2026/8/2ピクスクで開催のネオゲ隼號webオンリー【8月5日は隼號の日!4】への参加作品です。
本編終了後、はやご同棲中。いわゆる媚薬ネタ。
敷島博士が隼人用に調合した栄養ドリンクを誤って飲んじゃった號くん。隼人より小さい体格のため、効果がありすぎて全身が過敏状態になってしまう。どうにも収まらなくなってしまった號くんを、隼人がよしよししてあげるお話。細かいことは抜きで楽しんでもらえたら嬉しいです。約13,000文字。pixivにも同じものをあげています。
・はじめのほうは勝手に興奮状態になって射精が続くため、苦しそうな號くんの描写があります。隼人が吐かせようと口に指を突っ込むので、ちょっとえづきます(吐く描写はなし)。
・射精のしすぎで吐精できなくなったいわゆる空イキの状態を「空撃ち」と表現しています。
・隼人は純粋に號くんを元通りにしてあげたいと思って行動しますが、それはそれとして興奮はするし、最終的に號くんにねだられ、挿入に至ります。
・ちゃんとふたりとも気持ちよくなってラブラブで終わります。
・「Relentless」は「容赦のない」とか「絶え間ない」とか「執拗な」という意味らしいです。『Relentless Love』で「尽き果てぬ愛」とか「終わりのない愛」「永遠に続く情熱的な愛」みたいなイメージです。「Endless」よりももっと強く激しいっぽいのでタイトルに使いました。
◆◆◆
すげー荷物、と言いながら、出迎えた號が手提げ袋を受け取る。
「会議って言ってたよな。結婚式にでも行ったのかよ」
まるで引き出物入れのような幅の広い、大きな袋を覗き込む。
「会議のあとで交流会があったんだ。そこで何だかあれこれ持たされてしまってな。底に手をつけていない弁当と、オードブルが入っている」
隼人の言葉に、號の目が輝く。
「ローストビーフある?」
「ああ。ほかにもお前の好きそうなものが入っている。好きなだけ食え」
「おほー、楽しみ! 小難しい会議パスして、うまいモンにありつけんの最っ高」
満面の笑みを浮かべた號につられ、隼人も笑う。
「あ、そのジャケットも。かけとく」
「すまない」
隼人は腕にかけていたジャケットを手渡す。すぐに號は違和感に気づいてジャケットを持ち上げた。
「何だ?」
「ああ、ポケットに菓子が」
お裾分けだと渡され、うっかり入れたままになっていた。
「それも食べていいぞ」
「どれどれ……、お、クッキー、チョコ、チョコ、マカロン……やった!」
ポケットを覗き込んだ號の声が弾んだ。
「神さん、俺に甘くて最高。んじゃあとでリビング集合な」
そう言って、意気揚々と引き揚げていく。隼人は目を細めてその背中を見送った。
一緒に暮らし始めて意外だったのは、號がかなり几帳面だったことだ。買ってきたものはすぐに広げてしかるべきところに仕舞うし、
「それ、シワになるだろ」
と、隼人がソファに無造作に置いたジャケットを回収してはハンガーにかける。洗面所の手拭きのタオルもまめに取り替えるし、廊下の隅もいつも綺麗だった。
「意外だな」
もう少し大雑把かと思っていた。そう声をかけると、
「だって、こっちのほうが絶対いいだろ。俺、身体動かすの好きだし。っていうか、神さんが気にしなさすぎ。まあ、厄介な仕事ばっか抱えてたらそうなるけどな」
と、笑ったのだった。今もきっと、隼人のジャケットをハンガーにかけ、ブラシで手入れをしてくれているのだろう。明日は休みだし、號の行きたいところに出掛けて、それからケーキでも買ってきて食べようか、などと考え——やはり號には甘くなってしまうなと苦笑しながら洗面所に向かった。
手を洗い、着替えに戻る途中だった。ガタン、と聞こえた。ネクタイをほどく手を止める。寝室からだ。
「……」
ハンガーでも落としたのだろうか。そうだろう、と思い直してネクタイを外そうとしたときだった。
「——」
またしてもガタン、と聞こえた。今度はもっと大きい——何かが倒れた音だ。
「號!」
寝室に飛び込む。倒れたサイドテーブルと床に散らばったチョコレートの包み、それと。
