔立ちだけに熱が艶かしく映る。竜馬はほんの一瞬だけ、見惚れてしまった。
「ん……っ」
 気持ちよさそうに隼人が目蓋を閉じる。竜馬は現実に引き戻された。
「はや、く、イケ……っ」
 竿をこすり上げ、人差し指の腹で亀頭をぐりぐりと刺激する。隼人の柳眉が寄り、唇から吐息が漏れた。
「く、う……っ」
「早く、イッちまえ、よ……」
 圧をかける。ペニスははちきれんばかりになっている。もう少し。
「くそ……っ、この、ヘンタイ……!」
「う、あっ」
 隼人の動きが止まり、そして震えて——竜馬の手の中に精を吐き出した。
「……っ!」
 竜馬が緊張で固まる。
「はあ……っ、は、あ……」
 隼人は息を荒くし、ゆっくりとペニスを滑らせて竜馬の手にこすりつけた。
「……竜馬」
 唇が降ってくる。茫然としていた竜馬は抵抗を忘れ、受け入れる。
「なかなか、よかったぞ」
 噛みつくどころか、ひどく優しい口づけだった。
「……」
 竜馬の瞳は隼人を見つめ、それから下に向かう。
「……っ、あっ」
 汚された手と腹が視界に入った。急速に我に返る。
「……あっ、く……」
 言いようのない苛立ちと悔しさが込み上げてきて、口元が醜く歪んだ。
「……くそっ」
 思いきり顔をしかめ、竜馬は舌打ちをした。

 

 

 訓練を終えて自室に戻る途中だった。夕飯のメニューを考えていると名前を呼ばれ、何の気もなしに振り向いた。弁慶を認識したが、警戒する必要があると思い出す前に倉庫に引っ張り込まれていた。
 人が来るかもしれない。そう思うと下手に声も出せず、まごついているうちに服を剥ぎ取られ、弁慶の眼前に隠部をさらしていた。
 あっという間だった。
「て、てめえ……!」
 声を抑えての抗議はまったく効果がない。
「クソッ……こン……の、エロ坊主……っ!」
 両脚の間に弁慶が割り入ってきて身動きが取れない。脚を肩にかけさせられて、どうにも恥ずかしい格好でされるがままになっていた。
 穴の縁をくにくにと押される。
「ひっ、や、やめ……」
「痛いのか」
「ン、痛くは……ねえ、けど……やっ」
「そうか」
 弁慶の指は動き続ける。
「——っ」
 そこで、やめてもらう機会を逃したことに気づく。
「や、やめろ……」
「痛くしねえから」
 くい、とすぼまりを押される。
「ンッ」
 思わず顎が上がる。
 気持ちいいわけではない。反射と、恥ずかしさと逃げ出したい思いからだった。
「くそ……っ、男のケツ穴いじって……んっ、楽し……う、んあ……っ」
「楽しいぞ」
 弁慶はニヤリと笑う。
「どうしたら竜馬に気持ちよくなってもらえっかなとか考えながらな」
 ぐ、と両の親指で尻を押し広げる。秘所が丸見えになる。
「あっ! ばっか……! て、めえ!」
 竜馬の顔が真っ赤になる。剥き出しにされた穴の口が開いているのがわかった。
「へへ」
 弁慶がふうっと息を吹きかける。
「ひっ」
 びくりと身体が強張った。
「ははっ、きゅってなったぞ。可愛いな」
「ひあっ⁉︎」
 突然舐められ、大きな声があがる。普段は閉じられているものをさらされるだけで頭が混乱するのに、じっくり見つめられ、さらには触れられている。おかしくならないほうがどうかしている。
「あっ、あっ、やっ! ダメ……だっ」
「ん? 何でだ?」
「んあっ⁉︎ やめ、舐め……ンな、あっあっああぁ……!」
 尖らせた舌先でとんとん、とつついて舐め上げる。縁に沿ってゆっくりと舌でなぞって、口づける。繰り返すと竜馬の声が少しずつとろけていった。
 時折、唇をずらして腿の付け根を舐めては吸う。指でさすると「はあ、ん」と切なそうな声をあげて尻が揺れた。秘所がこっちも、と催促しているように開いては閉じる。
「そうか、欲しいか」
 弁慶はべろりと尻穴を舐め、ゆっくりと舌を挿れていく。
「ふぁッ⁉︎ やっ、な、あ、ああ、っン‼︎」
 竜馬は頭を横に振って懸命に正気を保とうとする。しかし熱い舌が阻む。
「ひあぁっ! なか、が……! あっ、んひっ」
 ぐねぐねと動く舌に押し出されるように声が漏れ続ける。
「だっ、だめ……っ、あっ、ひぃっ」
「……何でだよ、気持ちよくねえのか? ほれ」
 唾液にまみれた穴をぢゅう、と音を立てて吸う。
「ひっ!」
「恥ずかしがんなくていいぞ。ここな、まず誰も来ねえから。もっと、声出せよ。聞かせてくれ」
「やっ、あっ、あっ……ああぁっ!」
「竜馬ぁ、お前、ほんとに可愛いなぁ」
「ば、ば……かぁっ、あっ、んっ!」
「一日中でも舐めてやりたくなる」
 卑猥な水音と甘いささやきに耳がいっぱいになる。
「でもまだ、こっちも欲しいよな」
「んあっ⁉︎」
 ペニスを握られる。
「おわ、すげえ我慢汁」
 指が動くと、にゅちゅ、とまるでローションを垂らしたような音が聞こえてきた。
「舐められんの、そんなによかったかぁ」
「あ、あぁあ……っ、ちがっ……やだ、俺のじゃ、ねえっ……あうんっ!」
 弁慶の指でなぶられる。くちゅくちゅといやらしい響きが竜馬を搦めとる。
「ふぁっ、ンッ! ンッ!」
「お前、タマまで可愛いな」
「っ‼︎」
 弁慶の愛撫はその体型と普段の言動の荒さとは似ても似つかなかった。繊細で、優しい。
「ばっ……だか、らっ……舐め……っあ、あ、あぁっ……!」
 全部が初めての感触だった。それなのに、指と唇と舌で溶かされる。
「ひっ……あ、だめ……だぁ……っ」
 気持ちいいとは意地でも言いたくなくて、けれども快感に頭の中は真っ白だった。
「あンっ、あ、あ、ああぁっ!」
 竜馬は全身を震わせて射精した。