「號! どうした、大丈夫か!」
「じ、じん……さ……」
ベッドの向こう側、床にうずくまった號が顔を上げる。額と鼻の頭に汗の粒が浮いていた。両手で腹部を押さえている。
「號⁉︎」
「……っ、ポッケの、チョコ……食って……あのジュース……っ」
「ジュースだと」
號は震える指で床を指す。サイドテーブルの向こう側に小瓶が転がっていた。
「それ、飲んだ、ら……胃がジリジリして……っ」
「——これは」
隼人は空き瓶を手に取る。敷島博士が「これは隼人君専用の栄養ドリンクじゃあ」と渡してきたものだった。毒物ではないにしろ、何がどう仕込まれているのかわかったものではない。断ったはずだったが、目を離した隙に土産袋の中に入れられたらしかった。
「しまった」
隼人は一瞬、天を仰いだ。だがすぐに、
「號、吐き出せ」
と、號の身体に手をかけた。
「——ッ!」
びくん、と號の肩が跳ねる。隼人は思わず手を離す。
「……號?」
「……ッ、な、なんでも、ねえ」
號は苦しそうに顔をしかめる。
「そうか、なら——」
隼人は號の肩を抱き寄せる。同じように號の身体が反応したが、構わず口の中に指を突っ込んだ。
「————ッ⁉︎」
「ここでいい、吐いてしまえ」
「う、ご……っ」
「號」
右手で背中をさすった瞬間だった。
「ん゛……ッ‼︎」
號が震える。その震え方はまるで。
「——號」
慌てて口の中から指を引く。
「ん゛っ、んあ、あっ……」
苦悶の呻きではなく、快感と解放の喘ぎだった。
「……っう、あ」
身体がまだ小刻みに震えている。
「待っていろ」
隼人はキッチンに急ぐ。ペットボトルを二本、引っ掴んで駆け戻る。
「號、水だ。飲め」
吐き出せないなら、とにかく薄めるしかない。キャップを外して差し出す。號は覚束ない手で受け取ろうとする。しかしうまく力が入らないようだった。
「触るぞ」
「んっ」
手を取り、ボトルを握らせる。口元に近づけてやる。
「號、少しでもいい、飲むんだ」
「あっ、あ、ん……っ」
片手で補助をし、空いた手で携帯を取り出す。短縮ダイヤルを操作し——ようやく十五コール目で敷島博士が応答した。
「博士、例の栄養ドリンク、成分は⁉︎」
『ヒッヒ、よう効くじゃろ。即効性もバッチリ、眠気もあっという間に吹き飛んで、徹夜も何のそのじゃあ!』
「まさか、ヒ◯ポンとかじゃないでしょうね? 解毒剤は!」
『おお、ヒ◯ポン! 懐かしいわい。昔はよく戦場で配られていたものじゃ。それを……』
「博士!」
『お? ああ、そうじゃった。ヒ○ポンだの、そういった類は入ってないわい。それに毒ではないからのう、解毒剤はない。時間が経てば自然に分解されて排出される』
「博士、號が間違えて飲んだ」
埒があかない。ストレートに助けを求める。
『號が! ありゃあ〜』
「発汗と胃痛、それと肌の感覚が鋭敏になっているようだ」
『あ〜、まあ、號の身体じゃ仕方がないのう』
「それはどういう——」
『ワシはお前さん用だと言ったじゃろ。お前さんの体格、体重、代謝の加減に合わせて作ったんじゃ。それを號が飲んだらどうなる?』
隼人よりひと回りは小さい身体、若くて代謝が活発な年齢。
『そうじゃの、だいたいお前さんより二倍弱、効果が強く出るじゃろな』
號を見る。頬が紅潮して、汗が伝う。呼吸が荒く、ひどく苦しそうだった。水を飲ませようとしてもうまく飲み込めず、口元から零れていってしまう。いくら効果が二倍弱といっても、果たしてここまでになるだろうか。
「博士」
「何じゃ」
「チョコを一緒に食べたらどうなります?」
『——チョコ』
声のトーンが変わる。隼人は眉をひそめた。
「ええ、チョコをひとかけら」
『そりゃあ……もう少し効果が強く出るじゃろうなあ』
「どういうことです」
『チョコレートにはテオブロミンという成分が入っておってな。単体ではそこまで強い覚醒作用などはない。ただ血管拡張作用があってじゃな、それがあのドリンクの成分と合わさると——』
ううん、と何かを考えているような唸りが聞こえてきた。
『まあ、興奮剤というか、一種の媚薬のような効果が現れる』
「そう、ですか」
『水を飲ませるしかないじゃろな。代謝はより上がっているはずじゃから、大量に水を摂れば分解は早いじゃろ。とにかく汗なり小便なりで出してやるしかない。なあに、死にゃあせん』
「——わかりました」
もうそれしかない。隼人は携帯を切り、腕まくりをする。
「號、我慢しろ」
言うなり、ペットボトルをあおる。
「……っ、な……に……?」
號が目元を歪め、隼人を見る——顎を掴み、口づける。
「…………ッ!」
びく、と跳ねる號をベッドフレームとの間に挟む。水を流し込むと、ようやくひと口、號の中に滑り落ちていった。もうひと口、含んで飲ませる。
「——っ、っん‼︎」
また、號の身体が硬直し、震えた。何てことだ、と胸の中で呟き、隼人は口移しで水を飲ませ続ける。
「號、しっかりしろ」
500mlのペットボトル一本が空になる。零れてしまった分はあるが、ひとまず半分は飲ませられたはずだった。これで幾分か楽になってくれれば、と汗が流れ落ちる額を撫でてやる。
しかし——。
「んうっ」
それすらも感じるようで、號は眉根を寄せ、しどけなく唇を開いた。
「あ、は……っ、あ」
Tシャツは汗でぐっしょりと濡れ、元の生地の色が残っている箇所はなかった。このままにしておけるわけもない。
「……脱がすぞ」
シャツの裾を引っ張る。指先が腹に触れて、號がまた喘いだ。
服を脱がせている間、號は幾度も身体をねじって逃れようとした。けれどもベッドフレームと隼人に阻まれ、自身も布地が肌をこするたびに生まれる刺激に動けず、結局は小刻みに震えながら裸に剥かれた。
隼人が號をベッドに横たえる。
下着の中は幾度も射精したせいで汚れていた。號の下腹も内腿も、汗とは違う体液で濡れている。そして未だ限界まで張り詰めている號のそこからは、とめどなくカウパー液が溢れ出ていた。
「う……っ、く」
號がシーツを握り締め、堪える。亀頭は、ともすれば痛みを伴うだろうほどに膨らんでいた。
隼人は二本目の水を開ける。再び口移しで號に飲ませる。そのたびに號は悶えた。
「じん……っ、さ……っ、あっ、そ、それ、や……っ、んあっ」
「どうした」
「そ、それぇ……っ、く、あ、当た……て」
「それ?」
ほどきかけ、そのままになっていたネクタイの剣先が、覆いかぶさるたびに號の肌をくすぐっていた。
「あ……、ひっ」
隼人が身体を揺らした瞬間、ネクタイが號のペニスを撫でる。反射で號の腰が浮き上がり、亀頭が布地にこすりつけられる形になった。
「あ——あっ」
號がぎゅっと目を瞑る。溢れ出した白濁が、隼人のネクタイに絡みついた。
「ひう……っ、あっ、あっ——わ、わり……ぃ……っ」
腰がかくかくと動く。生理現象を止められるはずもなく、屹立した竿を伝って精液が流れ落ちていく。
「も、や、だ……っ」
けれども身体は欲を吐き出したくてたまらないようで、號の下肢は次にこすりつける先を探してうねっていた。
「號」
隼人はネクタイを外す。もう到底、自然には収まらないだろう。どうにかして発散させ、静める方向に持っていくしかない。
「お前が飲んだのは、敷島博士が作った俺用の栄養剤——要は精力剤だ。俺より身体が小さいから、効き目が強く出ている」
「こ、これっ……どうす、りゃ……っ」
「自分でこすれるか」
「……っ、じ、じぶん、でっ……んあっ!」
ぎこちなく竿に触れ、指を上下させる。だがひとこすりだけが限界だった。
「……駄目か」
「ふう……っ、うっ……」
「號、痛かったら言え」
「う……、あ——ああッ⁉︎」
隼人の大きな手が、號のペニスを包み込む。軽い力だったにもかかわらず、三往復したところで號が射精した。
「まだいけるか」
「んあッ、あッ、ああッ!」
否も応も答えられる状態ではない。號は腿をぱかりと広げ、なされるがままだった。絶え間なく襲ってくる波に溺れないよう、必死でシーツを握り締める。全身の筋肉が突っ張って——それでも隼人の手が与える快感に引きずられ、浮いた腰が動き続けていた。