   †   †   †

「なあ、俺の部屋の暗証番号、変えてくンねえか」
「またどうして」
 ミチルは資料から目を離さない。
「アイツらに勝手に入ってこられンの、困ンだよ」
「アイツらって?」
「決まってンだろ、隼人と弁慶の野郎だ」
「何をそんなに困ることがあるの」
「あー……」
 竜馬が言い淀む。
「んー」
「早く言いなさい」
 キッ、と椅子を軋ませてミチルが振り向いた。竜馬は小さく息をつき、口を開く。
「……俺のテイソーの危機なンだよ」
 ミチルの眉が上がる。
「テイソウ?」
「俺、狙われてる」
「何それ。どっちかにでも言い寄られてるの?」
 冗談めかした響きでミチルが笑った。だが、
「……両方」
 と聞いてさすがの彼女も言葉を失う。
「今ンとこ、部屋まで来たことねえけど……いざとなったらアイツら何すっかわかンねえからよぉ」
 いつになく覇気のない竜馬に、冗談ではないのだとミチルも知る。
「変えてもいいけど、非常事態に備えてパイロット同士には教える決まりよ」
「げ」
「それに、隠せても一瞬だと思うわよ。神君ならすぐ調べられるでしょうし、何ならリセットするかもしれないわよ。そうなったら、変更なんか無意味よ」
「……マジか」
 竜馬は茫然とする。
「どうする? 一応、変えておく?」
「…………いや、いい。逆に勘繰られても面倒だし」
 ミチルは少しだけ申し訳なさそうにトーンを落とした。
「悪いわね」
「あ、ああ。……しょうがねえよな」
「まあ、プライベートのことは口出ししないから、自分で頑張りなさいな」
「お、おめえ、冷てえなぁ」
「鬼娘ですから」
 いつもの口調に戻り、フフンと笑う。
「女子所員に手を出されるよりマシだわ」
「お、俺だって大事なパイロットだろうが!」
 ミチルは竜馬を上から下まで視線で舐めてあきれたように言った。
「あなた丈夫だし、繊細ってことでもないでしょ」
「だ! おめえ、ひっでえ!」
「人のこと鬼娘呼ばわりしといて」
「ぐ」
「それに、あなたたちなら妊娠しただの籍入れる入れないだの、よその女に手を出して殺してやる、とかならないでしょ」
「——」
 やたら具体的な例に閉口する。
「もしゲッターの操縦に悪影響が出るようなら、そのときはふたりに注意するわよ」
「わあったよ……」
 確かに、プライベートのことなのだ。竜馬は足元に視線を落とす。
 ふう、と息を吐くとヒールの音が近づいてきた。赤い靴が視界に入る。顔を上げると間近にミチルの顔があった。
 肩にミチルの手がかけられる。
「いい? 自分をしっかり持つのよ」
「え——」
 理知的な瞳がまっすぐに竜馬をとらえる。
「常に警戒しなさい。それから、しょうがないとか、これくらいとか、気持ちいいからまあいいか、で流されたらダメなのよ!」
「……」
「いつも損をするのは女なのよ」
 小さい舌打ちが聞こえた。
 俺、女じゃねえし、と思うがミチルがあまりに真剣な表情なので言葉を呑み込む。
「自分を大切にしなさい」
 肩を掴む指にぐぐっと力が込められる。
 竜馬は気圧されながらも、
「お、おう」
 ミチルの目を見て返事をした。

 

 その夜——。
「あっ、あン!」
 ペニスを吸われ、竜馬は喘ぐ。
 ミチルのアドバイスはまったく活かされなかった。
「お前、モニタがあるだろ。確認せずに開けるなんて、不用心だぜ」
 赤い舌を淫らに這わせ、隼人が笑った。
「ばっ……きゃ、ろ……ッ」
 もともと、他人を気にしない。言われたところで常に周囲をうかがうような性質には変われない。ふとしたときに隼人や弁慶に格好の隙を与えてしまうのはどうしようもなかった。
「くそっ、は、はな、せ……っ! 気持ち、んあっ、悪ぃンだ……よっ」
 嫌悪と羞恥と快感が竜馬の中でせめぎ合う。
「いつまでそう言っていられる?」
「あっ⁉︎」
 蛇のようにヌメヌメと隼人の舌がまとわりつく。亀頭を唇と舌先でしつこく責められる。
「〜〜〜〜ッ」
 竜馬は顔を真っ赤にしてこらえていた。
「イキたかったら、イケよ」
 ぢゅ、と鈴口を啜る。
「ひあんッ!」
「ほら」
「んひ……っ、くっ、そ……! ざけ、ンな……!」
 逃れようともがく。
「おっと」
 隼人は左腕を竜馬の右腿に巻きつけ引き寄せた。肉棒を根元まで咥え込む。
「んはっ——!」
 竜馬の腰が浮く。
「あ゛、やめっ! ううッ」
 熱が絡みつく。喉の奥をきゅ、と締められ、急速に射精感が迫り上がってきた。
「ああっ、あっ、やっ——」
 もう少しで射精するというところで、隼人が口を離しペニスをぎゅっと握った。
「————ッ!」
 イク寸前で止められ、竜馬の下腹が震える。
「あっ、くうっ……」
 竜馬はつらそうに顔を歪め、シーツを掴んで身体を硬直させた。
「な、な……」
「気が変わった。もう少し、待てよ」
 隼人が笑う。
「せっかくだから、一緒に出そうぜ」
 素早く服を脱ぐ。竜馬はぎくりとし、目を見開いた。
「あ……あ、やだ……何すっ」
 隼人のペニスは勃起しきって反り返っていた。
「ひっ」
 喉の奥で小さな悲鳴があがる。竜馬の心は逃走を選択していた。だが、身体が動かなかった。
「痛くしねえよ」
 まったく信用できない笑顔で隼人が迫る。
「や、や……だ……やめ……」
 らしくない、か細い声で懸命に拒む。しかし隼人が懇願を受け入れるはずもない。遠慮なしに自らの肉棒を竜馬のモノに押しつける。
「うあぁ、や、め——ひんッ」
 指や舌先とは違う感触が竜馬に口づける。
 アナルを無理やりに奪われると思っていただけに、正直ほっとしてしまった。そのゆるみと肉の弾力が徐々に恐怖心を薄れさせていく——男に身体を弄ばれていることは変わらないのに。
「あっ」
 互いの先走りが合わさり、ぬちぬちと音を立てる。
「んっ、ん、あ‼︎」
 ぐにぐにと裏筋を刺激され、竜馬の下肢が蠢き出す。
「あ、あ、あっ」
 緊張がほどける分、快感に支配されていく。ペニスがとろけそうになる。無意識のうちに隼人の動きに合わせ、腰を振っていた。
「ほら、気持ちいいだろ……っ」
「あっ、あっ……き、気持ち、イイッ……」
 隼人のカリ首が鈴口に引っかかって刺激が伝わる。
「——ッ!」
 びくびくと竜馬の身体が痙攣を始める。隼人は自分と竜馬のペニスを右手で握り込んだ。
「ん——ッ!」
 もっと互いの肉棒が密着する。溢れ出るカウパー液がぬちゅぬちゅと卑猥さを煽った。
「はあっ……竜馬、もうすぐ……イキそう、だ……」
 隼人は軽く眉根を寄せ、目を瞑る。手の動きが速くなる。竜馬は喉仏をさらして喘ぎ続けた。
「あっ、あっ、イクッ、イクッ、や、あ……ッ、あ、あぁッ」
「竜馬……っ」
「うあッ……ンんッ!」
 ふたりの白濁が混ざり合い、竜馬の腹を濡らした。

   †   †   †

 竜馬は左手で口を押さえ、声をこらえる。それでも指の隙間から吐息と微かな喘ぎが漏れる。
「それ、すげえ興奮する」
「——ッ」
 尻を撫で回され、背中を駆け上がる快感に唇を噛みしめる。すでに上気した頬が、さらに色を増す。
 弁慶の太い指が竜馬の尻の中で動いた。
「——ッ! うっ!」
 思わず呻く。弁慶の肩にかけられた左脚がびくびくと反応する。爪先にきゅっと力が込められて丸まった。
「だいぶ感じるようになってきたな」
 嬉しそうに言い、弁慶が中指をねじる。
「ふぁっ!」
 叫んでから、気づいてまた口を覆った。
「うっ、ふっ、ふ……うっ」
 懸命に耐える。
「そうやってんの、煽られてるみてえでたまんねえな」
 竜馬の下腹に唇が触れる。分厚い舌で舐め上げ、綺麗に浮き出た筋肉の形をなぞる。
「うあっ、あっ、あ」
 腹筋がうねり、半勃ちのペニスが硬さを増していく。
「お前って、どこも感じやすいんだな」
「い、言う……なっ」
「これ、わかるか」
「あっ、ン……な……な、ン……?」
「お前、腰が動いてるぞ」
「——ッ‼︎」
「ほれ」
 指がくい、と曲げられる。竜馬の腰が追いかけるように動いた。
「こうするとな」
「ん、あ、あ、あっ」
「指を欲しがってうねる」
「やっ、ちが……っ、あっ、あっ」
「身体は正直だよなぁ。ほれ、さっきより勃ってきた」
「あああぁ」
「竜馬、人間は正直が一番だぞぉ」
 念入りにほぐされ続け、違和感はとうの昔に消えていた。ふわふわとする気持ちよさと、指が出入りする際のじんわり湧いてくる快感がたまらない。縁の裏側をきゅっと押されると、息を呑んで震えるくらいに感じるようになっていた。
「なあ、もう少し奥のほう、物足りなくねえか」
「うっ、あ……あんっ」
「今でも気持ちよくなってんだろ? もっと奥まで挿れてこすったら、もっと気持ちいいに決まってるよな?」
「うあ……っ、も……と……?」
「ああ、もっと」
 指を抜き差しする速度を変える。
「あっ! あっ!」
 ぎゅう、と弁慶の指が締めつけられる。
「ひ……ああっ」
「ほら、竜馬、気持ちいいだろ? どうして欲しい?」
「んっ、あ……や、だ」
「気持ちよかったらそう言えよ」
「い……言わ、ねえ……っ! あんッ」
「強がるお前も可愛いけどな」
「だからっ……あぁ、かわ、いい、とか……っん!」
「本当のことだろ。俺は嘘はつかねえよ。な、竜馬。ここ、いいか?」
「よ、よ……う、よく……ねえっ……あっあっ、あ!」
 竜馬の腰が指のリズムに乗って揺れているのを見て、弁慶は嬉しそうに笑った。

   †   †   †

 それから何とか一週間、逃げ回っていた。
 視線は感じるものの、倉庫に引っ張り込まれることもなく、夜分の襲来も免れていた。それでも不安が一向に拭えないので共同の浴場は控え、部屋のシャワーで過ごす毎日だった。

 もう、大丈夫だろうか。
 ベッドに横たわり、扉を見つめる。
 ——たぶん。
 飽きたのだ。
 隼人はまたゲッター線の調査にかかりきりになるだろう。弁慶はすぐにやらせてくれる相手を求めてふらふらとし出すだろう——見つかるとは限らず、ミチルの雷が落ちるかもしれないが。
 自分から気が逸れるのなら万々歳だった。
 ——ひでえ時間だったな。
 毎日ではないにしろ、隼人と弁慶に幾度もいいようにされた。
 ——アイツら。
 ストレス解消なのか性欲の捌け口なのか。
 互いに文句を言い、ときには殴り合うものの本気で疎ましくは思っていなかった。腐れ縁のような適度な距離の仲になっていたと感じていたが、それは竜馬だけだったのか。手近な、多少荒く扱っても壊れない玩具のように見られていたのか。
「クソッ」
 好き勝手しやがって。
 胸の内で毒づくと、あの光景・・・・が一気によみがえってきた。
「——ッ!」
 隼人のニヤついた、けれども淫靡で誘うような表情。反り返って存在を見せつけてきたペニス。「可愛い」という甘い言葉とともに愛撫を続ける弁慶の手のひら。竜馬の中を柔くしつこく責めてくる中指。
「……っ、く」
 不意に身体が欲する。下腹部が熱くなり、尻穴がひくりとすぼまった。
 ——何で。
 かぶりを振る。
 違う、こんなのは自分の意思じゃない。
 生じた肉欲を割って嫌悪感が浮き出てくる。
「く、そ……っ」
 しかし涼しい顔で火種を揉み消せるほど大人ではない。すぐに欲が頭をもたげ、若い肉体を支配しにかかる。
「……ん、んっ」
 指を乳首に滑らす。
「ン……!」
 隼人の舌になぶられる様を思い出すと、あっという間に乳首が勃った。
「ふ、あぁ……」
 撫でて、弾いて、つまんで、隼人がいつもしているようにいじくってみる。無意識に加減をしているのか、気持ちよくはあるものの、反射的に仰け反るほどのびりびりとした快感は味わえない。それでも竜馬の陰茎は硬くなっていく。
「はぁ、あ……」
 欲と体力がみなぎっている二十歳の肉体に抗う術などない。ボクサーパンツをずらす。弁慶の指の圧を思い出しながら、ペニスをしごき始めた。
「う……は、あっあっ」
 ——ダメだ、気持ちいい。
「ああ……っ」
 このまま射精したい。だが、竜馬の身体はすでに知ってしまっていた。
 自慰では得られない場所への愛撫と快感の複雑さ。何度も繰り返し刻まれて、竜馬の身体はその刺激を待ち望むようになっていた。
「——っ」
 右手を尻へ伸ばす。自分で後ろの穴を慰めるなど、したことは愚か、想像することもなかった。それをためらいなくしようとしている自分がいる——。
「んふ……ふうっ……」
 薬指をあてがう。縁を柔く押して、痛みがないか確かめる。心の強張りまでほぐすように、ゆっくり揉む。
「ん……あ、はあぁっ」
 そして、
「ああっ……」
 息を吐き、指を進める。思うよりすんなりと飲み込まれていく。
「んっ、ん」
 指の先が挿入されたところで止め、呼吸をした。少しずつ指を動かす。
「あはっ……はっ、ああ……」
 縁の裏をそっとこすると、じんわりと快感が湧き上がる。指をねじり、抜き差しする。
「ン、んふっ……あっ……」
 弁慶の指の太さを思い出す。腰の奥が疼いて、頭の中がくらくらするような、あの感覚。
 ——足りない。
 中指に替える。
「んふ……っ」
 腰が勝手に動く。
 ——やべ、え。
 もっと気持ちよくなれる予感がする。けれどもひとりではこれ以上の快楽を得るのは難しい。
「ああ……っ、ん、ン」
 ——欲しい。
 自分の指では満たされない。もっと、太いモノでかき回されたい。気の済むまで中をこすって、えぐられたい。弁慶が言ったように、奥まで挿れたら——。
 腹の深い場所が熱くなる。ぞくぞくとした感覚が全身に広がっていく。
「あ、あ……俺……」
 ——どうしよう。
 始めたはいいものの決定的な果ては得られず、かといって尻穴への刺激をやめたくはなく、竜馬はぎこちなさの残る指で行為を続けた。

 

 