それから二度、達する。さすがに射精の量と勢いは衰え、わずかな白濁がとろりと隼人の手に垂れるだけになった。
それでも。
「あ゛ッ、やだ……っ、いく、また——イクッ!」
號の腰が痙攣する。
しかし、白いものは出てこなかった。
「〜〜〜〜ッ」
尿道口が開いている。確かに身体は射精の態勢だった。
「——空撃ちか」
鈴口に溜まったカウパー液が射精の気配に押し上げられて、ぷく、と小さく泡立つ。だがそれだけだった。號の中は空っぽになっていた。
「ひ、うっ……」
號の青い目から、ぼろっと涙が零れる。
「じ、んっ……さ……っ」
「號」
「まだ……っ、イキてえ……っのに、ふ、う……っ」
號のペニスは充血し、亀頭は真っ赤になっていた。
「ちんこ……い、いて、ぇ……っ」
「わかった」
隼人は號を抱き起こす。
「なら、別の方法を考えよう」
膝の上に乗せ、抱きしめる。號が喘ぎと呻きが混じった声をあげる。だが隼人は離さなかった。
「ど、どうし、よ……っ、う、あっ……お、おれ、ず……とこの、まま……っ」
「大丈夫だ」
「だ……て、あんな、に出した……のにっ、ふっ、ぐ……っ」
「號」
「こんなの……っ」
「號!」
隼人は腕に力を込める。
「大丈夫だ。すぐによくなる。元通りになるから」
「う……っ」
號が震える手でしがみつく。その身体を——背中を優しく撫でてやる。
「……っく、う」
「これは、痛むか」
「ん……っ」
號は小さく首を横に振る。
「だ、だいじょ、ぶ……っ」
「そうか」
わずかではあったが安堵が芽生え、隼人は小さく息を吐き出した。
その微かな吐息でさえも、號の肌を刺激する。
「ん……っ」
そろ、と隼人の指が動く。
「ん、あっ」
隼人は指を離し——再び肌を撫でる。
「あっ……、あ、き、きもち、い……っ」
「そうか」
「——っ、んっ」
隼人は汗ばんで熱くなった首筋にキスをする。少しずつ唇を滑らせながら、耳元に寄せる。
「號」
「ひあっ!」
「……號、力を抜くんだ」
「っあ、あっ」
號、とささやきながら耳の縁に口づける。同時に、手のひらでゆっくり背中と腰をさする。號が、内側からじくじくと溢れてくる快感に悶え始める。
「ふ、う……っ、う、あ……っ、あ」
「號、俺のことだけ考えろ。俺に集中しろ」
「んっ、じ、じん、さんの」
「ああ」
「んっ——」
號の瞳が隼人に向けられる。隼人はその視線をつかまえて——唇に触れる。首筋よりも熱を持った咥内に侵入して、その粘膜を舌で愛撫する。
「んっ——ん、ぐ……」
號の指先が隼人のシャツを引っかく。だがそれは抜け出そうともがくためではなく、ひとり先に流されてしまわぬために、隼人にしがみつくような仕種だった。
「んうっ」
唾液が溢れ、號の肌に伝う。隼人は舌先でその雫を掬い、また口づける。次第に號の身体から強張りが消えていく。はじめの、強制的に電流を流されたような反応とは違う。あれでは號にいくら体力があっても効能が薄れるまでは保たないし、射精が正常にできなくなった身体では酷だ。別の方法で極限まで昂った興奮を逃してやるしかない。
顎のラインに唇を這わせ、首筋を舐める。耳たぶを吸って、耳介の凹凸を舌先でなぞる。
「んっ……あ、あ、んあっ」
號の唇から、自然な甘い響きが零れてくる。内側から押し上げられるように、身体がひくつく。その腰を指の腹で撫でると、背中と顎が反った。
「ふあ……っ、あっ、あっ」
抱きしめ、右の耳を責める。息を吹きかけ、わざと唾液を含んで耳の縁を喰んだ。
くちゅくちゅと號の耳に水音が入り込む。
「んあっ、あ、あ、あっ」
號のひくつきの感覚が短くなる。隼人は右手を前に回し——號の胸を撫で上げた。
「あッ‼︎」
きゅうっと號の眉根が寄る。突き上げられるように、號が小さく跳ねた。
「あ——あっ、あぁっ……!」
抱きしめる腕に、伝わってくる。射精のときとはまた異なる反応だった。
「ああ……っ、ん、あっ」
薄く目を開け、恍惚の表情で號が震える。隼人は興奮で赤さを増した號の唇を吸った。