 シャワーを浴び終え、パンツ姿で炭酸飲料を流し込んでいた。インターホンが鳴る。
「へいへいっと」
 開放感のままにロックを解除する。
「どちらさんで——げ」
 それしか出てこない。
 己の警戒心のなさを瞬時に後悔する——いや。
 竜馬の鼓動が大きく跳ねた。
 ——期待、していた?
「その格好もいいじゃないか」
 竜馬の姿を見て、隼人が嬉しそうに笑った。
「——ッ」
 反射的に二歩、下がって構える。
 ——いや、違う……!
 位置を考えればパネルに飛びつきロックをかけるのは難しい。かといって殴りかかれば身体を押さえ込まれる危険もある。
 となると——。
 逃げるしかない。
 撃退を諦め、防衛を選択する。じりじりと退く。
 隼人は扉を閉めロックを確認する。それから余裕たっぷりに、ゆっくりと歩を進めた。切れ長の目はいやらしく竜馬を見据える。その姿を確認しながら、竜馬はベッドの上に脱ぎ捨てられたズボンを拾った。だが急いで穿こうとして裾を踏み、バランスを崩す。
「おわっ!」
 ベッドの上に突っ伏してしまう——尻を隼人に向けて。
「……いい眺めだな」
 隼人がククッと喉の奥で笑った。
「誘っているのか」
「ばっ……!」
 バカヤロウ、と罵る時間もなかった。
 隼人は瞬時に距離を詰め、背中から覆いかぶさる。左手で腰を抱え込むと、右手をためらいもなく双丘の間に割り込ませた。
「あっ!」
 布の上からさすられ、穴を押さえられる。く、と指がわずかに沈められる。
「ああ……っ!」
 びくりと竜馬の身体が震える。
 ——違う、はず。
 振りほどけない。
 隼人の指がなぞるたびに甘い痺れが尻から広がり、背中を這い上って頭の中を揺らした。人の手に触れられる快感が勝り、抵抗する意思が消え失せる。
「あ、あ、ふ、う……」
 もっと撫でて欲しくて、自然に腰が揺れる。尻を押しつけられ、隼人が酷薄そうに唇を歪めた。
「いつの間にケツの穴でそんなに感じるようになったんだよ」
 ぐ、と指を布ごと押し込む。
「ひあッ」
 竜馬の身体が跳ねた。
「あっ、あっ」
「——クソッ」
 隼人は舌打ちをして竜馬のボクサーパンツを剥ぎ取った。二、三度揉んだだけで愛撫なしに中指を挿れる。
「ふう……ッ」
 竜馬の背中が反る。口はすんなりと指を咥え、中はすでに熱くなっていた。
「あ、あぁっ」
 甘い声があがる。
 ——ちが……う。待って、ない。
「あんっ、あっ」
 勝手に唇から零れてくる。
 中をかき混ぜてくれる指を待っていた声だった。隼人は指を押し込む。肉の抵抗はあったが、痛がる素振りはなかった。
「お前、ひとりでいじくってやがったな」
 隼人はゆっくり指をねじりながら腸壁をこね回した。
「あっ……あっ……あうぅ、うふっ」
 腰が隼人の指を飲み込もうとうねる。
「ずいぶんと気持ちよさそうじゃないか」
「んふっ、あ、気持ち……い、い……っ」
 とろりとした目で、竜馬は素直に答えた。
「……そんなに弁慶の指がよかったのか」
 少し力を込めて中をえぐる。
「あっ——ん、んっ!」
「なあ、竜馬」
「……っ!」
 指を二本に増やす。簡単に挿入はいる。
「あっ、あっ」
 中でくぱくぱと開き、出し入れをしながら前立腺を撫で上げた。
「あぁっ……あっ、あンんッ!」
 じんじんと竜馬の腰の奥と頭の中が痺れる。
「あっ……やだ……っ」
「……そう言いながら、ずいぶんとだらしのねえ口だな」
 ぐちゅぐちゅとかき回す。
「あ゛あ゛ッ、ンひッ!」
「この淫乱め……っ」
 ぷくりと膨らんだ部分を重点的にさすった。
「ふあんっ! あっ、あんッ、あっ、やっ!」
 鼻にかかった艶っぽい声があがる。反射的に逃げようと腰が動くが、隼人にがっちり抱え込まれていてどうにもできない。
「ここは、弁慶に触らせたのか?」
「ち、ちがっ……あっ、自分、で……んあっ」
「自分で?」
「ああっ、あっ」
「お前、根が好き者なんだな」
 腰にキスをする。中をこすり上げ、きゅ、と押した。
「あ゛ッ、あ゛ッ! イク、あっ、イクッ——んッ」
 膨らんだ部分をごりゅっと強く押され、竜馬が達した。
 指を引き抜き、隼人はシャツを脱ぎ捨てる。ズボンは脱ぐのももどかしいとばかりに前を開いただけで、下着をずらしペニスを出す。そのまま竜馬の中に挿入しようとした。
「あ……んッ」
 張りつめたペニスでこすられて、竜馬の唇は誘う声をあげる。尻穴をつつくと、その口がぱくぱくと悶えて咥えたがった。
「……挿れるぞ」
「あっ、あっ——」
 ぐにゅ、と先端が挿入りかけた瞬間、インターホンが鳴った。
「…………チッ」
 隼人は竜馬をベッドに残し、扉に近づく。モニタを確認し、ロックを解除した。
「おっと、もうヤッてたのか?」
 下着に隠されてはいるが勃起した隼人の姿を見て弁慶がぐふふ、と笑う。
「ちょうど挿れるところだった」
 目を合わせず、隼人は頭をかきながら無愛想に返す。
「そりゃ悪かったな」
 弁慶がちっとも詫び心を感じられない含み笑いで隼人の目を覗き込んだ。
「……早く入れ」
 小さく舌打ちをして、隼人は顎で促した。

「竜馬、土産だぞ」
 ベッドの上で身体をひくつかせている竜馬に、弁慶は優しく声をかける。
「み、やげ?」
 肉欲に火をつけられ、竜馬の指は遠慮がちにではあるが後ろの穴に挿入されていた。
「ふ、う……」
「何だ、お前、待ちきれなくて自分でヤッてたのか」
「だ……て、はやと、が、あ……うぅん」
「待ってろ」
 ごそごそと紙袋からローションを二本取り出した。
「さすがにあったほうがいいだろ」
「何だ、よ、それ……はあっ……ン」
「安心して気持ちよくなるためのもんだよ」
「ふぇ……?」
「痛いより、気持ちいいほうがいいだろ」
「う、ん」
 弁慶は竜馬の頭を撫でた。
「ン、あ」
 そのまま太い指が頬を撫で、首筋を這い、耳の裏を愛撫する。
「ふ、あん、あっ……」
 竜馬はうっとりと目を細める。
「べんけえの、ゆび、気持ちいい……」
「竜馬ぁ、お前、やっぱり可愛いなあ」
「ンッ」
 キスをされ、竜馬は身を任せる。
「ん、ンッ、ぐ——んむっ⁉︎」
 びくりと身体が跳ね——弁慶の左手が腰をつかまえる。右手は胸を撫でている。
「んっんっ、あっ」
「すっかり乳首もいやらしくなってよお」
 はあ、と熱い息を吐くと、弁慶は竜馬の乳首に吸いついた。
「あぁっ!」
 しなやかな竜馬の身体が仰け反る。
「あっ、あっ、んあッ」
 ちゅぱちゅぱと音が鳴るたびに竜馬が喘ぐ。
「すげえ跳ね返してくる」
 勃っている乳首を面白そうに舌先でこねる。唾液でぬらつき濃い桃色に染まる先端は、先走りにまみれた亀頭と同じくらいに卑猥だった。
「さあて」
 弁慶の大きな手が、竜馬の身体を簡単にひっくり返す。四つん這いにさせ、尻を上げさせた。
「どうして欲しいかなぁ?」
 手早くローションを搾り出し、割れ目に塗りつける。
「んあっ……ン、んうっ」
 指がかすめると、竜馬のそこは期待にひくりと動いた。
「あ……あ、あ……ん、挿れて……早、く……ぅ」
 とろける瞳で竜馬がねだった。
「お前、そんな物欲しそうな顔、どこで覚えたんだよ」
 つぷりと中指を挿れる。
「はあんっ!」
「……なあ竜馬ぁ、気持ちいいだろ」
「あっ、んんんっ! いいっ!」
 弁慶がにんまりする。
「ほれ」
 太い指でゆっくり、優しくかき回す。
「あ゛あ゛っ! んひっ!」
「なあ、どうして欲しい?」
 動きを止めて訊く。
「あっ……ん、んうぅっ」
「なあ」
 きゅ、と押す。
「はぁっ!」
 そしてまた焦らす。何度か繰り返すと、もどかしそうに竜馬が腰を揺すった。弁慶は指を引く。
「あっ……」
 指が抜けていく感覚に、竜馬の身体がすがりつくようにくねる。
「いいのかぁ? 抜いちまうぞ」
「う、あぁ……や、あ」
「本当にいいのかなぁ」
 完全に抜ける直前で指をまた挿れる。
「——っ!」
 今まで、散々に撫でて気持ちよさを覚えさせた場所をくすぐる。
「あ゛あ゛あ゛っ! あっ!」
「今度こそ、抜いちまうぞ」
 言って引き抜いた。
「ふっ、うあ゛っ、あっ」
 竜馬は涎を垂らして身体を痙攣させていた。
「なあ隼人」
「……何だ」
「お前、竜馬に『挿れて』って言われてねえだろ」
「——」
 なあ、と普段は愛嬌のある瞳がきつく見据えてきた。隼人は舌打ちとともに目を逸らす。
「抜け駆けはよくねえぞぉ。本番は竜馬がいいって言ってからだって、ふたりで決めただろ」
 弁慶は穴の周りをやわやわと押しながら、再び中指を第一関節まで挿れ、くすぐる。
「あ、ああ……はうっ……」
 切ない声があがる。
「二本目ぇ」
 人差し指をくぷりと挿れる。ねじりながら縁の裏側をじっとりしつこく撫でる。
「ンあッ!」
 竜馬の顎が上がる。
「べんけ、え、の、ゆび……っ、は、あっ、ゆび、がぁ……っ」
 涙目でうわ言のように零す。
「あっ、あっ、あっ」
 一向に奥を満たしてくれない指を、尻を振って飲み込もうとする。
「んっ、んあっ、あっあっ」
「竜馬ぁ、つらそうだぞ。どうして欲しい?」
 弁慶が竜馬の尻を舐める。
「ふぅっ……ん、あっ、お、奥まで……い、挿れ……挿れて、欲しい……っ」
「へっへっへ」
 にんまりと弁慶が相好を崩す。隼人をちらりと見て、
「ほうら」
 指を押し込む。徐々に、だが確実にずぶずぶと竜馬の中に沈んでいく。
「あ゛っ、あ゛っ、挿入っ……て……っふ、うっ」
 指の侵入に合わせ、竜馬の腰が艶かしく揺れた。
「もっと……な、か……あっ」
「中?」
 ぬちゅりとかき回す。
「んひっ‼︎ あっ、あっ、もっ……とぉ……」
「もっと、何だ?」
「あ゛ッ……あ゛ぁッ、ぐちゅぐちゅに……かきま、わし、て……ぇッ」
 息も切れ切れに竜馬がねだる。
「ずいぶんとおねだり上手になったじゃねえか」
 にしし、と弁慶が笑う。
「男なら、期待に応えねえとな」
 言いながら、太い指で竜馬の中を犯す。
「あ゛はっ‼︎ あ、あっ!」
 弁慶の指が中を蹂躙するたびに竜馬は我を失ったように腰を動かし、快感を貪ろうとした。
「おい隼人、竜馬のやつ、これかなりドスケベだぜ」
 ぐひひ、と弁慶が嬉しそうに笑った。
「マラも突っ込んでねえのに、すんげえな」
 ぶちゅぶちゅと音を立てて責める。ローションが細かな泡を作り、とろりとした蜜のように溢れてくる。
「おらっ、竜馬」
「あ゛ッ! お゛あ゛ッ!」
 全身を震わせながら竜馬が見境なく喘ぎ出した。
「あ゛はっ! あ゛っ、ン゛ううッ!」
 尻を突き出し、弁慶に合わせて動き続ける。
「あああぁっ、いいッ! あんッ、あっ!」
「さすがに勘がいいな」
「——フン」
 ふたりの絡みをさも面白くなさそうに横目で見ていた隼人が竜馬の顎を持ち上げる。
 開いた口に舌をねじ込む。
「……ッ! んッ!」
 一瞬だけ逃げた舌は、すぐに快感に気づいて隼人を迎え入れた。初めての口づけが嘘のようだった。のみならず、自ら舌を伸ばしてはキスに溺れる。
「んっ、んっ……」
 尻穴からも口元からも淫らな音があがる。
「う、あ……っ」
 唇が離れると、恍惚とした顔で隼人を追いかける。
「はや……んッ! あっ……き、キスっ」
 舌を出してねだる。隼人がニタリと笑った。
「竜馬、もっと気持ちいいことしたくねえか」
「あ゛はッ、うっン、もっ……と……?」
「ああ」
「あんっ、あっあっ、し、した、い……」
「俺のコレを挿れたら、もっと気持ちいいぜ」
 ペニスを見せつける。
 竜馬が息を呑んだ。
「お前のナカをみっちり埋めて、弁慶の指より吸いついて、奥のほうまでほじって突いてやれるぞ」
 ねちっこく言いながら竜馬の頬を左手で優しくさする。竜馬の唇が物欲しそうに開いた。
「き、気持ち、いい? んっ、あ、はあっ」
「竜馬、俺の指だって奥まで届くだろ」
 弁慶が深く指を挿れる。
「あうっ——」
「竜馬」
 右頬に隼人のペニスがすりつけられる。
「ほら、俺のチンポは気持ちいいぞ。コレでえぐってやるよ」
 先走りが頬を濡らす。雄の匂いが竜馬を誘った。
「は、あっ……あっ、ンッ」
 竜馬は熱の浮いた瞳でペニスを見つめ、キスをした。
「い、挿れて……っ、あ゛ッ、はやと、のっ」
「俺の、何を?」
「あっ、ああっ、はやとの……っ、チンポ……っ」
 口づけて、舐める。隼人は満足そうにニイィ、と口の端を上げた。
「だとよ、弁慶。代われよ」
「ちぇっ、何だよ」
 文句を言いながらも、場所を代わる。