耳、首筋、胸——普段から感じやすいところはもちろん、内腿に膝の裏、足指の股の部分と、そこだけでは足りないだろう場所への刺激でも、號は達した。一度ドライで達してしまえば、落ち着くまでには時間がかかる。隼人はその猶予を与えない。いつもより敏感になっている號の身体は、まさしく隅の隅に至るまで、快感を拾うひとつの器官となっていた。
「うあ……っ、あっ……」
絶え間なく高みに押し上げられる。肉の中心に快楽の元が塊となって棲みついている。そこから無数の触手が伸びて號の内側に吸いつき、舐め回しているようだった。
「苦しいか」
「う、ううん……」
乱暴に引きずり回され、強制的に射精させられるのとは違う。隼人に触れられている事実と感触が織り混ざり、號の中で倖せという名の感情が膨らんでいく。
それは自然と、もうひとつの欲求をもたらした。
「んっ、あっ!」
乳首を舌先で優しくなぞられ、吸われ、號が達する。高みの頂でしばらく揺蕩ったあと、くたりとベッドに沈む。隼人がその頬をあやすように撫でたときだった。
「……じん、さ……」
涙の跡がついた顔で、號が見上げる。
「どうした」
「じん……さん……」
か細い声で呼ぶ。ふらふらと揺れる手を伸ばす。
隼人は己に伸ばされた手を掴む。
「ここにいる」
號の手のひらを、自分の頬に押し当てる。
「號」
掌の中心に、口づけを与える。
「あ……っ、ん……」
「號」
ちゅ、とリップ音が鳴る。號の五指が歓びを奏でるように動いた。
「……じんさ、ん」
號の目が切なげに細められた。
「…………」
唇が微かに言葉を紡ぐ。
「何だ、號」
隼人が顔を近づける。体重の移動に合わせ、ベッドがキシ、と甘い音を立てた。
「號?」
その唇が、また「じんさん」と動く。
「どうして欲しい?」
訊くと、號は唇を閉じる。しかし隼人の慈しむような眼差しに誘われ、再び口を開いた。
「……なか……中の……ほうも」
「中?」
「ん……、中、か、かきまぜて……」
ささやいたあとで、湧き上がる羞恥に攫われるように目を伏せた。火照った肌がさらに上気し、もっと熱を持つ。
「號……」
隼人の右手が號の下腹に触れる。
「ここの中か」
「……っ、ん」
答えの代わりに、きゅっと腹の筋肉が引き締まった。
「わかった」
隼人は微笑み、汗を含んだ號の髪の毛をくしゃりと撫でた。
ベッドサイドの引き出しを開け、ローションを取り出す。慣れた手つきでそれを指にまとわせると、號の腿を押し広げた。
「あ……っ」
予感に、號のそこがひくつく。隼人はすぼまりの表面を指の腹で撫でた。
「んっ……」
號の腰が浮く。尻がわずかに揺れて、隼人の指から逃げる——すぐに捕まって、柔い愛撫を受ける。
「……っぁ、あ……」
號の眉が開き、あっという間に表情がふやけていく。薄く開いた目蓋の奥の瞳はとろけていた。
「ふ……、あ……あ、あ」
號の腰がうねる。早く刺激を受け入れたくて、自ら隼人の指にそこをこすりつける。
「あ……っ、あ……っ」
ひくひくと口がわななく。隼人に愛される感覚を思い出して、號の身体は勝手に昇り始めていた。
「あ、あ、あっ……あぁん!」
隼人の中指が挿入され——それだけで號は達してしまった。
「はあっ——あっ、あっ!」
収縮した肉が指を締めつける。中に収まる前に侵入を阻まれたローションが、ぽたぽたとシーツに落ちていった。
隼人はローションのボトルを握り、號の肌に垂らす。
「ひあ……っ」
指を抜き、再び挿入する。くちゅり、という水音とともに、もう少し深く。
「あ゛……っ!」
號の腰が跳ねる。今度はそのまま、指を沈めていく。
「あ゛ッ、んあ……ッ」
反射的に號が腰をねじる。けれども指は止まらない。それだけではなく、中の粘膜をこすり出した。號が鳴き声をあげる。
「ひあッ! あ、あ゛ッ」
必死にシーツにしがみつく。手の甲にも腕にも筋が浮き上がる。腰と一緒に足の親指も反って、全身で隼人の指を受けとめていることを伝えてきた。
隼人の指が根元まで埋まる。熱く、ぐずぐずになっている肉をゆっくりかき混ぜる。すでに柔く崩れ落ちそうになっている號の中は、その愛撫でより熱く熟んでいった。