「じゃあよぉ、指で気持ちよくしたお礼に、俺のモノも舐めてくれよな」
 弁慶は勃起した赤黒い肉棒を竜馬の眼前に差し出した。あまりに隆々とした男根に、竜馬が少しだけためらう。だがすぐに舌先で触れる。
「お、おお……っ」
 ちろちろとぎこちなく舌が這う。唇でやんわりと挟み、控えめに吸う。
「何か、初々しくてたまんねえな」
 弁慶は竜馬の頭を撫でた。
「竜馬、先っちょも頼むよ」
「んう……」
 言われるがまま、竜馬は亀頭を口に含んだ。舌先を尖らせて口の中で鈴口をなぞる。
「おっほ!」
「スケベ坊主が、だらしねえツラしやがって」
 隼人が鼻でせせら笑う。
「竜馬、ほら、お望みのチンポだぜ」
 尻を鷲掴みにし、ぐぐ、と腰を進める。
「あっ、ぐっ——、ッッ!」
 全身にびりびりとした衝撃を感じ、思わず弁慶のペニスから口を離す。
「あっ! ああっ‼︎」
 指の感触とまったく違う、肉の塊が侵入してきた。竜馬の中に一分の隙間もないほどにぴったりとはまり込み、徐々に内側を食い破ってくる。
「くっ、は……は——あっ⁉︎」
「……イッたか?」
「——っ、ふっ、あ……ッ」
 身体のひくつきと表情でわかった。
「竜馬ぁ、お前、よっぽど欲しかったんだな。挿れただけでイクなんて」
 弁慶がキスをして、ゆるんだ口元をなぶった。
「は、ん゛ん……っ、ン」
「あー、隼人、竜馬のやつ、すっげえ気持ちよさそうにしてるぞ」
「ククッ、始まったばかりだぞ。へばんなよ」
 ぐっと腰を入れる。
「——っ‼︎」
「ほら、欲しかったんだろ」
「は、はやとのっ……チンポッ……! あ、あ、はあぁっ」
「奥まで挿れるぞ」
「ああっ、あっあっ」
 仰け反りながら全部飲み込む。
「す、すげ……え……ッ」
 目を閉じ、短く息を吐きながら形を感じる。さらに自ら腰を押しつけ、もっと深く咥え込もうとした。隼人は動かず、じっとその様を見つめる。
「おあっ」
 奥に、あたると身体が浮くような感覚をもたらすポイントがあった。
「ひ、あっあっ」
 竜馬の身体がびくつく。
「はっ……はふっ、あっ……ん、んっ」
 気持ちよさそうに肉棒を味わう。隼人は素早く腰を引き、打ちつけた。
「あ゛ッ‼︎」
 そのまま竜馬の腰を掴んでピストンに合わせて引き寄せる。
「——あ゛っ、だめっ! あ゛あ゛ッ!」
 言いながらも、悦びに涎を垂れ流しながら嬉しそうに喘ぐ。
「はやとのッ……ん゛ん゛ッ! あはぁッ! もっと、突いてぇ!」
「欲張りだな……!」
 応えるように、鋭く腰を突き入れる。
「はぁんッ! はや、とのっ……チンポッ! あ゛はッ……好きぃッ!」
「ヒヒッ、それはそれは」
 隼人は引き攣れた笑いを零し、さらに肉壺を突いた。
「あひっ、あ゛、あ゛っ、おあぁっ、あはぁっ——っ!」
 突き回されて臓腑から湧き上がる快感に本能のまま鳴く。
「イグッ‼︎ 奥ぅッ! あはッ——あ゛あ゛ッ」
 引き締まった肢体が大きく跳ねた。
「あ゛……あッ! ああッ‼︎」
「……イッてる最中に悪いがな、俺がまだだ」
「あっ……え、え……っ?」
 振り向こうとする前に、思いきり奥まで貫かれる。
「————ッ⁉︎」
 隼人のモノが敏感になり過ぎた竜馬の中を容赦なくえぐる。相手のことは一切も気にせず、ひたすら己の欲を吐き出すために動き続ける。それでも竜馬は快感の雄叫びをあげた。
「お゛、お゛あッ! ああぁッ!」
「くっ……イク……っ」
 やがて短く零し、隼人が達した。
「あっ、あっ、な、中……ッ!」
「く、ふ——りょう、ま……っ!」
 隼人の下肢が震える。がっちりと奥まではまり込んだペニスがずっと精液を注ぎ込んでいた。
「は、はや……とぉ……っ」
「ふ、ふうっ……、んっ」
 幾ばくか品のよい、切なげな声をあげながらもやはり雄である。射精が終わっても隼人は陰茎で白濁を内側にすり込んだ。
「あ……あ、あん……っ」
 竜馬はぴくつきながら、快感に酔う。
「ひ、あ……キモチ、イイ……はやと、の……」
 夢見心地だった。
「ああ……っ、あっあっ……」
「……なら、もっとイケよ」
「へ…………あ、あんッ!」
 もう一度突く。
「い、今……っ、イッて——あ、ああぁッ!」
 あっという間に硬さを取り戻した隼人の肉塊が竜馬を責める。
「ひぃッ! あッあッ!」
「竜馬ぁ」
「べ、べんけっ……あ、あッ!」
 乳首をいじられ、顔が上がったところでキスをされる。呼吸もままならぬ状態で、涎が溢れていく。
「ン……ぐ、んむ……ッ」
 舌が離れると、唾液が糸を引いた。
「キス、いいか?」
「うっ……あ、あんっ……」
 開きっぱなしの唇で、竜馬が頷く。
「き、キス、す、き……あぁ、ん!」
「いい子だ」
 その舌にむしゃぶりつく。強弱をつけて吸い、優しく舐め、煽る。竜馬は喘ぎを封じられ、くぐもった甘い鼻声をあげ続けた。
「竜馬……っ!」
 隼人が突き上げる。
「ンんんっ⁉︎」
 勢いで、もっと深く弁慶と口づけ合う。
 ふたりに挟まれ、粘膜と肉が交わる音で耳がいっぱいになる。竜馬の身体の中には快感しかなかった。ずうっと奥の、芯のほうから渾々こんこんと湧き出てくる。濃いその毒は瞬時に全身に回り、竜馬を搦めとって離さない。
 もう、絶対に抗えない。
「出す、ぞ……!」
「ン! ンんッ!」
 尻を掴まれ、乱暴に揺さぶられる。今はそれすらも竜馬に絶頂を与えた。
「ンんんッ‼︎」
 先に竜馬が達する。汗ばんだ身体が大きく跳ねて、唇が自由になった。
「う——っ」
 どれほど達しても変わらない——いや、ますます貪欲に吸い尽くそうとする竜馬の締めつけが隼人を襲う。
「う、うあっ……」
 たまらず吐精する。一度目と変わらぬ質量の精液を叩きつけられ、竜馬が鳴いた。
「はあっ! あ゛っ……あ、あ゛あっ……!」
 腸壁が細かく蠢いて、隼人の欲を啜りにかかる。
「あ、ひ、腹ン、な、か……っ」
 竜馬の意思とは無関係に下腹がのたうつ。
「ふ、ふうっ……ふあ、あ……っ」
 くたりと沈む。
 そのとき。
「竜馬、俺もいいか?」
 弁慶が許しを乞うてきた。
「あ……」
「ちょっとばかりキツいかもしんねえけど、これだけ慣らしたんだから、気持ちいいぞ」
 竜馬の顔に肉棒を押しつけた。
「こ……こ、れ……?」
 隆起を保ったままの肉茎を目にし、竜馬の瞳に一瞬だけ正気が戻る。不安そうに揺れる。舐めるのと挿れるのとでは違うことは理解していた。
「大丈夫だって。突っ込んだ女は、みんな泣きながら悦んでたぜ」
 弁慶はずり、と丸みを帯びた頬に昂りをこすりつける。
「ん……っ」
「気持ちよくなろうぜ」
 熱い弾力と鼻の奥を埋め尽くす雄の匂いに思わず目を細め、竜馬はペニスに舌を伸ばした。
「ン、は……ンむ……っ」
 ちゅ、と軽いリップ音が重ねられる。愛らしい音はやがてじゅぶ、と唾液と皮膚が接触する淫らな響きに変わった。拙さが余計に卑猥さを増長する。弁慶は腰を突き出しながら、竜馬の唇をペニスで撫でた。
「なあ、竜馬、お前のキスもいいが、挿れさせろよ」
「あ……ん、ん、はあっ……いい、ぜ……」
 次から次へと溢れる我慢汁を舌先ですくい、竜馬は弁慶を見上げた。生来の負けず嫌いの気質からか、もう不安さは消え、むしろ誘うような眼差しだった。
「——お前、たまんねえな」
 弁慶の目が鋭く尖った。