指をもう一本、増やす。中で動かすたびに、號の下腹が操られるようにびくついた。
「ゔ……っ、ふ、ふ、う……っ!」
とうに限界を飛び越えているのに、號の肉体はもっと快楽を貪ろうと蠢いていた。
「……號」
「んあっ」
「……號、どうしたい?」
指をそっと引き、また優しく押し込む。開きっぱなしの號の唇から甘い呻きが漏れ出る。それは號の汗と精液の匂いと混じって、隼人の全身に絡みついた。
ごく、と生唾を飲む。何てことだ、と幾度目かの科白を胸の中で呟く。はじめは號の身に降りかかった事態に。今は——號の痴態に理性がすり切れそうな己に向かって。
苦しそうな號を早く何とかしてやりたい。その一心だったはずなのに、ずくずくと疼いて静まりそうもない身体の中心に意識を持っていかれそうになっている。指にまとわりつき、吸いついてくるこの號の肉の中に挿入ることができたら——と。
不甲斐ない、と思いながらも、
「號」
と、その耳をくすぐるような声を出して感覚を煽ってやる。狡い、と自覚しながらも、
「どうする?」
と、指を揺らす。號が首を小さく横に振って顔をくしゃりとしかめた。絶頂を必死で堪えている。
「——號」
ずぷ、と指を沈める。
「〜〜〜〜ッ‼︎」
声をあげる間もなく、號はその肢体を大きく震わせた。
口移しで水を飲ませてやる。
は、と切ない喘ぎを零して、號が薄目を開けた。
「……すまない。やりすぎた」
隼人は溜息とともに、號の額を撫でる。號の青い瞳は昂り切った血の色が透けて、ほのかに紫がかっていた。
「……じ……さ……」
號の顎がわずかに上がる。
「水か」
隼人はすぐに察してもうひと口、水を与える。
こくり、と喉が鳴る。隼人の唇が離れる——縋るように、號の唇が追いかけてきた。
「ご——」
まだそんな力が残っていたのか、それとも微かに残った力をかき集めてきたのか、號の腕が隼人の首元に巻きついた。
「……じん……さ……」
唇が触れ、熱くぬめった舌が隼人の中に潜り込んできた。
「ん……ん、ふ……っ」
まだ呼吸が十分ではない。足りない酸素を懸命に取り込みながら、隼人を引き留めるように一途にキスをする。
隼人は——。
號の頭を抱え込むようにして覆いかぶさる。舌で號の愛撫を掬って応える。號の目が閉じられ、腕にもう少しだけ力が入った。
「……號」
濃い口づけのあとで見つめ合う。
「じん、さん……」
號が何を欲しているか、隼人にはわかった。歓喜とためらいが同時に身体を通り抜けていく。
「號——」
抱きたい。けれども無理はさせたくない。キスを置いて離れようとして、それよりも一瞬早く、
「さいご、まで……して」
と、號の懇願が耳に届いた。
「…………號」
「腹の、おく……さっき、してくれたとこ、よ、り……もっと、おく」
號の瞳が熱に揺らめく。
「俺の奥、まで……来て」
ささやきが隼人を射抜く。
「ご、う」
「……じんさん」
この號を置いてベッドを離れるなど、もう考えられなかった。
「——號」
全身がカッと熱くなる。求められた歓びとこの先の悦びの予感が入り混じり、隼人の身体が震えた。
ズボンの前をはだける。ワイシャツのボタンを外す。興奮で指先が強張るあまり、ひとつひとつの動作がぎこちなくなる。汗で張りつく布地は早く脱ごうとすればするほどまとわりつき、もどかしくて仕方なかった。
やっと、と呼べるほどに長く感じた。ようやく隼人は號に向き直る。
號の目が隼人の瞳を覗き込み——嬉しそうに笑った。
「號」
ドリンクを飲んだ號とまるで同じだった。張り詰めた先端からは湧くようにカウパー液が垂れ出している。どうしようもなく號が欲しかった。
「號…………號」
先をこすりつけ——軽く押し込む。
「んあ……っ!」
隼人のためだけに、號の中が開かれる。
「あ、あ……っ」
徐々に身体が広げられていく感覚に、號が身震いする。
「ああ——っ」
口がきゅっとすぼまり、隼人の肉を押し返す。隼人は亀頭でそこをゆっくり撫で回し——再び押し入った。
「ひ、あ、あ——ッ!」