   †   †   †

 虚ろな瞳が天井を仰ぐ。
「……っ…………う、あぁぁ……っ」
 弁慶の太いペニスが竜馬の中に埋まっている。
「も……む、り……っ、う、ふっ……」
 竜馬は今にも電池が切れそうな玩具のようにか細く鳴いた。締まりのない口元からはだらしなく涎が垂れている。手足も重そうに投げ出され、微細に震えていた。
「少しずつなら、大丈夫だろ?」
 ゆっくりと弁慶が腰を引いて、押す。
「ひあ……っ、あ……あっあっ……あぁん……っ、や、あ」
 普段の竜馬からは想像もつかない、奥ゆかしく濡れた響きだった。
「……竜馬、お前すげえな」
 弁慶は感心しながら欲にまみれた腰で竜馬の中をつつく。
「ひっ…………ひ、あ、あぁっ」
 いやいやと首を振ろうとしているのか、頭が小さく揺れる。
「隼人ぉ、これ、思いきり突いたら確実にぶっ飛ぶよな」
 ああ、と答え、隼人は竜馬の背後につく。
「こいつなら大丈夫だとは思うが、ヤリ壊したいわけじゃないからな。手伝ってやるか」
 右腕を腰に回し、ゆっくり竜馬の身体を持ち上げる。
「あっ……ああっ」
 少しだけ浮いた身体をまた沈める。
「う……うあっ、あっ、あっ」
 繰り返しながら左手では乳首をつまみあげ、いじった。首筋に噛みつき、耳の裏を舐め上げる。きゅむ、と耳たぶを甘噛みすると、可愛らしく応えた。
「ふあッ——あ、あ゛ッ」
 びくりと身体が動けば、その分ペニスから中への刺激も与えられる。反射で穴も締まり、余計に肉の圧を感じてしまう。
「あぁあ……ッ」
 身をよじろうとするが、力なく敵わない。弁慶の肉棒はなおもじぶじぶと竜馬の中を侵蝕していく。
「も、いっぱい……腹ン、な、か……おかし、く……あ、あぁぁ……」
「ここか」
「ひぃッ」
 隼人が下腹を押す。竜馬の目が見開かれ、喉の奥から奇妙な声が出た。
「やっ……ひ、ひっ」
 腹をさすられ、竜馬が身悶える。
「やめ……っ、ひあぁっ、あっ、あっ」
 ペニスの先からぼたぼたと精液が溢れ落ちてきた。
「お、出ちゃったか」
 弁慶が嬉しそうに肉茎で中をこすり上げた。
「あ゛ッ……ひぐっ、う゛うッ」
 また竜馬のペニスから白濁が零れる。
「お゛…………あ゛、あ゛……っ」
「すげえエロいな。竜馬、お前最高だ」
 弁慶がゆるい速度で、だが休まず抽挿を始める。
「っ! や、あぁっ——あ゛っ」
 巨体に阻まれて脚を閉じられない。純粋で残酷な好奇心を持つ子供につかまったカエルのように、股を広げられて好きにされる。
「あっ、あっ! あ゛あ゛ッ!」
 リズムをつけて竜馬を押し開く。
「お゛、お゛……あ゛」
 そのうち竜馬の腰がうねり出した。そこだけ別の生き物のように、ぐにぐにと弁慶を迎え入れては貪る。
「ふっ…………ぐ、あ゛っ、あ゛……んっ」
「竜馬ぁ、無理って言ってた割には、ちゃんと感じてるみたいだな」
「ゔあ——あ、あ、ふ、あ゛っ」
「お前、さっきからずっと中でイッてるだろ」
「あ゛、あ゛……っ、あ、ひ……っ」
「これなら奥も大丈夫だな。けど最初だからな、ちゃんと手加減してやるよ」
 弁慶の動きが速くなる——が、奥までは突き入れず、浅いところに留める。
「ふあっ! あ゛ッ! ダメッ」
 なだれ込む刺激に竜馬が音をあげる。必死に拳で弁慶の腹を殴ろうともがく。
「くっ——あ゛ッ、あ゛ッ!」
「竜馬、楽しめよ」
 隼人が身体を押さえつける。
「やっ、やめっ、ひ、ひいっ——!」
 そうして突かれ続け、竜馬の口からまともな言葉は出なくなった。「だめ」の一言すらない。
「ああっ……もう、そろそろだ……っ」
 吐息とともに、弁慶のペニスが竜馬をえぐる。
「はあっ——あっ」
 巨根を抜き、素早く手でしごく。射精する寸前で再び竜馬の中に挿入る。
「出すぞ……っ!」
「や、あ゛……ッ⁉︎」
 形のいい小さな尻の中に、大量の精液がぶちまけられた。
「あ゛! お、お……あ…………っひ……」
 竜馬はあらぬ視点でどこかをたゆたっている。ふたりの欲を飲み込んだ肢体がいやらしく震える様を、弁慶は満足そうに見下ろした。

   †   †   †

 目蓋を開けると、隼人の相貌が真上にあった。角度がいつもと違う。
 だが隼人には違いない。竜馬は眉をしかめる。
「——」
 あンだ、てめえ。
 そう言おうとしたが声が出ない。
「あ゛……う」
 喉が痛かった。
「気がついたか」
 目が合う。
「……おめえ、何で、服」
 ようやく出た声はかすれていた。
「……ン?」
 裸の隼人に膝枕されているとやっとわかる。
「へ……?」
 自分の身体に視線を下ろすと、何も身につけていなかった。足指の向こうに弁慶が見える。彼もまた裸で——。
「……あ、あ」
 今まで何をしていたか、思い出す。
「てめ……あ゛っ」
 飛び起きようとしたが、身体がすんなりとついてこない。全身が重い。
「ぐっ……あっ……!」
 ついぞ見ないようなしかめ面。目にした隼人がニヤつく。
「な……な、に笑ってやが——んっ」
 鈍い疼痛に歯を食いしばった。
「クッソ……け、ケツが」
「だいぶほぐれたろ」
 しれっと隼人が言う。
「はッ⁉︎ ゔ、あ゛っ……」
 自分の声が響く。
「くっ……ふ、く、そ……」
「自分でケツ穴いじくって、我慢できずに『挿れて』とねだったくせに、被害者面は感心できないな」
 竜馬の額にキスをする。
「——!」
 全身が強張る。
 次の瞬間、竜馬は拳を放っていた。
 しかし普段のキレとは程遠く、隼人は上体をわずかに傾ぐだけで何なくかわしてみせる。
「クッソ……!」
 今度は足元の弁慶目掛けて蹴りを繰り出す。
 だがそれも「虚しく」と表現するしかなく、ぺちりと情けない音で終わった。
「竜馬ぁ、もっと本気出していいぞぉ」
 弁慶がにかにかと笑う。
「お前なりの愛情の表現か」
 隼人も笑う。
「な、に……気味悪ぃコト言ってンだよ!」
 なおも殴りかかろうとすると、弁慶に足首を掴まれた。
「は、放せ!」
「そんなに股おっ広げてよぉ、まだシ足りないか」
 ニヤニヤしながらふくらはぎを撫で、さらに腿の裏側に手を伸ばす。
「ひっ」
 竜馬は慌てて脚を引っ込めた。
「こんの……スケコマシ野郎どもがぁっ!」
 なじってタオルケットを手に取る。引っ張って股間を隠そうとすると空になったローションの容器が二本、ベッドから転がり落ちていった。
「うげ……」
 あれがなくなるまで、尻を弄ばれたということだ。
「クソッ——ああ、ちきしょうめが!」
 見回すがパンツがない。ふたりの脱ぎ散らかされた衣服の下になっているのかもしれない。けれどもこの格好でウロウロしたくもなかった。
「クソッ。どうせヤリ捨てるクセに」
 下着を見つけられない焦りと、流された挙句に感じてしまった自分への腹立ち紛れに文句が衝いて出た。
「そんなことねえぞ」
 後ろから弁慶が抱きつく。
「おあっ、やめっ、てめえ!」
 すかさず隼人がにじり寄り、今度は頬にキスをした。
「捨てたりしないさ」
「——」
 じっと瞳を覗き込まれる。一瞬、息を呑む。
 その隙に今度は唇を奪われた。
「おっ、おめえ! 態度が全然違うじゃねえか!」
 ニヤつき、偉そうに見下ろしながら竜馬をねじ伏せにかかる姿とはまったく違う。
「俺たちはお前が可愛くて仕方ないんだ」
「かっ、かっ、可愛いぃぃっ⁉︎」
 元テロリストの口から出た甘い言葉に困惑する。
「だらか言ったろ。隼人は『ひねくれてっから』って。一発ヤッてスッキリ、素直になったんだろ」
 弁慶がさらに愛の告白をした。
「好きだぜ、竜馬。大事にすっからよぉ」
 再び、竜馬が固まる。
「お、俺らの真剣な愛が伝わったか」
「……へ」
「愛だ、愛」
 弁慶は左の耳たぶを口に含んで軽く吸う。
「んふっ」
「すっかり俺らの身体に馴染んだじゃねえか」
「〜〜〜〜ッ!」
 逃げ出したくても、男ふたりに前後を挟まれて動けない。隼人の指が竜馬の乳首をつまむ。
「ばっ……!」
 必死に振り払う。
「俺にっ、許可なしで触るンじゃねえ!」
「許可? ふ、ふははっ」
 きょとんとし、それから隼人は大口を開けて笑った。
「許可が出たらいいのかよ」
 弁慶は竜馬の脇腹をくすぐる。
「ひっ、おい、やめっ」
「じゃあ、許可とやらを出してくれよぅ」
「ンなモン出して——あっ」
 竜馬が硬直する。その後でぷるぷると身を震わせた。
「あ、あっ、くそっ……」
 きゅっと目を瞑り、何かをこらえている。
「中に出したモノが下りてきたんだろ」
 隼人が耳に口づけて言うと、竜馬の顔が羞恥に歪んだ。
「あー、こればっかりは、なあ」
 弁慶が竜馬を解放し、箱ティッシュを掴む。
「俺ら出すばっかだからな、勘弁」
「かき出してやろうか」
 いやらしく隼人の人差し指がくねる。その申し出は涙が浮かんだ目で跳ねつけた。
「……くっそ」
 箱ティッシュをもぎ取る。
「いい加減、出てけよ」
「もう少しいいじゃねえか。愛を語らおうぜ」
「どうせヤラせろばっかだろ。ドスケベ坊主」
「そんなことねえよ。何なら、竜馬の可愛いところ全部言ってやろうか」
「ンなっ、やめろバカ」
「そういう照れるところも可愛いんだって」
 経験豊富なだけあって、弁慶はするすると言葉を紡いだ。
「せっかく深い仲になったんだ。これからも可愛がってやるよ」
 隼人がプロポーズよろしく告げる。
「いつでも、呼べば来てやる」
 手慣れた仕種で竜馬の左手を取り、薬指に口づけた。
「その日の気分で相手を選べるんだ。合理的だろう?」
「何なら、今日みてえに三人でってのもいいぜ」
 後を次いで弁慶がうなじにキスをした。
「お前が満足するまでとことんヤッてやるよ。次はもっと奥まで挿れてやる」
「————」
 あまりのことに、竜馬は絶句したまま。
「へっへっへ、俺のモノがねえと寂しくて泣いちまうような身体にしてやるよ」
「弁慶のより、俺のほうが好みだろ?」
「俺は隼人より長持ちするぞ」
「遅漏より、一緒にイケるほうがいいだろ? なぁ、竜馬」
 睦言と呼べやしないあけすけな言葉に、竜馬の表情が次第に険しくなっていく。
「……に、しろ」
「ん?」
 弁慶が耳をそばだてる。
「いい加減に、しろ」
 地の底から湧き出るような、低い声。
「竜馬?」
「てめえらっ、は、離れろぉッ‼︎」
 突然、爆発したように竜馬の叫び声が部屋に響いた。猛烈な勢いに驚いたのか、ふたりが頭を反らして黙る。
「遠慮なしに突っ込みやがって!」
 殺気すら滲ませて鋭く睨む。通常の人間ならば恐怖で卒倒しそうな迫力だった。しかし、これはふたりには通用しない。怯むどころか、揃って楽しそうに笑みを浮かべる。
「な、何笑ってやがる! ふざけンなよっ!」
「ふざけてなんかいない」
「好きだって言っただろぉ」
 右頬に隼人の、左頬に弁慶の唇が近づき、キスで挟まれる。
「やっ、やめろ!」
 なおも迫るふたりを懸命に押し戻す。
「ああっ、もうクソッ! ちったあ俺のケツのことも考えやがれっ‼︎」
 竜馬は顔を真っ赤にして怒鳴った。
「…………」
 肩で息をする竜馬を見つめ、それから隼人と弁慶は顔を見合わせる。ニタリ、と同じように唇の端が上がった。
「いつでも考えているさ」
「そうそう、いつでもな」
 ふたりの手が伸びる。竜馬の腰に触れ、するりと下に進む。
「〜〜ッ⁉︎」
 竜馬の尻を片側ずつ、ふたつの手のひらが撫でくり回した。
「ちっげえよ! そういう意味じゃねえよ‼︎」
 再び、竜馬が叫んだ。