熱の坩堝が隼人を包むと同時に、號が切ない声をあげて高みに昇った。號の悦びが肉を通して直に伝わってくる。隼人の意識も痺れて、余裕など持てるはずもなかった。
「……號っ」
はあっと息を吐き出し、肉竿を押し込んでいく。號が仰け反って、また達した。
號、號、とうわ言のように呼ぶ。號は身体も意識も隼人に揺さぶられながら、切れぎれに隼人の名を呼び返す。肉の奥だけではなく、声も呼吸もまぐわう。ふたりは何度も熱と欲を絡ませ合った。
「じん、さ——」
かすれた声で、號が呼ぶ。
「……ぃ」
「……號?」
「わ……り、ぃ……」
もう自分でしがみつく力もない。號は隼人に対面でまたがったまま、体重をあずけていた。
「どうした」
「……っん」
抱きすくめられると、自重でより奥のほうまで刺激される。それでも疼きは際限なく生まれてくる。
「お、おれ、だけ」
「うん?」
「俺、だけ、こ、こんなきもちよくて、悪、ぃ……」
「號」
「つ、つぎは、ちゃん、と……ちゃんとじんさん……こと……きもちよくさせる、から」
「——號」
「だか、ら」
「號、大丈夫だ。ちゃんと気持ちいい」
「ほ、ほん、と……?」
「ああ——ほら」
「ああっ!」
まだ太く硬い隼人の肉が號の中を隅々まで満たす。
「お前の中が快すぎて……出してもすぐにこうなる」
號の尻を持ち上げ、下から突き上げる。
「んあ゛ッ」
「何も気にしなくていい。お前が欲しいだけ、してやる」
「ん……」
隼人は健気な恋人に口づけ、その身体の奥に甘い楔をまた打ち込む。號は自身を深く穿つ恋人の思いに触れて、身を委ねる。
「あっ、じん……っさ、ん……あ゛、あ゛……っ、すき、すき……っ」
「號——ごう。俺も、好きだ」
「ん゛ッ、んあ゛っ、あッ——」
あとはキスで覆われて、ベッドの軋みだけが部屋に響いた。
† † †
目覚めると隣に號の姿はなく、サイドテーブルには未開封のミネラルウォーターが置かれていた。
隼人は緩慢な動きで上体を起こし、そのペットボトルを取った。水が身体に吸い込まれていく。一気にボトル半分も飲み干し、隼人はひと息ついた。
昨日——。
號は電池が切れたように眠りについた。そのあとは身体を拭かれている最中も、ベッドシーツを取り替えるために抱きかかえられても、ぴくりともしなかった。念のため熱を測り水を飲ませてやり——二時間経っても異変は見られなかったので、ようやく隼人も落ち着いたのだった。
「……」
見回せば、散らばった服も菓子もなく、寝室は綺麗に片付けられていた。どうやら隼人のほうも、片付けの気配に気づかぬほど眠りこけていたようだった。部屋を満たしていた汗と雄の匂いも消えていて、もしかしたら夢だったのではないか、と思うほどだった。しかし。
「う」
腰部に気怠さを感じ、夢ではなかったと受け入れる。
身体を揺らし、ねじり、確認する。幸いにして、ぎっくり腰とまではいかない。日頃の疲れに加え、昨日の後先を考えない行為のせいで、多少の負担が表面化したようだった。
まったく、と口の中で呟く。號のことになると、どうにも我を忘れてしまう。そのあとで結局はそれほどに惚れているのだと突きつけられて、情けないのか面映いのか、それとも未だに戸惑っているのか、妙な心持ちになる。
いずれにしても、號の前では隼人はただの男なのだと思い知らされるだけだった。
リビングの戸を開ける。すぐにコーヒーのいい香りが鼻先をくすぐった。
「あ、神さん」
弾むような声。いつもと同じ、元気な號の声だった。
「おはよう」
ソファから立ち上がる様子も、いつもと同じだった。
隼人はほっと息を吐く。
「おはよう、號。それより、大丈夫か」
「ん」
號は短く答え、さっと目を逸らす。
「號?」
「ん……」
號の肌に赤みが差す。隼人の胸が浮かれたようにトクリと鳴った。
「……號」
近づき、指の背中で頬にそっと触れる。號が少しだけ身じろぎ、その目が所在なげに泳いだ。
「え、と」
そろりと上目遣いになる。目が合うとすぐに視線を外す。そわついて目線はあちこちに飛んで——やがてまた、隼人に戻ってきた。
「昨日は、その……悪かった」
いろいろと思い出されて恥ずかしいのだろう。唇が言い訳をするようにつんと尖った。
「けど、その、助かった。……しんどかった、から」
「ああ」
隼人は號の頭を撫で、引き寄せる。
「元はといえば、俺が油断していた。俺のほうこそ、悪かったな」
その頭にキスをする。起きてシャワーを浴びたのだろう。風呂上がりのいい匂いがした。號は隼人の胸元に顔を埋め、腕をそろそろと腰に回す。
「……神さん」
「どうした」
「ん…………、何かさ、倖せだなって」
すり、と小動物が甘えるように顔をこすりつける。そのいじらしさに隼人の胸が詰まる。
「……そうか」
號を抱きしめ返す。両の腕に収まるけれども、その存在は抱え切れないほどの歓びをもたらしてくれる。溢れるほどの愛おしさが湧いてくる。一生、手放せないだろうな、と隼人は思う。
「お前を倖せにできるなんて——俺は倖せ者だ」
「ふふっ」
號が腕の中で笑う。その振動が心地よく伝わってくる。
「今日は家でのんびり過ごすか。お前もまだ、身体がきついだろう?」
「んー、それがよ、ぐっすり寝たからなのか、そっちは大丈夫なんだけど」
言って號が顔を上げる。大丈夫、の言葉通り、肌は血色もよく張りがある。まるでむき卵のようにつやつやとした頬は、むしろ普段より健康そうに見えた。
「なるほど。若いな」
「……って、そういう神さんはちょっとやつれてるかも」
「そうか。少し張り切りすぎたかもしれん」
「だよな。……ありがと」
「ああ」
額に口づける——と、號の身体がびくりと跳ねた。
「……號?」
「え、あ」
號の顔が見る間に赤くなっていく。
「え、と。その」
「顔が赤い。熱があるんじゃないのか」
頬に触れ、首筋まで指を滑らす。
「ぅひゃっ」
號が肩をすくめた。
「じ、神、さ……」
「ん?」
「そ、その触り方……っ」
「あ——ああ」
隼人は慌てて両手を上げる。號は小さく身を震わせて、隼人を仰ぎ見た。
青い目に、恥じらいと戸惑いが浮いている。隼人は抱きしめたくなる衝動をぐっと堪える。
「わ、悪ぃ……。そ、その」
號がわずかに身体を引く。
「実はまだ……その、昨日の感覚が残ってて……」
耳の縁も首元も真っ赤になる。
「気ぃ抜くと、その……ちょっとヤバくて」
「——」
「あ、けど、大丈夫、苦しいとかキツイとかじゃねえから! その、昨日——気持ちよすぎただけで、えっとその、だから」
號の手がわたわたと宙をかき回す。
「だから、神さんに触られんのは好きだけど、えっと、今はちょっとタンマっていうか」
「わかった。今日は触らないように気をつける」
「あ、あの、違くて、触ってもいいんだけど、その」
「……つまりは、快感を煽るような動きをしなければ触ってもいいということか」
「えっと……、うん」
「わかった」
「何か、面倒で悪い」
「面倒なものか。加減がわからないから、言ってくれるほうが助かる」
右手を伸ばして——隼人の手が止まった。
「……と、言った途端にこれだ」
苦笑する。
「むしろ、お前からリクエストしてもらったほうがいいのかもな」
「『ここ触って』って?」
「ああ」
「それって何だか」
「何だか?」
「……ちょっとスケベな感じ」
號はくすりと笑って、空中で行き場をなくしている隼人の手を取った。
「そんならよ」
と、大きな手のひらを自分の頬にあてがう。
「そっちも」
「ああ」
隼人は両の手で號の頬を包み込む。號は目を閉じ、そのぬくもりを感じる。
「……神さん」
「何だ」
「キスして」
「いいのか」
「うん。あ、舌挿れんのはダメ」
「わかった」
唇が近づく。號がまた、ふふっと笑った。その吐息が隼人の唇をくすぐる。
「どうした」
「……神さんって」
「ん?」
「ほんと、俺に甘いよな」
からかうような言い方に、嬉しさが滲む。號の歓びはそのまま、隼人の倖せになる。
「ああ、本当に」
好きになってしまったのだから仕方がない。甘さに溺れ、沈む地獄もあるのだろうか。それは天国とどう違うのだろうか。
ふとそんなことを思いながら、隼人は號に口づけた。
